映画館に集まるビッグデータとそのゆくえ
上映作品を探し、上映館を調べ、上映時間を選び、チケットを購入する。
お客さまが映画を見るまでの行動は、今やそのすべてを、インターネット経由で完結できるようになりました。そしてそれは、映画館に膨大な顧客データが集まることを意味しています。
さて、この貴重なデータを、映画産業はどのように生かしていけるのでしょうか?
世界の現状も交えながら、見ていきたいと思います。
映画館はビッグデータの宝庫?
海外では、過去数年にわたって、映画産業におけるビッグデータの質が評価されています。
映画館は、顧客データを収集するのに最適な位置にあり、データからお客さまのプロファイル(人物像)を構築することで、収益機会の改善と運用の効率化に繋げられると言われてきました。
世界の映画館では、この貴重なリソースを活用するために、以下のような有望な措置を次々と講じています。
- ロイヤルティスキームの設定(ポイント制による優遇など)
- サブスクリプションモデルの実験
- データを視覚化するテクノロジーへの投資
映画産業では、この貴重なデータを収集する必要性を、これまでにおいても十分認識していました。しかし効果的に議論が進んでこなかったのは、収集されるデータが"原材料"にすぎず、映画館や他の業界パートナーがその真の価値を引き出すために、"データを分析・改良する必要がある"からに他なりません。
データの優位性を獲得するためには、「どのような観点でデータの本質を抽出し、ビジネスに適用できるか」が、常に重要です。生のデータからはチケットの購入人数を知ることはできますが、分析することで、「どのサイトのどの要素が、ターゲットを惹きつけ、チケットの購買まで誘導したのか」までを可視化することができます。
こういった洞察は、生データより何倍も価値があり、映画館はデータそのものではなく、分析結果から推測される結果を提供できるようデータを改良することで、そこに価値が生まれるのです。
データの価値と利用範囲
映画館は、「誰が映画館にいるのか」「誰と一緒にいるのか」「何を見ているのか」「何を買っているのか」そして「何に興味があるのか」を知る必要がありますが、それ以上に、すべての映画館が「なぜこのデータを収集する必要があるのか」を理解する必要があります。
データ分析は以下のように、これらのビジネス上の決定の根拠として機能し、それらが成功する可能性を高める指針となります。
- 日中は家族向け、平日の夜は学生向け、などスケジュールを最適化する。
- 価格を調整して、ピーク時の収益を最大化する。
- 他産業の主要な人口統計で、うまく機能している新しいテクノロジーや設備に投資する。
しかし、結果として得られる改善は、非常に自己完結型であり、映画館の中だけで完結してしまっています。映画館は、映画の収益環境の一部に過ぎず、その利用範囲は限られているのが現状です。
配給会社とのデータ共有
海外では、映画館がデータを配給会社と共有することで、マーケティングキャンペーンに成功した例もいくつか発表されています。また予告編についても、信頼性の高いアプリケーションを介してほぼリアルタイムでログと再生レポートを出力するソリューションが市場に出回っており、「どの本編にどの予告編を上映するか」をマーケティング戦略とともに組み立てています。
例えば、「35〜50歳の女性の中である作品に関心を示した人々のうち、予告編を見て関心を持った人が30%を占めている」ということを配給会社と共有すれば、残りの宣伝活動を位置付ける上で、大きな利点を得ることができます。ここでの目標は、映画館の訪問者の全体的な増加を促し、映画に時間とお金を費やしてもらうことです。
データの共有は、最終的に一方の当事者だけでなく、業界全体に利益をもたらします。
映画館と広告
大手のブランドは、広告を表示するユーザーをより柔軟に制御できる自動化ソリューションを好む傾向があります。データ分析に基づき、ターゲットとなるお客さまの前に配置されるプログラマティック広告の速度と正確さは、他のどのタイプの広告にも匹敵しません。
正しいターゲットにアクセスすることは簡単ではなく、競争も非常に激しいのが現状で、多くのオンライン広告は、消費者の前に読み込まれる前に、ミリ秒まで自動的に入札されています。
ブランドが効率的でターゲットを絞った広告機会に対する需要を高めており、その広告価値はますます高くなっています。
プログラマティック広告への世界的な支出は、2018年に840.9億ドルを超えていますが、それでも映画業界向けの広告購入の大部分は、依然として手動で処理されています。これはテレビ業界が直面しているのと同じ問題であり、すでに彼らの収益に影響を与えています。
海外では、映画館が映画広告会社またはソフトウェアプロバイダーと協力することにより、プログラマティック広告在庫を提供する機能を模索している可能性があります。これは、データを持っている映画館とそれを望んでいる広告主との間の単純な取引ではなく、全体的な広告収入とパフォーマンスを向上させることを目的としたコラボレーションです。
消費者が関連性の高い広告を表示することを好むという傾向も増えており、こういった広告はスクリーンタイムの価値を高め、広告主との関係を強化するだけでなく、顧客体験を向上させることにも繋がると考えられます。
さいごに
データは常に映画館の収益環境の一部でしたが、デジタルの発達により自動化されたソリューションが、データの品質を向上させています。この流れから、より価値のある洞察が生み出され、真の利益をもたらす方法で、データを集約〜分析〜活用できるようになりました。
海外ではすでに、データを活用したマーケティング活動が主流となってきています。
日本においても、映画館はデータを業界全体のために実用的なデータ分析と活用方法について、考え始める時が来ているのではないでしょうか?
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