リバイバル上映の盛り上がり、そのときの上映素材は?

月額定額制(サブスク)の動画配信サービスが登場したことで、過去の名作映画も自宅で手軽に観られるようになりました。ラインナップの中に懐かしい作品を見つけたり、自身が子どもの頃に観ていた作品をお子さんと楽しむ方も多いのではないでしょうか。

しかしその一方で昨今、映画館でのリバイバル上映が、たびたび話題を呼んでいます。

テレビアニメ「ポケットモンスター」の25周年を記念した『夏の思い出、ゲットだぜ! 25周年ポケモン映画祭』や、2022年4月に公開された劇場版『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』のハロウィン再会上映(同年10月に上映)での盛り上がりは、記憶に新しいところです。

リバイバル上映自体は昔からある上映形態ですが、これらの上映で注目されたのは、その上映規模です。いずれも数百館規模での一斉上映であり、SNSでの熱狂的な盛り上がりとともに大きな話題となりました。

"映画館で作品を観る"という価値自体が変化しつつある今、"過去の名作を映画館で観たい"というニーズを的確に捉えて柔軟に対応していくことは、今後の映画館運営にとって非常に重要なことです。

リバイバル上映時、上映素材はどう用意するか?

大規模な全国一斉リバイバル上映・・・もし上映素材がフィルムのままだったら、実現できたのでしょうか?

上映終了から日数が経過していることを考えると、倉庫に保管してあるフィルムの数や、再度フィルムを焼き増す費用面も含めて、スムーズな実現は難しかったものと想像されます。上映素材がデジタル(DCP)化されて、素材の用意がフィルムと比べて容易になったことが、この実現に大きく影響していることは確かです。

ただ、素材自体はフレキシブルになりましたが、各映画館への素材の配布・納品には、未だに物理媒体(HDD)が使われ続けている現状があります。そしてHDDにおいてもフィルムと同様に、上映終了するとその多くがラボなどへ返却の上で初期化されるので、マスターなどを含めて配給会社が手元に残しておく分は限られます。

新規で公開する際には、HDDを用意・配送するのに必要な予算も、上映館の数だけ確保されます。しかし、上映終了からしばらく経過した作品を上映する場合、常時上映する映画館数によっては、HDDを複製(コピー)・配送するための費用や手間が改めて必要となります。

フィルム時代と比較すれば、HDDでの運用にかかるコストは大幅に下がっていますが、費用の構造自体は変わっておらず、新たな手間と負担は避けられません。また、リバイバル向けにせっかくHDDを再複製したとしても、新規公開時とは異なり、そのHDDを再度流用できる可能性は少ないと考えられます。

DCPになったからできること:納品にかかる手間&コストを削減

せっかく素材がデジタル化されて、新たな上映形態の可能性も見えてきたのに、どうにかならないのか・・・とお考えの方も多いのではないでしょうか。

そのような手間と費用を削減する方法として、DCPを映画館までオンラインで配送するサービスの利用が挙げられます。海外では、過去作品のリバイバル上映を取りまとめるWebサイトがあり、上映したい場合にはそのサイト経由で、権利を持つ会社とやり取りするケースもあります。

HDDの複製や配送における費用がかからない代わりに、配信費用がかかることになりますが、マスターとなるHDDが1本あれば、各映画館にDCPをインターネット経由で配信・納品できます。

HDDを再度複製するのはもったいない・・・という場合(リバイバル上映、イベント上映など)や、各映画館にHDDを回す時間的な余裕がない場合にも、高い利便性を発揮します。

その他にも、次のような利点から、素材に関わる運用をスムーズに実施できます。

  • HDDの管理が不要
  • HDDの盗難・紛失リスクがない
  • 上映日に合わせた配送手配が不要
  • 輸送時のHDD破損リスクがなく、再手配も不要
映画館への納品フローの違い(HDD vs DCP配信)
映画館への納品フローの違い(HDD vs DCP配信)

上映素材のデジタル化によりDCPになったことで、フレキシブルに扱えるようになり、上映形態にとどまらず、運用面においてもできることが増えています。

せっかくのデジタル化を活用して、手間やコストの面も含めて、新しい上映形態の可能性を検討し続けることが重要です。

さいごに:DCPによるデジタル化を活かして、興行形態の可能性を広げよう

「映画館で映画を観る」という経験が特別なものになりつつある今、顧客体験の価値を向上させて新しい興行形態の可能性を広げていくことは、今後の映画業界の命運を左右することでもあります。

SNSの普及によって、過去作品がトレンドとして一気に話題となることも、珍しくなくなっています。

眠っている過去作品がいつまた日の目を見るか分からない時代に、柔軟な思考と対応力が求められています。

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動画による説明

上映素材の運用の変化について、海外のケースも含めてお話しします。

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上映素材を映画館までインターネット経由で配送するDCP配信サービスや、上映・興行管理システム(TMS:シアターマネジメントシステム)については、日本国内の50館以上へ導入され、映画館のデジタル運用を日々サポートしています。

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