Wi-Fi Aware (NAN)とは? 〜Bluetoothに勝る?Appleも対応開始する近接通信技術〜

多くの企業がDXを進める中、スマートフォンやIoT機器との近距離でのスムーズなデータ通信を実現する技術が注目を集めています。

この記事では、今後大きな転換期を迎える技術「Wi-Fi Aware」に着目し、概要やメリット、今後の展望などについてご説明します。

Wi-Fi Awareとは

Wi-Fi Awareは、Wi-Fi Allianceが標準化した近接通信技術で、NAN(Neighbor Awareness Networking)とも呼ばれています。

対応するスマートフォンやIoT端末が周囲の対応機器を自動的に検出し、情報やデータをやり取りできます。AndroidではOSレベルで対応していますが、2025年にはAppleがiPhoneおよびiPad向けの対応開始を表明しており、今後の普及に弾みがつくと期待されています。

Wi-Fi Awareと通常のWi-Fiとの違い

Wi-Fi Awareでは、我々が普段利用している通常のWi-Fiとは異なり、端末間の直接通信(P2P:ピアツーピア)を前提としています。なお、Wi-Fi Awareの使用中であっても、通常のWi-Fiを並行して使用できます。

通常のWi-Fi Wi-Fi Aware
通信形態 アクセスポイント経由
(インフラ型)
端末間の直接通信
(P2P)
接続認証 SSID・パスワードが必要 自動検出・即時通信
インターネット接続 必須 不要
主な用途 インターネットやLANの通信 近接通知、端末間の通信

Wi-Fi Awareの特徴とメリット

Wi-Fi Awareはその動作原理から、ユニークな特徴を持っています。

「発見(Discovery)」「データパス(Data Path)の確立」に二段階に分けて、それぞれご説明します。

発見

低消費電力な検知・検出

端末は、非常に小さな電波信号(フレーム)を定期的に周囲へ送信することで、近くに存在する他のWi-Fi Aware対応端末を自動的に検知し、「存在を認識」します。これにより、バッテリー消費を最小限に抑えながらも、常時稼働できます。

GPSが不要

Wi-Fiの電波強度などを用いて端末間の物理的な近接性を判断するため、GPS信号が届きにくい屋内や地下でも、正確な近接検出が可能です。

データパスの確立

高速な直接通信が可能

近くのWi-Fi Aware対応端末を検知した後、状況に応じて、Wi-Fi Directや通常のWi-Fiネットワークを介して、Bluetoothよりもはるかに高速なデータ通信を利用できます。

インターネット接続が不要

Wi-Fi Aware対応端末の検知や直接通信の際に、インターネット接続は必要ありません。電波が届かずインターネット接続できなくても、通信できます。

IPアドレスの事前設定が不要

検出の段階では、IPアドレスの割り当ては不要です。データ転送が必要となる場合にのみ、動的にアドレスが割り当てられるため、Wi-Fi Awareの利用にあたっての事前設定が不要です。

Wi-Fi Awareのメリット

Wi-Fi Awareのユニークな特徴により、多くのメリットをもたらします。

優れたユーザー体験

シームレスな自動連携

ユーザーは複雑な設定や手動でのペアリング作業なしに、近くの端末を自動的に発見し、連携できます。これにより、より直感的で手間のかからない体験が提供されます。

バッテリー消費の抑制

低消費電力なメカニズムにより、バッテリーの消耗を気にすることなく、端末が常時「周囲を発見・検知」する状態を維持できます。

多様なユースケースへの対応

オフライン環境での機能性

インターネット接続がない場所でも端末間の通信が可能なため、大規模イベント会場や災害時など、ネットワークインフラが利用できなかったり不安定だったりする状況下でも、P2Pによる直接通信が可能です。

高精度な屋内位置情報サービス

GPSが利用できない屋内環境での正確な位置検出能力は、スマートリテールや施設内ガイド、倉庫管理など、位置情報に基づく多様なサービス提供を可能にします。

高速&双方向のデータ通信

Wi-Fiの高速・大容量通信能力を活かし、写真や動画、ゲームデータなどといった大容量ファイルでも、Bluetoothよりもはるかに高速に直接共有できます。

また、Bluetoothを用いた類似技術(ビーコン)のような片方向通信ではなく、双方向での直接通信が可能です。

Wi-Fi Awareの普及状況と今後の展望

Wi-Fi Awareは2015年に発表されたサービスでありながら、次のような問題点から、あまり普及しているとは言えません。一部では活用する動きが見られたものの、試験的なものが多く、具体的なユースケースは限られます。

  • 対応端末が限定される
  • ユーザー認知度が低い
  • 競合技術を置き換えるほどのインパクトがない

Androidでは早期からOSレベルでの対応がなされているものの、すべての端末で対応しているわけではありません。また、AppleのiOS/iPadOSでの対応もようやく公表された段階であり、エコシステムが広がる下地が整っていませんでした。

また、いくつかのユニークな特徴を有するとはいえ、NFCやビーコンによる無線通信の既存技術を置き換えるほどのインパクトが認められないというのも一因でしょう。

ただし、2025年からのAppleによる対応開始については、大きな地殻変動をもたらす可能性があります。例えば、Apple製端末で広く利用されている「AirDrop」のような独自機能がWi-Fi Awareベースで利用できるようになると、一気に認知が広がり、大きなエコシステムが形成される可能性もあります。

さいごに

今後大きな転換期を迎える可能性のある技術として、Wi-Fi Awareについてご紹介しました。

近年では、DXに関連するプロジェクトの中の一案件として、Wi-Fiの導入や改善についてご相談を受けることがとても多くなっています。

ご不明点や気になる点などありましたら、どんなに些細なことでも問題ありませんので、お問合せフォームよりご相談いただけましたら幸いです。

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