増加するインターネットトラフィックの現状と解決策 〜安定・効率的にコンテンツ配信を行うための仕組み〜

近年では、Webサービスの増加やデバイスの多様化だけでなく、コロナ禍のような外的要因の影響も加わり、インターネットトラフィックは爆発的に増加し続けています。

こうした情勢の中でも、ユーザーへWebサービスを常時安定して提供できるコンテンツ配信プラットフォームの構築が、サービス運営者にとっては重要な課題となっています。

本記事では、こうした課題に対する安定かつ効率的なコンテンツ配信の仕組みについて、詳しく解説します。

増加し続けるインターネットトラフィックの現状と背景

インターネットを取り巻く状況は、時代の流れとともに大きく変化しています。その中でも、押さえておくべき傾向について振り返っていきます。

増加し続けるデータトラフィック量

デジタルライフは多様化や利便性向上を続けており、私たちの日常にとって高品質なWebサービスやコンテンツは、もはや欠かせない存在となっています。

日常的にインターネットデバイスとして使用されるスマートフォンなどが、これらの利用を後押ししています。近頃では携帯料金の値下げなどもあり、以前にも増して、いつでもどこでも通信量を気にせず利用しやすい環境が整っています。

加えてコロナ禍以降の巣ごもり需要・行動変容によって、動画配信に代表されるエンターテインメントサービスはもちろんのこと、ライフスタイルに関するWebサービスやオンラインショッピングなどの利用も増えています。そして、ユーザー体験を向上すべく、あらゆるサービスにおいてコンテンツのリッチ化(映像や画像の高解像度化、掲載数増加)が進んでいます。

これらのような状況から、インターネットトラフィックは一貫して増加を続けています。

トラフィックパターンも大きく変化

かつてのインターネットトラフィックは、平日のビジネス時間などの特定時間帯に集中していましたが、昨今では曜日・時間帯を問わず、週末・祝日や夜間であっても、常に高い水準となっています。

近年ではSNSが幅広い年齢層に浸透していることから、これらを活用したキャンペーンなども頻繁におこなわれ、突発的な集中アクセスによるスパイクトラフィックを生じることも珍しくなくなっています。

インターネットトラフィック増加のもたらす影響

上述したようなインターネットトラフィックの増加傾向は、サービス提供に必要なインフラ体制の構築を難しくするだけでなく、サービス運営にも影響を及ぼします。

主な影響について、ご説明していきます。

ユーザー体験への悪影響

昨今のユーザーは、高速でスムーズなオンライン体験を当然のものとして捉えています。そのため、トラフィックの急増やサーバー過負荷によって生じる遅延や障害は、ユーザー体験に大きな悪影響を及ぼします。

動画や音楽のストリーミングが途切れたり、Webページの表示が遅かったりするような問題は、ユーザーにとって無意識のうちにストレスとなり、サイト離脱や利用離れの原因ともなります。

ユーザー体験を犠牲にしないためには、いつでも安定したコンテンツ配信の仕組みが必要となります。

サーバー・インフラにかかるコストの増加

より良いユーザー体験を実現するためには、トラフィックやリクエストを十分に捌けるキャパシティーのサーバー・インフラ構築が必要となります。

かつての一般的なアプローチでは、ピークトラフィックのレベルに合わせてリソースを増やすことで対処していました。そのためには、サーバーや回線を増強したり、上位のインスタンスに変更したりすることとなりますが、これには当然ながらコスト増加も伴います。

コスト増加を抑えるために、時間帯に合わせてリソースのレベルを変動させることもありますが、それでも不測の突発的なトラフィックが生じる際には、ユーザー体験への影響が避けられません。

安定かつ効率的なコンテンツ配信を容易に実現する「CDN」

ここまでご説明してきたような課題を解決できる主要な技術として、「CDN」(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)が挙げられます。

CDNとその役割

CDNは、安定かつ効率的なコンテンツ配信を実現するための基盤として、重要な役割を果たします。

主要なCDNサービスでは、国内(外)の複数拠点にキャッシュサーバーが配置されており、これらのサーバーでトラフィックを肩代わりしながらコンテンツを配信します。そのため、Webサービス運営者の管理リソースの消費は最小限に抑えられ、サーバー・回線などの効率化にも寄与します。

CDNのキャッシュサーバーが代わりに応答
CDNのキャッシュサーバーが代わりに応答

また、不測の突発的なトラフィックが生じても、CDNのキャッシュサーバーがトラフィックを肩代わりすることによって、安定してサービスを継続できます。

CDNサービスを提供する事業者はいくつかありますが、日本国内に特化した事業者や、世界中にキャッシュサーバーを展開する事業者、セキュリティー強化などといった付加価値を提供する事業者などが存在しています。

キャッシュの活用とプリフェッチング

上述したような「キャッシュ」は、コンテンツ配信の安定化・効率化を運用負荷の増大を伴わずに実現するのに、とても重要な技術です。

CDNにおけるキャッシュサーバーは、ユーザーがコンテンツにアクセスする際に、Webサーバーからコンテンツデータを取得し、そのデータの複製を保管しながらユーザーへ配信します。再アクセス時には、Webサーバーへのリクエストをおこなわずに、保管された複製データを配信します。

プリフェッチングは、対応できるCDNサービスは限られますが、より高いユーザー体験を実現するために活用されています。ユーザーのアクションを予測し、必要となるコンテンツデータをあらかじめWebサーバーから取得しておくことで、より高速なコンテンツ配信を実現します。

これらの技術を適切に活用することで、コンテンツ配信の高速化と安定化の両立によってユーザー体験を向上しつつ、Webサーバーの負荷については最小化することが可能です。

セキュリティとプライバシーへの配慮

Webサービスの運営にあたって、特に近年では、セキュリティー対応の必要性が高まっています。数ある対策の中でも、主要なものについてご紹介していきます。

DDoS攻撃への対策

セキュリティーやサービス持続性・可用性の観点からコンテンツ配信を考えるとき、「DDoS攻撃」(分散型サービス拒否攻撃)への対策も不可欠です。

DDoS攻撃は、悪意ある第三者が大量のトラフィックをサイトに送り込み、サーバーをダウンさせる手法です。これに対応するためには、Webサーバーのネットワーク監視・フィルタリングなどで対処するケースもありますが、DDoS攻撃で用いられるようなGbpsレベルのトラフィックを止めることは容易ではありません。このことから、DDoS攻撃をカバーできるセキュリティーサービスの導入が、事実上唯一の選択肢といっても過言ではありません。

ただし、DDoS攻撃からの防御を謳うセキュリティーサービスの中には、大規模な攻撃へは対応できなかったりパフォーマンス劣化を伴ったりするものがあることにも、注意が必要です。

SSL/TLSの重要性

コンテンツ配信においては、ユーザーの通信データにおけるセキュリティーとプライバシーを守ることが重要です。中でも、通信データを暗号化する「SSL/TLS」(Secure Sockets Layer/Transport Layer Security)への対応は、もはや必須とされています。

第三者による通信データの傍受・改ざんを防ぐために、ログイン画面や注文画面などでは早くから導入されており、個人情報やクレジットカード情報などを安全に保護するために活用されてきました。

昨今では、ログイン画面や注文画面だけへのSSL/TLS対応では不十分とされており、Webサイトやサービスの全体で対応する必要があります。対応が完了していないと、Webサイトを開こうとするときブラウザー画面に「安全ではありません」のような警告文が表示されるほか、Googleの検索結果へもヒットしづらくなるなど、信頼性や利便性の面でも悪影響が出るようになっています。

SSL/TLS接続しない場合のブラウザー表示例(安全でない接続)
SSL/TLS接続しない場合のブラウザー表示例(安全でない接続)

多くのWebホスティングサービスなどでは、わずかなステップでSSL/TLSへ対応できるようになっています。まだ対応できていない場合には、手順を確認してみると良いでしょう。

まとめ

安定したコンテンツ配信は、オンラインにおけるユーザー体験の向上に欠かせない要素です。今後は、新たなテクノロジーやニーズの変化に合わせて、より高度な安定性と効率性を追求し続けることが重要です。

クラウドサービスが一般化した昨今では、IaaSやCDNなどの利用に対する敷居も下がっており、これらをうまく組み合わせることで、Webサービスのインフラを構築・運用しやすい環境が整ってきています。

当社では、CDN・WebセキュリティーのパイオニアであるAkamai社が開発・提供する各種サービスを、長年にわたって取り扱っており、数多くのお客様へご提供しております。ご興味いただけましたら、是非お気軽にお問い合わせください。

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