映像制作のデジタル課題をどう解決する?LAのポストプロダクションに学ぶデータ管理

映像制作やポストプロダクションの現場では、デジタル技術の進化により新たな可能性が広がる一方で、データ管理やワークフローの課題も増えています。本記事では、ロサンゼルスのポストプロダクション「DigitalFilm Tree」の事例をもとに、大量の映像データをスムーズに運用する方法をご紹介します。

映像制作の現場で直面するデジタルの課題

映像技術は日々進化し、4K・8Kの高解像度やHDRの映像、VR、ARといった新技術が次々と登場しています。しかし、それに伴いデータ容量は急増し、運用負荷も高まっています。

「膨大なデータをどのように管理するか」「大容量データをどのようにやり取りするか」といった問題は、映像制作会社やポストプロダクションにとって避けて通れない課題です。制作スピードを落とさず、効率的にデータを扱う方法が求められています。

DigitalFilm Treeのデータ管理の工夫

ロサンゼルスに拠点を置くポストプロダクション「DigitalFilm Tree」は、映画やテレビシリーズにおけるポストプロダクションを専門としています。代表的な作品には、「テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく」「シュリンキング:悩めるセラピスト」「アンブレラ・アカデミー」「マニフェスト」などがあります。

これらの作品の制作には、膨大な映像データの迅速かつ安全な移動が不可欠でした。DigitalFilm Treeは、ポストプロダクションの全工程においてRAWファイル(元のカメラデータ)を使用する独自のワークフローを採用しています。しかし、このRAWデータを世界中のプロデューサーやアーティストへ短時間で送ることは技術的に大きな課題でした。

1日5〜12TBものデータを8〜12時間以内に複数のプロジェクト間で移動させる必要があり、それを安全かつ確実におこなう方法を模索していました。

RAWデータを高速・安全に送る方法とは?

この課題を解決するため、DigitalFilm TreeはSigniant社の「Media Shuttle」を導入しました。

Media Shuttleは、高速転送機能やセキュリティー、パフォーマンスなど、さまざまな要素からDigitalFilm Treeのリモートワークフローに最適なソリューションとして選ばれました。また社内のスタッフだけでなく、各プロジェクトの遠隔地にいる他のパートナーにとっても、基幹ツールとなっています。

前述したようにDigitalFilm Treeが他社と異なる点は、オリジナルのカメラファイル(RAWファイル)を編集やVFXの素材として、ポストプロダクションの最終段階だけでなく全工程で使用していることです。

CEOのカトリブ氏は、次のように語ります。

素材はすべてです。何か変更された点を確認するとき、我々はその表現ではなく、元の素材を確認することになります。すべてのプロダクションがそうしているとは限りませんが、私たちが手がけるプロダクションでは、それが必要条件です。

このような制作工程を経るため、1日あたり8〜12TBのデータがMedia Shuttleを経由して、ロサンゼルスにあるDigitalFilm Treeのプライベートサーバーに流れ、さまざまなインターネット接続環境を持つ多くの場所との間を行き来しています。

Media Shuttleの高速転送により、DigitalFilm Treeでは100Gbpsのインターネット帯域幅をすべて使用して、巨大なコンテンツを送信することが可能です。DigitalFilm Treeのポータルにアップロードされると、関係者は自動通知を受け取るので、誰もがコンテンツの状況を把握できるようになっています。

これによって同社は、VFX、カラーグレーディング、オンライン編集、最終納品までの工程で必要なデータを、迅速に送信できるようになりました。

DigitalFilm Treeのコンテンツおよびデータセキュリティ担当ディレクターは、「Media Shuttleを使うことで、カメラマスターをインターネット経由で24時間以内に転送できます」と語ります。

また、COO兼CFOのナンシー・ジュンディ氏も、次のように述べています。

「テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく」のアムステルダムでの撮影では、撮影後のすべてのメディアをロサンゼルスへ送り、さらにイギリスにもコピーを保管する必要がありましたが、すべて予定どおりに編集部へ届けることができました。

時間は、メディア業界において最も貴重な資源の一つです。Media Shuttleの導入により、DigitalFilm Treeは急なクリエイティブ変更やロケーション変更にも迅速に対応できるようになり、リモートパートナーとの連携もスムーズになりました。これにより、クオリティーを損なうことなく、より良いコンテンツ制作のための時間を確保できるようになったのです。

DigitalFilm Treeの関係者は、次のとおり語っています。

スケジュールは短縮され、予算は削減される一方で、より多くの成果が求められています。私たちは常に、クライアントの負担を軽減し、作業をスムーズにする方法を探し続けています。

さいごに

デジタル技術の進化によって映像制作がますます高度化するのと同時に、データ管理や技術適応、リモートワーク、著作権、人材不足などといった課題も生まれています。こうした課題に適応し、効率的かつクリエイティブな映像制作を実現するためには、最新技術の理解と適切なツールの活用が欠かせません。

DigitalFilm Treeのようなポストプロダクションでは、大容量データをスムーズに管理し、制作の効率を最大化することが求められます。Media Shuttleの導入により、高速かつ安全なファイル転送、リアルタイム通知、集中管理を実現し、より良いコンテンツを生み出しています。

当社では、Signiant社が提供するMedia Shuttleのコア技術を採用した大容量ファイル高速配送サービス「ブロードメディア® CDN ストーク」を取り扱っています。

ファイル形式や容量を問わず、フォルダーのまま、セキュアかつ高速にデータを送信できます。豊富な導入実績で、利用ユーザーは世界190ヶ国にまたがり、50万人を超えるグローバルユーザーと2.5万以上の企業を繋げています。

メディアファイルなど大容量ファイルの運用にお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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