工場・製造業がWi-Fiを導入するメリットと注意点 〜スマート工場の構築にも〜
働き方改革やオートメーション化による生産性向上の潮流を受けて、様々な施設同様、工場においてもネットワーク・Wi-Fi構築の重要性が大きく変わっています。今後さらに広がるとみられるスマート工場でも、Wi-Fi環境の整備は不可欠になりつつあります。
この記事では、工場・製造業がWi-Fiを導入する目的やメリットや、その注意点について説明していきます。
工場にWi-Fi環境を整備する目的とは
工場のWi-Fi環境とは、その名のように、工場のような生産・製造拠点(事業所)内に設置・整備されたWi-Fi環境のことを指します。
このような施設内にWi-Fi環境を設置する目的は、大きく2種類あります。これらとは別に、来客者向けのオープンなWi-Fi環境(ゲストWi-Fi)を用意するケースも増えています。
その1:工場内設備をWi-Fi化する
スマート工場では、ありとあらゆる生産設備・装置類がネットワークに接続されます。
ネットワーク接続をWi-Fiによって無線化することで、より迅速な導入とシームレスな運用が可能となります。
機械類やセンサー類のネットワーク対応が進む中、それらをうまく活用するためには、工場内設備のWi-Fi化は必須となりつつあります。
その2:従業員向け端末をWi-Fi化する
工場内に限らず操作端末の多様化が進んでおり、ペーパーレス化や生産性向上のために、従業員にタブレット端末やモバイル端末などといったハンディーターミナルを持たせることが当たり前となっています。これらの端末による効果を最大化するためには、いつでも安定して利用できるWi-Fi環境が欠かせません。
工場内の環境・状況などによっては、設備用とは分離して整備することもあります。
工場にWi-Fi環境を導入・構築するメリット
工場へ万全なWi-Fi環境を導入・構築することは、様々なメリットをもたらします。主要なものについて説明していきます。
メリット1:スマート工場(スマートファクトリー)の実現
スマート工場とは、インダストリー4.0(I4、I4.0、第4次産業革命とも言い、ドイツ政府内のプロジェクトに由来します)を具現化した先進的な工場のことを指します。インダストリー4.0では、次の4つを設計原則としています。
- 相互運用性: IoTなどを通じ、機械類やセンサーおよび人が、相互に通信する。
- 情報透明性: 適正な決定を下す際の必要情報を、運用者に提供する。
- 技術的補助: 危険業務の代行や情報の統合的な集約・可視化によって、人をサポートする。
- 分散型決定: できるだけ自律的に業務を実施する。
技術の進歩とともに高効率化の仕組みを取り入れて進化してきた工場・製造業ですが、サイバーフィジカルシステム(コンピューティングとプロセスの統合)の考え方を取り入れたスマート工場によって、更なる進化を遂げようとしています。
上述した4つの設計原則では、機械類やセンサーなどが通信することを大前提としていますが、その中でも万全なWi-Fiは、重要な通信インフラの役割を果たします。
メリット2:施設内のどこへも導入しやすい
真のスマート工場を実現するには、敷地内のどこでもWi-Fiが繋がるように構築することが望ましいです。例えば、屋内だけでなく屋外のヤードを対象エリアとすることで、業務可能な範囲を広げることが可能です。
また、建屋が複数に分かれているような施設において、建屋間の有線による回線敷設が難しい場合も珍しくありません。そのような場合でも、FWA(固定無線アクセス)やWi-FiのWDS(リピーター機能)などを組み合わせて活用することによって、Wi-Fiの繋がるエリアを広げることが可能です。
メリット3:レイアウト構成や変更にも柔軟に対応できる
従来では有線LANケーブルによる接続が一般的でしたが、工場内のような特殊な環境で使用するためには、環境に応じた工事が必要となります。例えば、安全性への配慮から、配線を床下に隠したり天井を這わせたりなどといった対応が取られます。
Wi-Fi環境下であれば配線が最小限で済むので、より効率や生産性を重視したレイアウトを構成しやすくなります。
生産ラインの組み替えなどで機械類のレイアウト変更が必要となる際にも、有線の場合には敷設し直しなどの工事が必要となります。一方のWi-Fi環境下であればネットワークの再構築も不要なので、レイアウト変更に要する期間を短縮できるとともに、自由度も高まります。
メリット4:生産性の向上
快適に使用できるWi-Fi環境の導入は、生産性向上においても大きな役割を果たします。
業務利用できる機器は、有線LANを前提としたネットワーク環境ではLANポートを搭載するものに限られる一方で、Wi-Fi環境下であれば業務内容に応じて活用できる機器の幅が広がります。
そして、屋外もWi-Fi化しておくことで、屋内外を行き来するようなケースでも業務をおこなえます。
メリット5:来客者の利便性向上、業務用Wi-Fiへの電波干渉の防止
業務用だけでなく、来客者向けにもWi-Fi環境の整備しておくことは、直接的に来客者の利便性を向上します。それは実質的に「来客者を大事にしている」姿勢を示すことになり、ひいては企業のイメージアップにも繋がります。そして、来訪者との打ち合わせの効率を高めて円滑化できるという意味合いでは、自社の社員にとってもメリットをもたらします。
それだけでなく、業務用のWi-Fiの安定性確保という重要な役割もあります。
打ち合わせ時にパソコンを広げることが当たり前となっている中、来客者向けのゲストWi-Fiが用意されていない場合、来客者はスマートフォンのテザリング機能によって通信を確保しようとします。これはいわゆる「野良Wi-Fi」が工場内に作り出されることを意味し、業務用のミッションクリティカルなWi-Fi環境にとっては、電波干渉による不安定化のリスクを生じてしまうのです。
工場へWi-Fi環境を導入・構築する際に確認すべき注意点
ここまでメリットについてご説明しましたが、ただ単純にWi-Fiルーターを設置すればいいというわけではありません。注意すべきポイントについて、代表的なものをご紹介します。
注意点1:Wi-Fiを必要とするエリアのどこでもつながるか、適切に構築できているか
特に業務用途の場合には、機械類が配置されたり業務をおこなったりするエリア内のどこからでもWi-Fiを使えるようにする必要があります。使える場所が限られたり、接続できても安定しなかったりすると、メリットを最大限に享受できないばかりか、業務にも支障をきたします。来訪者向けについても、来客用の会議室などで使えないと、意味がありません。
「どこでもつながる」「ちゃんと使える」の実現には、適切な構築が肝心です。想定される利用人数や施設規模・環境などに応じて、プロ向け(業務用)の適切な機器を、適切に設置する必要があります。
屋外をWi-Fi化するためには、屋外専用に設計された機器を使用する必要があります。また、屋内であっても工場のような特殊環境下で使用するためには、その環境に応じて機器を選択します。例えば、高温や粉塵にさらされる場所では、屋内であっても防水・防塵に対応しつつ動作保証温度の広い機器が望ましいです。
注意点2:セキュリティーは考慮できているか
工場・製造業向けのWi-Fiは他業種向けのケースと同様に、不特定多数の外部関係者がアクセスする可能性も鑑み、セキュリティー面での考慮が重要となります。
例えばWi-Fiには、経由する通信を暗号化する仕組みとして「セキュリティープロトコル」が採用されていますが、これの古いバージョンや暗号化なし(パスワードなし)にしか対応しない場合には、第三者によって悪用されるリスクが高まります。
また、来訪者向けのWi-Fiを導入する場合には、業務向けとはネットワーク的に分離するよう設計されていることも必須です。業務においては重要な通信がおこなわれるので、不正アクセスできてしまう経路をWi-Fi経由に作ってはなりません。
注意点3:電波の使用チャンネル・干渉は考慮できているか
Wi-Fiを設置するには、それぞれのアクセスポイントで使用するチャンネル(周波数帯)や、外来波(外部から漏れてくる無線電波)などにも細かな配慮が必要です。
Wi-Fi向けとして使用できる電波の周波数帯は限られており、利用状況などを踏まえながら、それぞれの用途別へ適切に割り当てる必要があるのです。
注意点4:Wi-Fi導入後の運用・メンテナンスはできているか
工場・製造業のWi-Fiは、導入・構築してお終いではありません。その後も適切に運用・メンテナンスし続ける必要があります。
Wi-Fi機器も家電製品などと同様に寿命があり、突然壊れることがあります。特に工場内のような特殊環境下では、厳しい環境ゆえに故障リスクへの考慮が重要です。万一の故障時に復旧できる体制がないと、業務に多大な支障・悪影響をきたすこととなります。
そして、Wi-Fiを含むネットワーク機器類IT機器は技術進歩が著しく、世代交代やバージョンアップによる陳腐化も起こりやすいです。特に2013年より前に設置されたままのWi-Fi機器は、現在主流である「Wi-Fi 6」と比べて少なくとも2世代前のものなので、速度面や特にセキュリティー面から推奨されず、早期に置き換えるべきです。
工場に快適なWi-Fi環境を導入・構築するにはどうしたら良いか
Wi-Fiは、家電量販店などで多くのコンシューマー向け製品が売られていることから、導入ハードルが低いものと誤解されやすいですが、実は極めて専門的なものです。
工場でのWi-Fi環境の停止は、業務に支障をきたし、損害にも直結します。このような施設環境では、専用の計測機器を用いた電波測定をおこない、電波の伝搬状況を判断しながら、Wi-Fi機器の種類や台数、設置場所などを慎重に選定・決定する必要があります。
まずは、Wi-Fiを専門的に取り扱う事業者へ相談してみるのが良いでしょう。電気工事の事業者でも、数あるオプションの一つとしてWi-Fi工事への対応を謳うケースがありますが、専門的知識やノウハウを持ち合わせていないことも珍しくありません。
相談先がわからない場合や、設置した事業者が相談に乗ってくれないような場合には、当社のWi-Fi専門チームでも無料でご相談を承っています。現在の状況などをヒアリングさせていただき、ご要望によって「Wi-Fiの品質に問題ないか現状把握したい」「このエリアだけ改善したい」のようなニーズへも柔軟にお応えできます。
さいごに
各業界の事業拠点にとってWi-Fi環境は、重要な位置付けとなっており、それは工場・製造業にとっても同様です。そして、スマート工場化による更なる生産性向上を図ろうとしている中、Wi-Fi環境の重要性はかつてないほど高まっています。
ご不明点や気になる点などありましたら、どんなに些細なことでも問題ありませんので、お問合せフォームよりご相談いただけましたら幸いです。
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