生成AI画像と著作権問題 〜EC事業者が気をつけたいリスクと活用ポイント〜

生成AIによる画像制作は、ECサイトの商品ページや広告バナーなどでも活用され始めています。しかし生成AIには利便性の一方で、著作権侵害のリスクや法的責任の所在といった問題も浮上しています。

本記事では、EC事業者が生成AI画像を利用する際に注意すべきリスクを整理し、トラブルを避けて安全に活用するためのポイントについて解説します。

生成AI画像と著作権の基本的な考え方

生成AIで作られた画像に著作権が成立するかどうかは、国や法制度によって解釈が分かれています。

生成AI画像の著作権成立要件は「創作性の関与」

基本的には「人間の創作性がどの程度関与したか」が判断基準とされ、AIの提示した結果から、利用者が主導して加工したような場合には、一定の創作性が認められる可能性があります。

一方、AIが自動生成した結果をそのまま使用するような場合では、著作権が成立しないと解釈されるケースも見られます。

日本国内における解釈

日本国内においても同様に、AIのみで自動的に生成された画像については著作権が認められにくく、人間による編集や加工が加わった場合にのみ、著作物性が生じ得ると解釈されています。

なお、AIの学習に使用されたデータに既存の著作物が含まれる場合、出力結果がそれに酷似すれば「二次的著作物」や「著作権侵害」と判断されるリスクがあります。特にブランドロゴや有名キャラクターなどを想起させる画像は、企業や権利者から法的措置を受ける可能性もあるため、注意が必要です。

EC事業者が直面しやすい3つの典型リスク

ECサイトでAI画像を活用する際には、次のような典型的なリスクが存在します。これらは法的責任だけでなく、ブランドの信頼や売上にも直結するため、特に注意が必要です。

1. 著作権侵害のリスク

生成AIは既存の膨大な画像を学習しているため、アウトプットが既存作品に酷似してしまうことがあります。商品写真や広告に使用した画像が、既存キャラクターや他社の商標を連想させる場合、権利者から削除要請や損害賠償請求を受ける可能性があります。

EC事業者が「AIが作ったものだから大丈夫」と軽く捉えてしまうと、思わぬ訴訟やトラブルに発展しかねません。

2. 消費者誤認によるトラブル

AI画像が実際の商品と乖離していると、「誇大広告」「虚偽表示」と見なされ、景品表示法などの規制に抵触する可能性があります。

例えばアパレル分野では、AI生成による着用イメージが「実物よりもスタイルが良く見える」「実際には存在しない柄を表示している」といった問題を引き起こし、SNSで炎上した事例も報告されています。

消費者からの信頼低下は、短期的な返品増加や売上減少だけにとどまらず、長期的な顧客離れにつながります。

3. ブランド価値の毀損

AI画像は、アウトプットが法令に反しないものであったとしても、思わぬ形でブランドの価値を損なうことがあります。

例えば、高級感を訴求したい商品ページに不自然な生成画像を掲載すると、ブランドの世界観を壊しかねません。また、他社ブランドの要素を無意識に含んだ画像を使うと、「模倣品」と誤解されるリスクもあります。

結果として「信頼できないECサイト」との評価を受け、顧客ロイヤルティーの低下を招きます。

生成AI画像を安全に活用するためのチェックポイント

リスクを回避しつつAI画像を活用するためには、一定のガイドラインに沿った運用が求められます。EC事業者が安全に生成AI画像を利用するために、確認しておきたい主要なポイントを、整理して説明します。

1. 生成プロセスの記録を残す

どのAIツールを使用し、どのようなプロンプトで生成したかを記録・保存しておくことは重要です。

例えば、商品ページに掲載した画像が外部から指摘を受けた際に、適法性を説明するための証拠となります。社内で複数人が生成をおこなう場合には、共有フォルダやプロジェクト管理ツールに記録を残す仕組みを整えると安心です。

2. 明らかに既存作品を想起させる要素を避ける

先述しましたように、生成AIは学習データの影響で、特定のブランドロゴやキャラクターデザインに似た画像を生み出すことがあります。こうした画像をそのまま使用すると、著作権侵害や商標権侵害を問われるリスクがあります。

特にファッションやエンタメ関連では、デザイン模倣に敏感なため、「似すぎていないか」を人間の目でチェックする工程を必ず入れましょう。

3. 利用規約とライセンスの確認

生成AIサービスごとに、生成物の著作権や利用範囲の扱いは異なります。商用利用が全面的に認められるものもあれば、利用上の制約があったり、追加ライセンス契約が必要だったりする場合もあります。

ECで利用する場合には、広告画像や商品写真に転用できるか、二次利用(印刷や他媒体での使用)が可能かも確認しておく必要があります。

利用規約は改訂されることもあるため、定期的にチェックしましょう。

4. 人の手による加工や選択を加える

AIが生成した画像は、そのままでは「人間の創作性が反映されていない」と判断され、著作権が成立しないと解釈される可能性があります。

トリミングや色調補正、プロンプトによる生成し直しなど、人間が積極的に関与することで、オリジナリティーを担保しやすくなります。結果として、EC事業者側への権利帰属を明確化させるだけでなく、トラブル回避にもつながるでしょう。

生成AI画像を取り巻く法制度の動向

AI生成物をめぐる法制度は、世界的にまだ発展途上にあります。

近年では「著作権を認めるか否か」という議論にとどまらず、商用利用に伴う透明性や責任の所在まで範囲が広がってきています。各国の規制当局や裁判所が示す判断は、今後の実務にも直結する可能性があり、EC事業者にとっても無視できない動きです。

欧米では、AI生成物に著作権を認めないような事例も出てきています。例えば、米国著作権局は、Midjourneyで生成された「Théâtre D'opéra Spatial(英語:Space Opera Theater)」という作品について、人間による創作性が十分に反映されていないとして、著作権登録を認めませんでした。このように、AIのみ(またはAIによる要素が支配的な場合)で生成された作品は、著作権保護の対象外と判断されるケースが増えています。

一方、EUではAI規制法案が進行し、生成AIの利用者に「学習データの開示」や「生成物の透明性」を求める方向性が示されています。日本でも文化庁がガイドラインを公表し、学習データの取り扱いや利用者責任を中心に、議論が続いています。

こうした潮流の中でEC事業者にとって求められるのは、国内外の制度変化を継続的にウォッチし、自社内における利用ルールを柔軟にアップデートする姿勢です。生成AIの利便性は大きい一方、ここまででも述べたように、法的リスクの軽視はブランド毀損や訴訟リスクにつながりかねません。

ビジネスをおこなう地域における動向についてしっかり理解し、先回りした対応を取ることが、安心してAIを活用するためには欠かせません。

さいごに

生成AIはEC事業に効率化や可能性をもたらす一方、適切な理解と対策なしでは、思わぬトラブルを招く恐れもあります。本記事で紹介したように、著作権や法制度の動向を把握し、社内ルールを整備することが安全な活用の第一歩です。

その上で、自社の事業規模や用途に合ったソリューションを選択することが重要です。生成AI関連サービスは多様化しており、画像制作や作業効率化、顧客体験向上など、それぞれの目的に応じた選択肢が提供されています。安易に導入するのではなく、「自社にとって何を優先すべきか」を基準に検討するとよいでしょう。

当社においても、「Vue.ai」というAIソリューションを取り扱っており、アパレル企業を中心に多くの導入実績があります。商用利用を前提に設計されていて、モデル着用画像などを安全かつ簡単に生成できます。サービスのご紹介や無料デモも承りますので、ご興味のある方は、ご遠慮なくご相談いただけますと幸いです。

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