企業Webサイトが攻撃される!5つのセキュリティー脅威と基本対策

インターネットの普及に伴い、企業のWebサイトは重要な情報発信の場となっています。しかし、サイバー攻撃の脅威も増加しており、適切なセキュリティー対策を講じなければ、情報漏洩やサービス停止などの深刻な被害を受ける可能性があります。

本記事では、企業サイトの運営管理者が押さえておくべき5つの主要な脅威とともに、それぞれに対する対策方法について解説します。

企業Webサイトへのサイバー攻撃の最新動向

企業のWebサイトは、顧客やパートナーとの接点としてますます重要な役割を担っています。しかし同時に、攻撃者にとっても格好の標的となっており、被害事例は後を絶ちません。

企業サイトへの攻撃が増加する理由

企業のWebサイトに対する攻撃は、増加の一途を辿っています。その背景には、デジタル化の進展や攻撃技術の高度化といった複数の要因が存在します。

主な理由を整理していくと、次のようなものが挙げられます。

  • デジタルシフトの加速
  • 攻撃ツールの高度化・低価格化
  • 経済的動機(金銭目的)の攻撃が増加
  • クラウド化・API連携の拡大
1. デジタルシフトの加速

ビジネスモデルのオンラインへの移行がますます進み、ECサイトや顧客ポータルなど、Webを中心としたサービスが当たり前になっています。

その結果、Webサイトが「企業の顔」として多くの顧客データや決済情報を扱うようになり、攻撃者にとっても非常に魅力的なターゲットとなっています。Webサイトの停止=ビジネスの停止につながるため、攻撃者は狙いを定めやすくなっています。

2. 攻撃ツールの高度化・低価格化

以前は、専門的な知識を持つクラッカー(悪意のあるハッカー)だけが攻撃をおこなっていたため、対象や件数も限定的でした。

しかし近年では「攻撃ツール」や「攻撃サービス(DDoS-as-a-Service)」として安価に出回り、誰でも簡単に攻撃を仕掛けられるようになりました。さらに、生成AIの劇的な進化や自動化ツールの発展により、高度な攻撃シナリオを作成することも容易になってきています。

3. 経済的動機(金銭目的)の攻撃が増加

サイバー攻撃は趣味や愉快犯のレベルを超え、はっきりとした金銭目的でおこなわれることが増えています。

具体的には、ランサムウェアでデータを「人質」に取って「身代金」を要求したり、窃取した顧客情報をダークウェブで売買したりといったケースです。企業にとっては、業務停止だけでなく多額の損失や社会的信用の失墜につながる深刻な脅威です。

4. クラウド化・API連携の拡大

多くの企業がクラウドサービスを活用し、API連携で社内外のシステムをつなぐ構造にシフトしています。

しかしその一方で、クラウド設定の不備やAPIの認証・権限管理の甘さを突く攻撃が目立つようになりました。サプライチェーン経由での攻撃(サードパーティーの脆弱性を利用する手口)とも組み合わさり、従来の境界型防御だけでは守り切れないような、複雑な攻撃も増加しています。

企業サイトへのサイバー攻撃の事例

これまでのサイバー攻撃事例として、以下のようなケースが報告されています。

  • 大手ECサイトがDDoS攻撃で長時間停止
  • APIの認証不備を突かれた個人情報流出
  • WordPressのプラグイン脆弱性を悪用した改ざん被害
  • AIを悪用したフィッシング攻撃
1. 大手ECサイトがDDoS攻撃で長時間停止

大手ECサイトが大規模なDDoS攻撃を受け、異常な数のリクエストが一気に送信されました。これによってサーバーが応答不能となり、数十万件の注文処理が遅延しました。

ピーク時の売上を逃しただけでなく、配送の遅れによるクレームや返金対応など、二次的な損失も発生し、最終的には数千万円規模の被害となりました。

2. APIの認証不備を突かれた個人情報流出

あるサービス事業者が提供するAPIにおいて、認証設定の不備により第三者からの不正アクセスが可能となり、本来保護されるべき個人情報が数百万件流出しました。

流出した情報には名前・メールアドレス・住所などが含まれており、その後の不正利用やフィッシング被害も多発しました。事業者側は社会的信用を大きく失い、監督官庁からの是正勧告も受けています。

3. WordPressのプラグイン脆弱性を悪用した改ざん被害

中堅規模の企業のWebサイトに導入されていたWordPressのプラグインに脆弱性が残されており、そこを突かれ、攻撃者に管理権限を奪取されました。

サイトの内容が改ざんされ、利用者がマルウェアをダウンロードしてしまう偽のリンクが埋め込まれるなどの二次被害も拡大しました。セキュリティーパッチを適用していなかったために被害が長期化し、多数の顧客からの信用を失う結果となりました。

4. AIを悪用したフィッシング攻撃

攻撃者が生成AIを利用して、自然で違和感のない日本語のフィッシングメールを大量に作成し、企業の管理画面アカウントを狙いました。

これまでのような不自然な翻訳文ではなく、人間らしい表現で書かれたため、管理者が騙されてID・パスワードを入力し、実際に管理画面を乗っ取られる被害に発展しました。

攻撃の巧妙化により、従来の訓練では防ぎきれないケースとして注目されています。

企業Webサイトが狙われる5つのセキュリティー脅威

企業のWebサイトは、顧客との接点として重要な役割を果たす一方で、サイバー攻撃者にとって非常に魅力的な標的となっています。

企業のWebサイトが直面する5つの代表的な脅威について、それぞれの特徴と注意点を整理します。

脅威1. 脆弱なログイン認証による不正アクセス

ブルートフォース攻撃(総当たり攻撃)や、他社から流出したID・パスワードを使ったクレデンシャルスタッフィング攻撃によって、ログイン画面を突破されるリスクがあります。

単純なパスワードポリシーであったり、多要素認証を導入していなかったりする企業は特に狙われやすく、ユーザーアカウントが乗っ取られた場合には、管理画面からの情報改ざんや顧客データの流出といった被害に直結します。

脅威2. SQLインジェクションによるデータ漏洩

Webサイトの問い合わせフォームや検索ボックスなどに、悪意あるSQLコードを埋め込むことで、サーバー上のデータベースへ不正にアクセスし、機密情報を盗み出す攻撃です。

特に入力チェックやパラメータのエスケープ処理が不十分なシステムでは、深刻な情報漏えいにつながり、大規模な顧客情報流出を発生させる恐れがあります。

脅威3. クロスサイトスクリプティング(XSS)の被害

ユーザーのブラウザ上で、悪意あるスクリプトを実行させる攻撃です。

フォームなどユーザーが入力できる場所に対して適切なサニタイズ(無害化)がおこなわれていないと、攻撃コードがそのまま出力され、クッキー情報やログインセッションの乗っ取り、偽のログインフォームのようなフィッシングページへの誘導などが可能になります。

脅威4. DDoS攻撃によるサービス停止

ボットネットなどを用いて大量のリクエストを一度に送りつけ、Webサーバーの処理能力を超えさせることで、サービスを停止させる攻撃です。

ECサイトなどでは、一時的なサービス停止であっても大きな売上損失や信用失墜につながり、また復旧に多額のコストがかかるケースも少なくありません。

さらにDDoSは「気を逸らすための陽動作戦」としても悪用されるケースがあり、サーバー管理者がサービス復旧に追われている隙に、別のサーバーへの侵入やデータベースの不正アクセスを同時に仕掛けられる複合的な攻撃手段としても利用されます。従って、DDoS攻撃の裏でさらなる侵害が進行しているリスクにも警戒が必要です。

脅威5. サプライチェーン攻撃のリスク

自社システムだけでなく、外部のベンダーやSaaS、プラグインなどのサードパーティーを経由して侵入する攻撃です。

取引先や委託先の脆弱性を突かれた場合、企業側では把握しにくい場所から内部に侵入されるため、防御が難しく、甚大な被害に発展しやすいのが特徴です。

5つの脅威に対する具体的な対策

適切な技術的・組織的な対策を講じることで、多くの攻撃は未然に防ぐことが可能です。先ほど挙げた5つの代表的な脅威に対応するための、実践的かつ効果的な対策をご紹介します。

対策1. 多要素認証/二要素認証(MFA/2FA)の導入

ログイン時に、認証ステップをパスワード以外にも追加で設けて複数とすることで、不正アクセスを防ぎます。

多要素認証(MFA)とは、ログイン時において以下に挙げる「2つ以上」の要素を組み合わせることで、不正アクセスを防ぐ仕組みです。二要素認証(2FA)は「2つ」の要素を組み合わせるもので、多要素認証に含まれます。

  • 知識情報(SYK: Something You Know):
    パスワードや秘密の質問など、ユーザーの知る情報を用いる認証。
  • 所持情報(SYH: Something You Have):
    スマホやトークン端末、ICカードなど、ユーザーの持つ情報を用いる認証。
  • 生体情報(SYA: Something You Are):
    指紋や顔、静脈など、ユーザーの身体が持つ情報を用いる認証。

主な認証方法として、以下のようなものがあります。

  • SMS認証:
    事前登録した電話番号にワンタイムパスコードを送信し、入力させる。
  • 認証アプリ:
    Google AuthenticatorやMicrosoft Authenticatorなどのアプリで生成されるワンタイムパスコードを、入力させる。
  • 生体認証:
    指紋や顔、静脈など、ユーザーの生体を用いて認証する。

企業内においても、従業員のアカウントに多要素認証を導入することで、パスワード漏洩による不正アクセスを防ぐことができます。

対策2. 入力データの適切なサニタイズ処理

SQLインジェクションやXSS攻撃を防ぐために、入力データの検証とサニタイズ(無害化)を徹底します。サニタイズ処理とは、ユーザーが入力したデータを適切に処理し、不正なコードの実行を防ぐことです。

主な手法として、以下のようなものがあります。

  • エスケープ処理:
    HTMLタグやJavaScriptコードを、実行できない文字列に変換する
    (例:<script> → &lt;script&gt;)
  • 入力チェック:
    入力データの形式や範囲を検証し、不正なデータを拒否する。
    (例:仕様に沿った文字列のみ許可)
  • ホワイトリスト:
    HTMLタグなどの入力を許可する場合に、許可する要素のみ抽出する。
    (例:許容外のタグ要素は拒否)

Webサイトの動作仕様に合わせて、いくつかの手法を組み合わせて実装するのが一般的です。

対策3. WAF(Web Application Firewall)の活用

WAF(Web Application Firewall)は、WebサイトやWebアプリケーションへの不正なアクセスを検知・遮断するセキュリティー対策です。

アプリケーション層への様々な攻撃に対して有効で、Webアプリケーション側に脆弱性が残っている場合でもWAF側で攻撃を遮断できるため、特に有効な対策方法として認識されています。

一般的なWAFの主な機能として、以下が挙げられます。

  • SQLインジェクション対策:
    不正なSQLクエリーを検知してブロックする。
  • XSS対策:
    悪意あるスクリプトの実行をブロックする。
  • DoS対策:
    異常なリクエストを検知してブロックする。

中でも、最新の脅威へ対応しやすくなる点や、大規模なDDoS攻撃から防御できるサービスも展開されている点などから、クラウド型WAFの導入が広がっています。

対策4. レート制限によるDDoS対策

DDoS攻撃は、大量のリクエストを送信してサーバーを過負荷状態にさせる、シンプルかつ強力な攻撃です。

レート制限を導入することによって、異常なトラフィックを検知してアクセスを制限することで、DDoS攻撃による影響を低減できます。

  • IPアドレスごとのアクセス制限:
    一定時間内のリクエスト数を制限する。
  • CAPTCHAの導入:
    ボットによるログインなどを制限。
  • CDNサービスの導入:
    トラフィックを分散し、負荷を軽減する。

CDNやクラウド型WAFの中には、DDoS対策の機能を提供しているものもあります。

対策5. サプライヤーのセキュリティー管理強化

サプライチェーン攻撃では取引先企業におけるセキュリティーの脆弱性を悪用するため、取引先のセキュリティー対策を確認し、定期的な監査を実施します。

  • セキュリティー要件の確立:
    取引先に対してセキュリティーポリシーを示し、遵守を求める。
  • ゼロトラストセキュリティーの導入:
    従来の境界型防御に代わる、最新セキュリティーモデルの採用を求める。
  • 特権アクセス管理(PAM)の実施:
    重要システムへのアクセス権限を、厳格に管理する。

自社だけでなく取引先においても高いセキュリティーレベルを確保することで、外部からの侵入リスクを抑えることが可能です。

セキュリティー対策の維持と強化に向けた取り組み

企業のWebサイトを取り巻く脅威は、日々進化し続けています。

技術的なセキュリティー対策を導入するだけでは十分とは言えず、社内外の関係者が一体となってセキュリティーレベルを維持・向上させる取り組みこそが、最新の攻撃手法に備えることにも繋がります。

1. 定期的なセキュリティー診断の実施

Webサイトやシステムの脆弱性は、日々新たに発見されています。

一度対策を施しただけで安心するのではなく、専門家による脆弱性診断やペネトレーションテストを定期的に実施し、自社サイトが最新の攻撃手法に対して十分に防御できているか確認することが重要です。

発見された問題点は迅速に改修し、継続的な監視体制を構築することで、長期的にセキュリティーレベルを維持できます。

2. 社員のセキュリティー意識向上

結局のところ、どんなに高度な技術を導入しても、人のリテラシーが不十分だとセキュリティーの穴になります。

特に、フィッシングメールやSNSを利用した巧妙なソーシャルエンジニアリング攻撃は、人の不注意を狙うため非常に効果的です。

従業員に対して定期的なセキュリティー教育をおこない、パスワード管理やメール添付ファイルの取り扱い方など、基本的な知識を習慣化することが、企業全体の防御力を高める上で欠かせません。

まとめ

Webサイトのセキュリティー対策は、単なる機会損失を防ぐだけでなく、企業の信頼性を守るために不可欠です。本記事で紹介した5つの脅威と対策を参考に、多層的なセキュリティー体制を構築することが重要です。

技術的対策の導入と併せて、定期的な脆弱性診断と従業員教育を継続的に実施し、組織全体でセキュリティーレベルの維持・向上に取り組みましょう。

当社では、クラウドやセキュリティーのパイオニアであるAkamai社が開発・提供する各種サービスを、長年にわたって取り扱っており、数多くのお客様へご提供しております。

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