エッジコンピューティングとは何? 〜クラウドコンピューティングとの違いや活用例も解説〜

近年、IoTやAI技術の発展に伴い、エッジコンピューティングへの注目が高まっています。

この記事では、エッジコンピューティングの基本的な概要とともに、メリットや活用例などについても説明します。

エッジコンピューティングとは何か

エッジコンピューティングの定義

エッジコンピューティングとは、データの処理を、データの発生源である端末やネットワークのエッジ(端)で分散的におこなう技術です。近年において、IoTデバイスの増加やリアルタイム処理の需要拡大を受けて、注目が高まっています。

IoTデバイスや自動運転車、監視カメラなど、大量のデータを生成する機器において特に有効な技術として、今後の発展・利用拡大が期待されています。

クラウドコンピューティングとの違い

クラウドコンピューティングとの大きな違いは、分散処理による低遅延や負荷分散を実現できる点にあります。

クラウドコンピューティングでは、データを一度クラウドサーバーに送信して集中的に処理する必要がありましたが、エッジコンピューティングではその必要がないため、遅延や通信コストの削減が可能となります。

クラウドコンピューティング エッジコンピューティング
データ処理場所 クラウド上
(集中型のデータセンター)
データ発生源の近く
(端末や近隣サーバー)
遅延 大きい
(クラウド往復)
小さい
(ローカル処理)
通信コスト 高い
(大量のデータ送信)
低い
(必要最小限のデータ送信)
セキュリティー 中央で一限管理しやすい 分散管理でリスク分散
通信インフラ 高速なインターネット接続が必要 一部オフラインでも動作可能
運用の複雑さ 簡単 やや複雑

エッジコンピューティングのメリット

1. 低遅延によるリアルタイム処理の実現

エッジコンピューティングにおいて最大のメリットとも言えるのが、リアルタイム処理の実現です。

データ処理をエッジデバイス上でおこなうことで、クラウドへの往復時間を削減できるので、リアルタイム性が向上します。これは、自動運転や遠隔治療のような即時判断が求められるシステムにおいて、特に大きな利点となります。

2. ネットワーク負荷とコストの削減

データをクラウドに送る前に、エッジ側で必要な情報だけを抽出・処理することで、通信量を削減できます。これにより、ネットワークの負荷軽減が可能となり、通信コストの削減にも直結します。また、特に大量のIoTデバイスが接続されるような環境では、クラウドへの負荷集中を回避できるため、システム全体の安定性が向上します。

3. セキュリティーとプライバシーの強化

エッジコンピューティングでは、データをローカルで処理できることから、クラウドへのデータ送信が最小限に抑えられます。そのため、通信経路でのデータ漏洩リスクが軽減され、セキュリティーとプライバシーが強化されます。

セキュリティー面の利点
  • 企業の機密情報や個人データをローカル処理し、クラウドへの依存度を低減。
  • 分散処理により、一部ノードが攻撃を受けてもシステム全体に影響しづらい。
  • 遅延が排除されることで、リアルタイムな異常検知が可能。

4. オフライン環境でも動作可能

エッジデバイスは、インターネット接続が不安定な環境においても独立して動作可能です。そのため、遠隔地やネットワークインフラが貧弱な場所でも、安定したシステム運用が可能となります。

オフライン活用の例
  • 山岳地帯や海上の監視カメラ
  • 災害時の即時データ解析による被害状況の把握
  • ネットワーク障害時における工場生産ラインのリアルタイム監視

エッジコンピューティングの活用例

様々な業種において、エッジコンピューティングの活用が検討され、一部では導入が始まっています。

1. スマートシティー

都市の監視カメラや信号機にエッジ処理機能を組み込むことで、事故などによる異常の検知や交通制御を、リアルタイムに実施できます。

主な例

AIを活用したエッジデバイスが不審者を即座に検知し、警察や管理センターに通知するシステムが導入されつつあります。また、渋滞状況をリアルタイムで解析し、信号の制御を最適化することで、交通の円滑化を図ることも可能です。

2. 製造業

製造現場では、IoTセンサーを搭載した機械がリアルタイムでデータを収集し、異常検知や故障予測をおこないます。

主な例

機械の振動データや温度データを即座に分析し、異常が発生する前にメンテナンスを実施できます。これにより、ダウンタイムを最小限に抑え、生産性の向上が実現します。

3. 医療分野

ウェアラブルデバイスを通じて取得した患者のバイタルデータ(心拍数、血圧、血糖値など)をリアルタイムに分析し、異常が検出された場合に即座に通知する仕組みを構築できます。

主な例

心疾患のリスクがある患者に対し、エッジデバイスが異常な心拍パターンを検出した際に、医療機関へ自動的にアラートを送信することで、迅速な対応が可能になります。

4. 小売業と物流業

小売業界では、エッジAIを活用した在庫管理システムが導入され、商品の在庫状況をリアルタイムで監視できます。

主な例

スマートカメラとAIを組み合わせることで、棚の在庫が少なくなると自動で補充を指示するシステムが実用化されています。また物流分野では、配送ルートの最適化や倉庫内の動線管理をリアルタイムにおこない、業務の効率化を実現しています。

5. 自動運転技術

自動運転車では、膨大なセンサー情報(カメラ、LiDAR、レーダーなど)をリアルタイムに処理する必要があります。

主な例

車両自身が即座に周囲の環境を分析し、障害物の回避や最適なルート選択が可能になります。クラウドを介さずに車載デバイス上において直接処理をおこなうことで、遅延を最小限に抑え、より安全な自動運転を実現できます。また、他の車両やインフラと連携しながら、交通状況をリアルタイムで共有することで、より高度な自動運転システムが構築できます。

エッジコンピューティングの課題と対策

エッジコンピューティングは多くの利点を持ち、利活用が広がる中、いくつかの課題も存在します。

1. 初期導入・運用のコスト

エッジデバイスの導入や初期開発には、多大なコストを要します。そして、エッジデバイスの保守や更新、障害時対応など、多くのリソースが必要となります。

主な対策
  • 低コストで汎用的なエッジデバイスの選定
  • クラウドとのハイブリッド運用
  • ROI(投資対効果)の評価

2. セキュリティーリスク

エッジデバイスはクラウドよりも多くの地点で運用されることから、運用を誤ると、セキュリティーリスクの上昇につながります。特に、デバイスへの不正アクセスやデータ改竄、ネットワーク攻撃などが懸念されます。

主な対策
  • デバイスごとのセキュリティー対策
  • 通信データの暗号化、セキュアなプロトコルの採用
  • リアルタイム監視、脅威検出システムの導入

3. データ管理と分散処理の複雑さ

エッジコンピューティングでは、データを分散して処理することから、一元管理が難しくなります。異なるデバイス間でデータを共有・統合する際に、データの整合性確保が課題となります。

主な対策
  • データの標準フォーマットを統一
  • 分散データ管理システムで、データの一貫性を確保
  • AIによる自動最適化

まとめ

エッジコンピューティングは、導入コストや運用面などでの課題が残ることは否めません。しかしIoTやAIの発展とともに、様々な分野での活用が進んでおり、特にリアルタイム処理やセキュリティー強化の観点での期待が大きいことも事実です。今後の技術発展に伴い、エッジコンピューティングの活用はさらに広がるでしょう。

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