Flutter開発の進め方とは? 〜コスト削減につながる実践的な開発手順とポイント〜

前回の記事でもご説明したように、Flutterは、iOS・Android・Webに対応できるマルチプラットフォーム開発フレームワークとして、多くの企業で採用が進んでいます。一方で、「どのような手順で開発を進めればよいのか」「本当にコスト削減につながるのか」といった疑問を持つ担当者も少なくありません。

この記事では、Flutter開発における要件定義から設計、実装、テスト、保守までの流れを5つの工程に分け、実務で押さえるべきポイントとコスト削減につながる考え方を解説します。

Flutterにおける開発の全体像

Flutterでの開発は、要件定義・設計・実装・テストといった点で、基本的な流れ自体は従来のアプリ開発と変わりません。ただし、マルチプラットフォームでの展開を前提とするため、各工程ではFlutterならではの判断が求められます。

中でも重要なのが、「どこまでを共通コードとして実装し、どこをプラットフォーム固有(ネイティブ)で対応するか」という設計上の判断です。この見極め次第で、開発コストだけでなく、将来的な保守性や拡張性にも大きな差が生まれます。

Flutter開発は、大きく分けて以下の5つの工程で進められます。

工程 主な作業 注意点
1. 要件定義 目的と機能の明確化 コア機能の実現可能性確認
2. 設計 UI/UXとアーキテクチャー レスポンシブ対応、拡張性
3. 実装 共通コード記述 共通部分と固有部分の分離
4. テスト 各プラットフォーム検証 実機での動作確認必須
5. 保守 ドキュメント化 対応理由をログとして記録

ネイティブ開発の場合、iOS・Android・Webといったプラットフォームごとに、要件定義から実装、テストまでの工程を個別に進める必要があり、結果として開発期間は長期化しがちです。

一方のFlutterによるワンソースコード開発では、要件定義や設計を共通化できるだけでなく、特に実装工程においては、3プラットフォーム分の開発を1回の作業で完了できます。従来であれば個別にコーディングしていた処理も、一度の実装で済むため、プロジェクト全体で30〜50%程度の工数削減が期待できます。

Flutter開発の工程1:要件定義 〜機能の明確化〜

要件定義の段階で機能の取捨選択や実装方針を誤ると、後工程での手戻りが増え、結果として開発コストや期間の増加につながります。

そのため、まずは「どのような目的でアプリを開発するのか」を明確にし、その目的を実現するために本当に必要な機能を整理します。

機能の決定

要件定義では、目的を実現するために必要な機能を洗い出し、重要度に応じて整理します。機能は、以下の3つに分類して考えると分かりやすくなります。

1. コア機能

アプリの価値を直接提供する、中核的な機能です。

例えばECアプリであれば、商品閲覧、カート機能、決済機能などが該当します。これらは、アプリの成立に不可欠な要素です。

2. 周辺機能

ユーザー体験を向上させるための、補助的な機能です。

プッシュ通知、お気に入り登録、レビュー機能などが代表例で、必須ではないものの、利便性や継続利用に大きく影響します。

3. プラットフォーム固有機能

特定のプラットフォームでのみ利用できる機能です。

例えば、Face ID(iOS)、ウィジェット表示(Android)、ブラウザーとの連携(Web)などが挙げられます。

この段階で機能を過剰に盛り込んでしまうと、後から削除・変更する際に、余分な工数とコストが発生します。まずは「確実に使う機能」に絞り込み、優先順位を明確にしておくことが重要です。

要件定義での注意点

要件定義の段階では、Flutterで開発すること自体が適しているかを見極める視点も欠かせません。

例えば、3Dゲームや高度なAR/VR、複雑な画像処理など、ミリ秒単位のレスポンスが求められるケースや、OSの最新機能を即座に実装する必要がある場合、また既存のネイティブアプリと深く連携する必要がある場合には、ネイティブ開発の方が適していることがあります。

一方で、こうした要件がコア機能の一部に限られる場合には、Platform Channels(Dartとネイティブコードを連携させる仕組み)を利用したハイブリッド構成で対応することも可能です。

どの機能をFlutterで共通化し、どの機能をネイティブで実装するか。この判断を要件定義の段階で適切におこなうことが、後工程での大きな手戻りを防ぎ、結果としてプロジェクト全体のコスト削減につながります。

Flutter開発の工程2:設計 〜UI/UX〜

設計フェーズでは、アプリの見た目や操作性(UI/UX)だけでなく、将来的な拡張や保守のしやすさまでを見据えた設計が求められます。Flutterではマルチプラットフォーム開発を前提としているため、UI設計の方針を初期段階で明確にしておくことが、開発効率やコストに大きく影響します。

プラットフォーム共通のUI設計

Flutterは、Android標準の Material Design と、iOS標準の Cupertino の両方のデザインシステムに対応しています。そのため、UI設計においては大きく分けて2つのアプローチから選択することになります。

どちらが正解というわけではなく、プロジェクトの目的や重視するポイントに応じて、適した方法を選ぶことが重要です。

デザインアプローチの比較
項目 統一デザイン プラットフォームごとのデザイン
見た目 全プラットフォーム共通 各OSの標準仕様に最適化
メリット ブランドイメージの統一・開発効率化 OS特有の直感的な操作感を提供
開発の複雑さ 低い やや高い(OS別の条件分岐が増加)
適するケース 独自のデザイン性やスピードを重視 ネイティブに近い操作性を重視

UIの見た目については、すべてのプラットフォームで統一することも、iOSとAndroidでそれぞれ最適化することも可能です。仮にプラットフォームごとに見た目を分ける場合でも、データ処理やAPI通信、状態管理といったビジネスロジックは共通コードとして実装します。

ネイティブ開発では、これらの処理をプラットフォームごとに個別実装する必要がありますが、Flutterではコード内の条件分岐によってデザインを切り替えるだけで、容易に対応できます。

そのため、保守や機能追加も一箇所で完結し、マルチプラットフォームであっても高い開発効率を維持できます。

設計での注意点

設計段階でレスポンシブ対応を考慮しておくことで、画面サイズやデバイスごとの個別調整を後からおこなう必要がなくなり、結果として開発・運用コストの削減につながります。

また、アプリ内部の構造、いわゆるアーキテクチャーの選定も重要なポイントです。初期段階で適切なアーキテクチャーを採用しておくことで、機能追加や仕様変更が発生した場合でも影響範囲を抑えられ、長期的な保守コストを低く抑えることができます。

Flutter開発の工程3:実装 〜Dart言語での開発〜

実装フェーズでは、設計段階で決めた方針に基づき、Dart言語を用いてアプリを開発していきます。

Flutterの強みである「ワンソースでのマルチプラットフォーム開発」を最大限に活かすためには、開発環境の整備と、共通化・分離の考え方を正しく理解しておくことが重要です。

開発環境のセットアップ

まず、Flutter SDK(開発に必要なツール一式)をインストールし、エディターとしてVisual Studio CodeまたはAndroid Studioを準備します。インストール後は、Flutterコマンドを利用するために環境変数(PATH)の設定が必要です。

併せて、各プラットフォーム向けの開発ツールも用意します。

  • iOS開発:Xcode(macOSのみ対応)
  • Android開発:Android Studio
  • Web開発:特別なツールは不要

iOS向けの開発を含む場合、XcodeがmacOSでのみ動作する点には注意が必要です。macOS環境であればすべてのプラットフォームを開発できますが、WindowsやLinuxではAndroidとWebのみが対象となるため、チーム内での役割分担や開発体制を事前に検討しておくことが重要です。

共通コードの実装

マルチプラットフォーム対応のFlutter開発では、ビジネスロジック、データモデル、API通信といった中核部分を、すべてのプラットフォームで共通のコードとして実装します。

例えばユーザー認証機能の場合、ログイン処理やトークン管理、セッション管理などは共通コードで記述し、画面表示のみを各プラットフォームの特性に応じて調整します。こうした設計により、実装や修正を一箇所でおこなえるため、開発効率と保守性の両立が可能になります。

実装時の注意点

共通コードの中にプラットフォームごとの条件分岐を過剰に組み込むと、コードが複雑になり、保守性が低下します。そのため、共通部分とプラットフォーム固有部分を明確に分離する設計が重要です。

また、ファイルパスの区切り文字や日付フォーマットなど、プラットフォームごとの差異を意識したコーディングも欠かせません。適切な設計をおこなっておくことで、将来的なバグ修正や機能追加にかかる工数を大幅に削減できます。

一方で、すべてを無理に共通化しようとすると、かえって実装が複雑になる場合もあります。共通化すべき部分と、あえて分けるべき部分を見極めることが、Flutter開発を成功させるポイントです。

プラットフォーム固有の処理

マルチプラットフォーム開発であっても、一部の機能ではプラットフォームごとに異なる実装が必要になります。

FlutterではPlatform Channelsを利用することで、Dartコードからネイティブコード(iOSではSwift/Objective-C、AndroidではKotlin/Java)を呼び出すことができます。

カメラ、位置情報、生体認証など、ネイティブAPIへの直接的なアクセスが必要な機能は、この仕組みを使って実装します。

プラットフォーム固有処理の注意点

Platform Channelsを用いた自前実装には、Dartだけでなく、各プラットフォームのネイティブ言語に関する知識も必要になります。そのため、開発・保守のコストが高くなる点には注意が必要です。

必要な機能については、まず外部パッケージの有無を確認することが重要です。既存のパッケージを活用することで、開発期間とコストを抑えられるケースが多くあります。

外部パッケージの活用

pub.dev(Flutterの公式パッケージ公開サイト)には、他の開発者が作成した、すぐに利用できるパッケージが数多く公開されています。

プラットフォーム固有機能向けパッケージ

カメラ、位置情報、生体認証などを簡単に利用できるものがあります。

汎用的な機能向けパッケージ

画像処理、ネットワーク通信、データベース、認証など、実務でよく使われる機能が豊富に揃っています。

まずはpub.devで既存パッケージを調査し、可能な限り活用することで、Flutter開発の効率と品質を高めることができます。

Flutter開発の工程4:テストとデバッグ 〜実機でも動作確認〜

テストとデバッグは、アプリの品質を担保するだけでなく、リリース後のトラブルや追加対応にかかるコストを抑えるためにも重要な工程です。

Flutterではマルチプラットフォームで開発をおこなうため、「一度の実装で複数環境に対応できる」一方、動作確認を怠ると、特定のプラットフォームでのみ不具合が発生するリスクがあります。そのため、体系的なテストと十分な検証を実施することが欠かせません。

単体テストと統合テスト

Flutterはテストフレームワークを標準で備えており、関数やクラス単位での動作を自動的に検証できます。

まずは、ビジネスロジックが仕様どおりに動作しているかを確認するため、単体テストを作成します。その後、複数の機能を組み合わせた際の挙動を確認するために、統合テストを実施します。これにより、個々の機能は問題なく動作していても、組み合わせた際に発生する不具合を早期に発見できます。

テストを自動化しておくことで、機能追加や仕様変更の際にも品質を維持しやすくなり、結果として保守や改修にかかる工数を抑えることができます。

プラットフォーム別の動作確認

エミュレーターやシミュレーターを使えば、基本的な動作確認は可能ですが、マルチプラットフォーム開発であっても、各プラットフォームの実機での検証は不可欠です。

特に注意すべきポイントとして、以下のような点が挙げられます。

  • 画面サイズや解像度の違いによるレイアウト崩れ
  • タッチ操作とマウス操作の違いによるユーザー体験の差
  • ネットワーク環境の違いによる通信処理の挙動

これらは実機でなければ気づきにくいケースも多く、リリース後のトラブルにつながりやすいポイントです。事前に十分な検証を実施することで、想定外の不具合対応にかかるコストや、ユーザー満足度の低下を防ぐことができます。

Flutter開発の工程5:保守 〜運用と継続的な改善〜

アプリ開発は、リリースして終わりではありません。運用開始後も、機能追加や不具合修正、OSやライブラリのアップデート対応など、継続的な保守作業が発生します。

特に法人向けアプリでは、安定稼働と将来的な拡張を見据えた保守体制を整えておくことが、長期的なコスト管理の観点からも重要になります。

ドキュメント化の重要性

保守フェーズに向けて最も重要な取り組みの一つが、設計や実装内容のドキュメント化です。

アーキテクチャーの構成、主要な処理の流れ、外部サービスとの連携内容などを文書として残しておくことで、担当者の変更やチーム拡大があっても、スムーズに引き継ぎをおこなえます。

ドキュメントが不足していると、仕様の把握に時間がかかり、軽微な修正であっても調査工数が増えてしまいます。結果として、保守コストが膨らむ原因となるため、開発段階から継続的に更新していくことが重要です。

対応理由をログとして記録する

不具合修正や仕様変更をおこなう際には、「何を変更したか」だけでなく、「なぜその対応をおこなったのか」という理由をログとして残すことが重要です。

例えば、

  • 特定の実装方法を選択した背景
  • 代替案を検討した上で見送った理由
  • プラットフォームごとに挙動を分けた意図

といった情報を記録しておくことで、将来的な改修時に判断の根拠をすぐに確認できます。これにより、不要な再検討や誤った修正を防ぐことができます。

保守フェーズでのコストを抑えるために

Flutterはワンソースコードで複数プラットフォームに対応できるため、保守においても修正箇所を一元管理できる点が大きなメリットです。ただし、このメリットを活かすためには、コード構成やドキュメントが整理されていることが前提となります。

ドキュメント整備と対応理由のログ管理を徹底することで、保守作業の属人化を防ぎ、長期的に安定した運用とコスト削減を実現できます。

さいごに

Flutterでの開発には、要件定義から保守まで様々な考慮点があります。それでも、一度の開発で複数のプラットフォームに対応できることの価値は大きく、開発工数とコストの削減につながります。

アプリ開発について、お困りのことやご要望、ご不明な点などございましたら、お気軽にお問い合わせください。豊富な経験と実績のあるスタッフが、ご相談を承ります。

関連コンテンツのご紹介

サービス紹介ページ

ブロードメディアでは、これまでの開発実績を活かして、スマートテレビ向けに特化したアプリケーション開発の受託を承っています。

配信技術などを組み合わせたソリューション型としての活用もご提案可能ですので、ご検討や、お困りのことがありましたら、ぜひご相談・お問い合わせください。

お問い合わせ

前へ

【2025年最新版】CMオンライン送稿の料金体系|XDCAMとの比較でわかるコスト削減効果

次へ

ランサムウェアとは何? 〜感染経路と企業が取るべき対策の基本方針〜