分散クラウドとは何? 〜従来の集中型クラウドとの違いや注意点〜
クラウドコンピューティングは、インターネット経由でデータやアプリケーションにアクセスできる技術として、現代のビジネスや個人利用において不可欠な存在となっています。その中でも、新しい手法である「分散クラウド」が注目を集めています。
この記事では、分散クラウドの基本定義や従来のクラウドとの違いについて、メリットや注意点とともに説明します。
分散クラウドとは何か 〜基本定義〜
分散クラウドとは、複数の場所に分散されたクラウドインフラストラクチャーを使ってユーザーにサービスを提供する、クラウドコンピューティングの新しいモデルです。
これにより、ユーザーは地理的に分散されたデータセンターにアクセスすることが可能となり、ネットワークレイテンシー(遅延)を最小限に抑えつつ、より効率的にデータを処理できるのが特徴です。
分散クラウドの構造は、部分的にはCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)とも似ていますが、CDNが主にコンテンツ配信に特化しているのに対し、分散クラウドでは計算やアプリケーション実行を含む幅広い処理を分散的に提供します。
分散クラウドでは各地に配置されたノードを活用し、必要なデータをユーザーから近い最適な場所から提供することで、パフォーマンスが向上します。
分散クラウドは何が違うのか
従来のクラウド(特にパブリッククラウド)は、中央集権的なデータセンターに依存するのが一般的でした。その一方で、分散クラウドでは複数の地理的に分散したサーバーを活用することから、より柔軟で強力なモデルとして期待されています。
1. パブリッククラウドとの違い
パブリッククラウドは、クラウドプロバイダーによって集中管理されるデータセンターを、共有インフラとして各ユーザーや企業が利用する形態です。
使用されるリソースは主に、単一または少数のデータセンターに集中しており、ロケーションを指定して利用することが一般的です。しかし利用する地域によっては、遅延(レイテンシー)が生じたり、障害などの影響を受けたりしやすくなる可能性があります。
一方の分散クラウドは、地理的に分散配置されたリソースで処理することから、負荷分散や障害耐性に強いという特徴を持ちます。
2. プライベートクラウドとの違い
プライベートクラウドは、各ユーザーで共有するパブリッククラウドとは異なり、個別にカスタマイズされたインフラを、特定の企業や組織において占有利用する形態です。
占有利用する企業・組織向けとしてリソースを用意することから、セキュリティー要件を満たしやすいという特徴があります。こちらもパブリッククラウド同様に、通常は単一または少数のデータセンターに集中しているため、遅延や障害などの影響を受けやすくなっています。
一方の分散クラウドでは、プライベートクラウドと同様のセキュリティーレベルを確保しつつ、高い拡張性とコストパフォーマンスを実現します。
3. ハイブリッドクラウドとの違い
ハイブリッドクラウドは、パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせた形態です。
データの保管場所やアクセス管理などといった利用条件を細かく選択・制御するために利用されることが多いですが、異なるクラウド間のデータ移行やセキュリティー管理は容易でなく、採用ハードルは高くなっています。
一方の分散クラウドでは、上述のような利用条件をハイブリッドクラウド同様に選択・制御しつつ、単一のクラウドとしてシームレスに利用できます。
分散クラウドのメリット
分散クラウドは、拡張性や柔軟性、セキュリティーなどの面で多くのメリットを有します。
1. 拡張性と柔軟性の向上
分散クラウドは、必要に応じて複数のロケーションにわたってリソースを拡張できることから、急なアクセス増加にも対応できる拡張性を持ちます。
さらにエッジコンピューティングを取り入れることで、データ処理やアプリケーション実行をよりユーザーの近くでおこなえるなど、より柔軟なインフラ設計が可能です。
2. データロケーションの最適化
分散クラウドでは、データの配置先を柔軟に制御できるため、データの所在地に関する法規制やローカルポリシーに対応しやすくなっています。
各地域におけるデータ管理のルールやコンプライアンス要件を満たしながら、必要に応じてリソースを適切に配分することが可能です。例えば、EUのGDPRに準拠したデータ処理が求められる場合でも、必要な地域内でデータを保管・処理できます。
3. 遅延低減とパフォーマンス向上
分散クラウドは、パフォーマンスを高めるためにも効果的です。ユーザーに近い場所でリソースを提供できるため、ネットワーク遅延を大幅に低減し、アプリケーションなどの応答速度を向上させます。
リアルタイム処理が必要なアプリケーションやIoTデバイスなどのような分野においては、特にパフォーマンスが向上し、ユーザー体験の質を高められます。
4. セキュリティー強化
分散クラウドには、セキュリティーを強化しやすいというメリットもあります。
データが物理的に分散配置されることから、集中型の従来インフラに比べてセキュリティーリスクが低減しやすくなります。サイバー攻撃などの対象についても、特定の場所に依存しないことから、特定しにくくなります。
5. 可用性と信頼性の向上
分散クラウドでは、可用性と信頼性が向上します。
インフラが複数の地理的拠点で分散していることから、いずれかの拠点で障害や災害などが発生した場合でも、他の拠点でサービスを継続できます。重要データを扱ったりダウンタイムを許容できなかったりするような業界にとっても、高い信頼性のもとで利用できます。
分散クラウドの制約と注意点
分散クラウドは多くの利点を持つ一方で、まだ新しいモデルであることなどから、特有の制約や運用上の課題もあります。
1. 複雑な管理体制
分散クラウドは複数の地理的拠点にリソースが分散していることから、各拠点の管理やモニタリングが複雑化しやすいというデメリットがあります。
ネットワークの設定やセキュリティー対策も場所ごとに異なる場合が多く、適切な管理体制の構築が求められます。
2. コスト面の課題
複数ロケーションにわたってリソースを配備する分散クラウドは、ネットワークの利用料金やインフラの維持費など、従来の集中型クラウドと比べてコストが増大する場合があります。
そして、地域ごとのデータ保存やリソース使用量に応じた料金が加算されるため、コスト管理が重要になります。リソースの過不足なく配備する工夫や、運用効率を高める戦略も必要です。
3. 依存する技術要件の理解
分散クラウドを効果的に運用するには、ネットワークや分散データベース、マイクロサービスなどの技術に関する深い理解が不可欠です。
特に、ネットワークインフラが大きな役割を果たすため、各拠点間での安定した接続を確保する技術が重要です。これらの技術要件を適切に理解し、導入・運用するための人材やトレーニングも重要です。
4. データの一貫性管理
分散クラウドではデータを複数の拠点で処理・保存するため、データの整合性や一貫性の維持についても考慮する必要があります。
特に、異なる拠点で同じデータにアクセスしながら更新が行われる場合、整合性の確保が課題となります。これに対応するためには、分散データベースの利用やトランザクション管理などといった工夫が欠かせません。
まとめ
分散クラウドは、クラウドコンピューティングの新しい形態として、拡張性や柔軟性、パフォーマンスなどのあらゆる面で様々なメリットを有します。特に、ユーザーの近くでデータを処理できる点は、IoTデバイスの活用を加速するものとして期待されています。
当社では、クラウドやセキュリティーのパイオニアであるAkamai社が開発・提供する各種サービスを、長年にわたって取り扱っており、数多くのお客様へご提供しております。
Akamai社では、これまでリーダーカンパニーとして提供してきたCDNにおける高速配信の技術を活かして、クラウドコンピューティングのサービスを新たに提供開始しています。ご興味いただけましたら、是非お気軽にお問い合わせください。
関連コンテンツのご紹介
製品ページ
ブロードメディアでは、ウェブサイトやアプリケーション、APIに関する、セキュリティー対策やパフォーマンス高速化、負荷対策などの各種サービスを提供しています。また、これらサービスの開発元であるAkamai社のパートナープログラムにおいて、最高ランクである「Elite」の認定を受けています。
セキュリティー対策や高速化などでお困りでしたら、ぜひお気軽にご相談・お問い合わせください。