Wi-Fi Sensingとは 〜Wi-Fi電波を活用した新しいセンシング技術〜

我々の生活にとって欠かせないWi-Fiを、通信とは異なる目的で使用する「Wi-Fi Sensing (センシング)」が、注目されています。

この記事では、Wi-Fi Sensingの概要や特徴などについてご説明していきます。

Wi-Fi Sensing (センシング)とは

Wi-Fi Sensingは、既存のWi-Fi電波を活用して空間内における物体や人の動きを検出する、新しい技術です。IEEE802.11bf規格として、標準化に向けた動きが進められています。

Wi-Fi Sensingの基本的な仕組み

Wi-Fi Sensingは、最小限の機器によるシンプルな構成で動体検出を可能とするのが特徴です。

一般的なWi-Fiインフラによって構成

我々にとって馴染みのある通常のWi-Fiでは、親機(無線ルーターやアクセスポイント)および子機を設置することで、それらが通信し合ってワイヤレスインターネットを実現します。

Wi-Fi Sensingでは、このような通常のWi-Fiのために設置されたインフラを活用でき、専用のセンサーなどを追加設置することなく構成できます。

反射信号を利用

アクセスポイントなどといったWi-Fi親機から送信された電波は、部屋の壁や家具、人体などによって反射されます。この反射した電波を受信することで、既存のWi-Fi機器がセンサーの役割を果たします。

位置や動きを検出

Wi-Fiの電波エリア内において、物体や人などが動くと、これらによる反射によって電波に変化が生じます。この際の変化を細かく検知・分析することで、物体や人の位置や動きを検出します。

Wi-Fi Sensingのメリット

Wi-Fi Sensingは、これまでとは異なる方法で検知・検出をおこなうことから、数々のメリットがあります。

プライバシーの保護

カメラを用いることなくセンシングをおこなうことから、プライバシーの問題を回避できます。従来の映像による監視とは異なり、顔や個別行動を認識することがないので、個人のプライバシーを守りながら、状況把握が可能となります。

低コストでの導入

既存のWi-Fiインフラの活用が基本となるため、追加のセンサーやカメラを導入する必要がありません。そのため、機器導入におけるコストを大きく削減できます。

子機の携帯や増設が不要

Wi-Fi電波を用いる似たような規格として「Wi-Fi CERTIFIED Location」がすでに存在し、端末間の距離を数十cm程度の精度で測定できます。この規格では、測定対象としてWi-Fi子機を用いることが前提となるので、例えば人の行動を把握するためには、スマホやウェアラブル端末を携帯させる必要があります。

これに対してWi-Fi Sensingでは、子機を携帯させたり増設したりする必要がありません。スマホを持ち歩かない高齢者やペットなども、監視対象とすることが可能です。

Wi-Fi Sensingの課題と今後

Wi-Fi Sensingの課題

まだ新しい技術ゆえに、Wi-Fi Sensingにはいくつかの大きな課題があります。

精度の向上

Wi-Fiの電波は、様々な要因の影響を受けやすく変化しやすい特性上、物体の位置を高精度で特定することは難しいとされます。密集したエリアや複雑な空間・環境では、特に精度が落ちやすく、誤検知も生じる可能性があります。

ノイズや電波干渉の影響

Wi-Fiは、周囲の他の無線機器や電子機器などからのノイズや干渉を受けやすい性質があります。このようなノイズや干渉は、センシングの精度にも大きく影響を与えることから、これらの影響要因をできるだけ排除する必要が生じます。

法規制やプライバシー対策

センシングデータの収集に際しては、国・地域ごとのプライバシー法制や関連規制の対象となる可能性があります。そのため、センシングデータの保存や利用方法には、慎重な確認と配慮が求められます。

Wi-Fi Sensingの今後

Wi-Fi Sensingは、今後ますます進化し、様々な分野・目的での活用が期待されています。その中の一例をご紹介します。

  • スマートホーム: 人体検知による、照明や空調の自動調整
  • 介護・医療分野: 患者の転倒検知やモニタリング
  • セキュリティー: 不審者の侵入や異常行動の検知
  • スマートシティー: 交通状況や人流の把握、公共サービスの向上
  • 工場・物流分野: 作業状況のモニタリング、業務の効率化

さいごに

Wi-Fi Sensingは、従来のWi-Fiインフラを活用しつつ、物体や人の動きを検知できることから、大きな可能性を秘めています。そして高品質で安定したWi-Fiは、Wi-Fi Sensingの精度を高めて可能性を広げるためにも、寄与するかもしれません。

ご不明点や気になる点などありましたら、どんなに些細なことでも問題ありませんので、お問合せフォームよりご相談いただけましたら幸いです。

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