ECにおける商品のショッピングカート放棄とは 〜発生理由と解決策〜

多くのECサイトにおいて共通で挙がる課題がありますが、その中でもよく知られているのが「ショッピングカートの放棄」です。

この記事では、ショッピングカート放棄の概要や生じる理由を、解決策とともにご説明します。

ECのショッピングカート放棄とは

ECサイトにおける「ショッピングカート放棄」とは、顧客がショッピングカート(買い物かご)に商品を入れたものの、購入手続きを完了しない現象を指します。

カートに商品を入れる行為は購買意欲の表れと言えますが、何らかの理由により購入を断念し、カートに商品を残したままサイトを離脱してしまうことが、「カートを放棄した」と見なされます。

多くのECサイトでこの現象が頻繁に発生しており、売上機会の喪失に繋がっています。このことを裏付けるように、フォレスターの調査では、Web購入者の88%が「注文を完了せずにカート放棄したことがある」と答えています。

ショッピングカートの放棄率は、次の計算式で算出します。

  • カート放棄率 = 購入が完了しなかった数  ÷ カートの作成数 (%)

ECでショッピングカート放棄が生じる主な理由

顧客がカートを放棄する理由を理解するには、そもそも顧客がECサイト上で何をしているのかを、掘り下げて考える必要があります。

1. すべての顧客に購入意欲があるとは限らない

ショッピングカートに商品を入れるすべての顧客が、本当に買い物をしようとしているとは限りません。

そもそも買い物する気がなくウィンドウショッピングを楽しんだり、ウィッシュリストの代替としてショッピングカートを使用したりする顧客がいることも、忘れてはなりません。

2. デバイスの特性も影響する

フォーブスの調査によると、デバイスの画面が小さいほど、ショッピングカート放棄率の平均値が高くなりやすいという傾向が明らかになっています。

  • パソコン: 平均放棄率 73.1%
  • タブレット: 平均放棄率 80.7%
  • モバイル: 平均放棄率 85.6%

このような結果には、デバイスならではの性質や、利用シーンなどが深く関係しています。

デバイス性質の面では、パソコンが大画面で1つのタスクに集中させやすいのに対して、モバイルはプッシュ通知などのような「邪魔」が割り入りやすいことで、顧客の購買意欲も削がれてしまいます。

そして利用シーンの面では、モバイルは移動中や作業の合間に使われることが多く、その場では購入しないという割合がパソコンなどよりも高くなってしまうのです。

3. 煩雑な必要手続きや、隠れていたコスト

いざ顧客が購入しようとしても、ショッピングカートがユーザーフレンドリーな造りとなっていなかったり手続きが煩雑だったりするような場合には、これも放棄される要因となります。

  • アカウント登録が必須
  • カート内容の変更操作(数量変更や削除)が面倒
  • reCAPTCHAなどのボット対策を突破できない
  • エラーなどで手続きをスムーズに完了できない

また、送料などの追加費用についてわかりやすく言及されていない場合には、購入手続きを阻害する重要な要因となります。

ECでのショッピングカート放棄を防ぐための対策

ユーザー目線に立って改善を図ることで、カート放棄は減らせます。

1. サイトの高速化・安定化

顧客を途中離脱させないためにも、ECサイト自体のパフォーマンスや安定性はとても重要です。

昨今のWebユーザーは「せっかち」であり、ページの読み込みに数秒かかるだけでも「遅い」「表示されない」と感じて、ブラウザーを閉じてしまいます。シームレスなページ閲覧・遷移ができることは、ユーザー体験やブランド価値を向上する面でも重要ですので、リソース増強やCDN導入などによって高速化・安定化を図りましょう。

2. モバイルへの最適化

多くの顧客がスマートフォンなどのモバイル端末を使いこなす昨今では、パソコンを日常的に使う習慣がなく、実質的にモバイル端末がインターネットへの唯一のアクセス手段となっている方も少なくないのが現状です。

そのため、モバイルに最適化されたUI(ユーザーインターフェイス)を提供することは、今どきのECサイトにとっては必須です。

3. 注文・支払い(チェックアウト)の手続きは簡素に

リテールダイブの調査によると、EC利用者の87%が、注文手続きが複雑だとカートを放棄すると回答しています。そして同55%は、そのECサイトは二度と利用しないと回答しています。

どのECサイトにおいても必要事項(宛先やE-mail、電話番号、支払情報など)の入力は欠かせませんが、顧客にとっては手間であり、購入意欲を削いでしまう手順でもあります。

同じ情報を何度も入力させるような手順があれば無くし、アカウント連携や自動補完による入力補助を取り入れるなど、注文手続きはなるべく手間のかからない簡素なものとするべきです。

4. 購入前の不安を取り除く

ECにおける不満点として挙げられる中でも、上位の1つが「実物が思っていたものと違う」です。これを未然に防ぐために顧客は、商品画像が少なかったり詳細情報が掲載されていなかったりする商品を、無意識のうちに避ける傾向があります。

これを解消するためには、詳細な説明文を加えたり、ニーズに合った「リアル」な商品写真を掲載したりすることが重要です。例えばアパレルの顧客が購入前に把握したいのは、検討している商品が「自分の体型や肌の色にどう似合うか」であり、1人のモデルやマネキンが着用している画像だけでは不十分です。自分と同じような体型・肌色のモデルが商品を着用している画像こそが、顧客の求める「リアル」な商品写真です。

しかし、そのような商品写真を揃えるには、多くのモデルを揃える必要があり、多額の撮影費用もかかります。AIによるモデル着用画像の生成を活用すると、顧客のニーズにうまく応えながら、そのためにかかるコストや時間を大幅に節約できます。

5. 価格透明性の確保

スタティスタの調査によると、カート放棄に至る原因のうち63%を占める最上位は「送料が高かった」でした。

カートに商品を入れる前段階(商品ページなど)で送料に関する記載がなかったりすると、注文画面に遷移してから送料が加算されることで、「想定外の費用が上乗せされた」と顧客は感じてしまうのです。

これを踏まえると、価格の透明性を確保することで、カート放棄率の改善を図れます。最もシンプルで手っ取り早いのは、商品ページにも送料を明記しておくことです。

もし特定条件(例えば一定金額以上の注文など)で送料無料としている場合には、そのことも各所に明記しつつ、カート画面に「この注文は送料無料」「あと〇〇円で送料無料」のような記載を入れるのも良いでしょう。

6. 「今が買い時」と認識させるためのプレッシャー

他の顧客による購入情報を知らせることも、カート放棄率の改善に役立ちます。

例えば、商品の売れ行きについて「この1ヶ月で〇〇個売れました」「残りわずか」のように表示することで、「今注文しないと売り切れるかもしれない」というプレッシャーを与え、購入を促す効果があります。

それだけでなく、売れている商品であることを認識させることによって、安心してその商品を購入できるという効果もあります。

7. 返品・交換への対応

顧客都合による返品や交換へも対応している場合には、そのことをカートページにも明記すべきです。

前述したような「実物が思っていたものと違う」を経験しているような顧客は、注文を思いとどまってしまうことがあります。特に返品・交換にかかる費用が無料であれば、顧客側のリスクは排除できるので、カート放棄への対策としても有効です。

8. 柔軟な支払手段

支払手段が限定されていると、やはりカート放棄に繋がります。

クレジットカードの主要国際ブランドへの全対応はもちろん、コード決済やコンビニ決済、共通ポイントなど、多様かつ手軽な支払手段が利用できるようにしておくことで、顧客の希望する方法での決済ができないことによる機会損失を無くせます。

ECで放棄されたショッピングカートの注文手続きを促すためには

上述したような対策によってカート放棄率を改善できても、ゼロにすることはほぼ不可能です。放棄されたカートを「回収」、つまり注文手続きを促すためには、別の施策をおこなう必要があります。

とはいえ、放棄されたカートの回収にかかるコストは通常、顧客を新たに獲得するよりもはるかに少なく済みます。カート放棄した顧客をECサイトに呼び戻す最も簡単な方法は、注文完了していないことを思い出させるために、メールやプッシュ通知で知らせることです。

カート放棄を知らせるメールに含めておきたい内容は、以下のとおりです。

  • カート内の商品の画像
  • 商品の価格、送料を含めた価格
  • 他の顧客からの商品評価/レビュー
  • 返品/交換に関する情報
  • カートに直接飛べるCTAボタン

しかし顧客は通常、他のECサイトからも多くのメールを毎日受け取っています。その中でもメールを目立たせて、開いてもらうために、次のようなことに注意する必要があります。

  • 件名:興味を惹く、新鮮味のあるもの
  • 内容:メール内で類似商品も提示する
  • 内容:カート内商品に対する特別割引を提示する
  • 内容:顧客に向けたスタイリングを提示する

まず、ありふれた件名では多くのメールに埋もれてしまいますので、顧客目線で「開きたい」と思えるものにする必要があります。

メールを開いてもらえたら、そこからカートに戻ってもらうためのきっかけを提示します。その顧客向けの特別割引オファーは、カートへの移動と注文を後押しします。買いたい商品を決めあぐねている場合には、類似商品の提示が有効です。

どの洋服を組み合わせられるかわからない顧客には、その商品を用いてパーソナライズされたスタイリングをいくつか提示することで、注文する商品数を増やすこともできます。

まとめ

ショッピングカートの放棄は、長きにわたってECサイトを運営する事業者を悩ませてきた問題です。しかし、いくつかの対策や施策を実施することで、放棄率を改善したり注文に繋げたりすることも可能です。

昨今では、クラウドサービスの発展や生成AIサービスの広まりもあり、旧来からの課題へも対処しやすい環境が整いつつあります。

当社においても、AIによるパーソナライズやモデル着用画像の自動生成サービスを取り扱っており、アパレル企業を中心に多くの導入実績があります。サービスのご紹介や無料デモも承りますので、ご興味のある方は、ご遠慮なくご相談いただけますと幸いです。

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