防犯・監視カメラの設置導入にあたって把握しておきたいポイント 〜ネットワーク活用で遠隔監視も簡単に〜

私たちの安全を守る上で重要な役割を果たす防犯・監視カメラですが、近年におけるネットワーク技術の進化に伴い、その機能と利便性は飛躍的に向上しています。

この記事では、防犯カメラを選定・設置するにあたって注意しておきたいポイントについて、3つの視点について深掘りしながらご説明していきます。

はじめに:防犯カメラの進化とネットワークの融合

防犯カメラの歴史は古く、初期のアナログカメラでは録画媒体に直接接続する以外の選択肢は無いに等しく、リアルタイムな遠隔監視はほぼ不可能でした。しかし、センサーのデジタル化などによってカメラ技術が発展するとともに、多様な活用に向けた下地は徐々に整えられつつありました。

そして、インターネットの普及とネットワーク技術の発展により、デジタルカメラとネットワーク機能を統合したIPカメラが登場します。これにより、映像のデジタル化、高画質化、そしてインターネットを介した遠隔監視が容易になるなど、防犯カメラの活用範囲は大きく広がりました。

昨今では、ネットワークに接続された防犯カメラは、単に映像を記録するだけでなく、様々な付加価値を提供します。スマートフォンやパソコンからリアルタイム映像を確認できるのはもちろん、動体検知や音声検知などのインテリジェント機能、クラウドへの映像保存、他のIoTデバイスとの連携など、その可能性は日々拡大しています。

カメラ機材やネットワーク構成の選定にあたって

防犯カメラの機材や構成を選定するにあたっては、いくつかの視点・軸で検討する必要があります。中でも、特に重要なポイントについて、それぞれ解説していきます。

  • ネットワークへの接続方法(有線、無線、接続しない)
  • 映像の記録・管理方法
  • 使用するカメラの機能や性能

ネットワークへの接続方法について考える

ネットワークへ接続(有線または無線)する場合

冒頭でも触れましたが、ネットワークへ接続することによって、活用の幅が大きく広がります。

  • リアルタイムな遠隔監視
  • スマホやパソコンからの各種制御
  • アップデートによる機能追加
  • クラウドへの映像保存
  • 他のIoTデバイスとの連携

メリットの大きなネットワーク接続ですが、その際には一般的に、以下いずれかの接続方法を選択することとなります。

  • 有線LAN(Ethernet)による有線接続
  • 無線LAN(Wi-Fi)による無線接続

それぞれのメリットやデメリット、適したケースについて、見ていきましょう。

ネットワークへ接続する:有線接続の場合

有線接続(LAN)のメリット
  • 安定した通信:
    無線接続に比べて電波干渉などによる影響を受けにくく、有線ならではの安定したデータ通信が可能です。
  • 高速なデータ転送:
    一般的に、有線LANはWi-Fiよりも高速にデータを転送できます。
  • セキュリティー:
    物理的な接続が必要であるため、Wi-Fiと比べて不正アクセスのリスクを低減できます。
  • PoE対応:
    PoE(Power over Ethernet)対応のネットワーク機器とカメラを使用することで、LANケーブル1本だけで電源供給とデータ通信を同時におこなえます。カメラ設置の自由度が増し、配線もシンプルになります。
有線接続(LAN)のデメリット
  • ネットワークの配線工事が必要:
    カメラの設置場所までLANケーブルの配線が必要なため、設置場所によっては、工事の手間や費用がかかります。
  • 設置場所の制約:
    ケーブルの物理的な長さに制限があるため、カメラの設置場所が限定されることがあります。
  • 柔軟性が低い:
    カメラの移動・増設時には配線についても変更・追加が必要になるため、Wi-Fi接続と比べて柔軟性に劣ります。
有線接続(LAN)が適しているケース
  • 絶対的な安定性と信頼性が求められる環境:
    企業オフィス、工場、病院など、24時間365日の安定した監視体制が不可欠な場所。
  • 高画質・高フレームレートの映像を扱う場合:
    細部まで鮮明で滑らかな映像を、リアルタイムに監視・記録する必要がある場合。
  • 多数のカメラを集中管理する場合:
    広範囲を複数のカメラで監視し、効率的に管理したい場合。
  • セキュリティーを重視する環境:
    不正アクセスや情報漏洩のリスクを、最小限に抑えたい場合。

ネットワークへ接続する:有線接続の場合

無線接続(Wi-Fi)のメリット
  • 配線が不要:
    LANケーブルの配線が不要なため、設置場所の自由度が高く、配線工事の手間や費用を削減できます。
  • 設置が容易:
    電源コンセントさえあれば、比較的簡単に設置できます。賃貸物件など、配線工事が難しい場所にも適しています。
  • 柔軟性が高い:
    カメラの移動・増設が容易におこなえます。レイアウト変更が多い場所や、一時的な監視が必要な場合に便利です。
無線接続(Wi-Fi)のデメリット
  • 電波干渉の影響を受けやすい:
    電子レンジやBluetooth機器など、他の電波を発する機器の影響を受けやすく、通信が途切れたり不安定になったりすることがあります。
  • 通信速度が不安定化しやすい:
    無線環境やWi-Fiルーターの性能、接続している機器の数などによって、通信速度が変動する可能性があります。
  • セキュリティーのリスク:
    適切なセキュリティー対策(WPA3などの暗号化設定、強固なパスワード設定など)を施さないと、不正アクセスや傍受のリスクが高まります。
  • 距離や障害物による減衰:
    Wi-Fiの電波は、距離が離れたり壁や金属などの障害物があったりすると減衰しやすく、通信が不安定化しやすくなります。
無線接続(Wi-Fi)が適しているケース
  • 配線が難しい場所:
    賃貸物件、屋外の離れた場所、配線スペースがない場所など。
  • 手軽に設置したい場合:
    DIYで簡単に設置したい場合や、一時的な監視が必要な場合。
  • 設置場所の変更が多い場合:
    レイアウト変更が多いオフィスや店舗など。

ネットワークへ接続しない:スタンドアローン型の場合

スタンドアローン型の防犯カメラは、ネットワークに接続せず、カメラ本体に内蔵されたSDカードやHDDなどの記録媒体に直接映像を記録するタイプです。ネットワークを通じた管理や監視などは、おこなえません。

スタンドアローン型(接続なし)のメリット
  • シンプルな構成:
    ネットワーク機器やインターネット環境が不要なため、導入や設定が比較的簡単です。
  • セキュリティー:
    ネットワークに繋がらないため、ネットワークを通じた外部からの不正アクセスや情報漏洩のリスクがありません。
  • 低コスト:
    ネットワーク機器や工事費用が不要なため、初期費用を抑えられる場合があります。
スタンドアローン型(接続なし)のデメリット
  • 録画容量の制限:
    内蔵された記録媒体の容量に依存するため、長期間の録画には不向きです。容量がいっぱいになると、古いデータから上書きされるか、録画が停止します。
  • データバックアップの手間:
    記録された映像を外部にバックアップする場合、SDカードを取り外したりUSBケーブルで接続したり、物理的作業の手間がかかります。
  • インテリジェント機能の制限:
    ネットワーク接続を前提とした高度な機能(動体検知アラートの通知、クラウド連携など)は利用できません。
スタンドアローン型(接続なし)が適しているケース
  • 小規模な監視:
    玄関先や駐車場など、限られた範囲を監視する場合。
  • ネットワーク環境がない場所:
    インターネット回線がない場所や、ネットワーク構築が難しい場所。
  • シンプルな記録のみで十分な場合:
    リアルタイム監視や遠隔確認の必要がなく、記録映像を確認できれば良い場合。
  • 初期費用を抑えたい場合:
    ネットワーク機器の購入費用を抑えたい場合。

映像の管理・記録方法について考える

防犯カメラは「記録して終わり」ではなく、録画された映像をいかにして管理・活用するかが重要です。

録画方法にはいくつかの選択肢があり、それぞれに適した用途や管理方法があります。その中でも、主要な3つについて解説します。

  • SDカードへの録画
  • NVR・HDDへの録画
  • クラウドへの録画

SDカードへの録画:手軽なローカル保存

防犯カメラ本体にSDカード(またはフラッシュメモリー)を挿入し、内部にて記録をおこなう、最も簡易的な録画方法です。カメラの機種によっては、後述する他方式との併用も可能な場合もあります。

手軽な一方で、ミッションクリティカルな運用には向かないことから、一時的・暫定的に運用するようなケースに向いています。

SDカード録画のメリット
  • カメラ以外の記録装置が不要
  • 低コストですぐに運用できる
  • ネットワーク接続が不要
SDカード録画のデメリット
  • 保存容量に制限がある
  • SDカード抜き取りによる紛失・漏洩リスク
  • SDカード自体の耐久性が低い
  • 遠隔から閲覧や操作ができない

NVR・HDDへの録画:安定性に強み

複数のIPカメラを接続して記録・管理するための装置であるNVR(Network Video Recorder)にHDD(ハードディスク)を接続して使用する録画方法です。

インターネットやクラウドを利用しない場合には、こちらの録画方法が一般的です。

NVR・HDD録画のメリット
  • 長時間・長期間の録画が可能
  • 複数台のカメラを一元管理できる
  • 映像の検索・再生・バックアップが容易
NVR・HDD録画のデメリット
  • 装置の導入と設置にコストがかかる
  • 設置スペースの確保が必要
  • HDDの寿命による交換・保守が必要

クラウドへの録画:遠隔管理とBCP対策に強み

映像をクラウド上(サーバー)にアップロードして保存する方式です。IPカメラ本体やNVRに録画機能がありつつ、映像ファイルのデータはインターネットを通じて外部に保存されます。

クラウド録画のメリット
  • 災害・盗難によるデータ消失リスクを回避できる
  • 外出先などでもインターネット経由で閲覧・管理できる
  • 多拠点でも一元的に管理できる
クラウド録画のデメリット
  • 月額費用などの運用コストが継続的に生じる
  • インターネット環境が必須(速度や安定性も重要)
  • サービス停止のリスクを考慮する必要性
  • 通信量が増大しやすい

カメラ機材について考える

防犯カメラの機材を選ぶ際には、管理の目的や設置場所の環境に合わせて、様々な要素について考慮する必要があります。ここでは、カメラの選び方において主要な、以下ポイントについて解説します。

  • 解像度
  • 夜間対応
  • 視野角
  • パン・チルト・ズーム機能
  • 音声機能
  • 防水・防塵性

解像度

解像度とは、映像の細かさを表す指標です。画素数が多いほど、高精細な映像を記録でき、細部まで鮮明に確認することができます。

  • SD (Standard Definition): 480p
  • HD (High Definition): 720p ※SDの約3倍
  • フルHD: 1080p ※SDの約5倍
  • 4K (Ultra HD): 2160p ※SDの約20倍、HDの4倍

SDは旧来のアナログテレビ放送と同等であり、下にいくほど解像度は高くなりますが、それに伴って、必要なデータ容量も増大します。

広く普及しているのはHDまたはフルHDであり、4Kが用いられるのは一部の特殊ケースに限られます。

夜間対応

夜間や暗い場所での監視には、赤外線(IR)LEDを搭載したカメラや、低照度対応のカメラが有効です。

赤外線は人間の目には見えませんが、カメラのセンサーは感知できるため、暗闇でも白黒で映像を記録することができます。赤外線の照射距離は製品によって異なるため、監視範囲に合わせて選びましょう。

低照度対応のカメラでは、高感度センサーを搭載することで、赤外線を用いなくてもカラー撮影が可能となっています。

視野角

視野角は、カメラが一度に捉えることができる範囲の広さを表します。

広角レンズを搭載したカメラは、より広い範囲を監視できる一方で、被写体が小さく映ります。対して、望遠(狭角)レンズを搭載したカメラは、狭い範囲を拡大して捉えることができます。

監視したい範囲に合わせて、適切な視野角のカメラを選びましょう。固定焦点レンズが一般的ですが、設置後に視野角を調整できるバリフォーカルレンズ(光学ズームレンズ)を搭載したカメラもあります。

パン・チルト・ズーム機能

パン・チルト機能とは、カメラのレンズを水平方向(パン)や垂直方向(チルト)に動かせる機能です。そしてズーム機能は、映像の一部を拡大表示できる機能です。PTZ(パン・チルト・ズーム)カメラと呼ばれることもあります。

この機能を持つカメラを使用することで、広範囲を一台で遠隔監視したり、気になる場所をズームアップして確認したりできます。

音声機能

音声機能を搭載したカメラは、映像だけでなく音声も記録することができます。

これにより、現場の状況をより詳細に把握したり、証拠能力を高めたりすることができます。また双方向音声機能を搭載したカメラであれば、スマートフォンなどから、現場にいる人と会話したり不審者に警告したりすることも可能です。

防水・防塵性

屋外にカメラを設置する場合は、防水性・防塵性の高いカメラを選ぶ必要があります。

防水・防塵に対応するカメラでは、IP(Ingress Protection)コードで保護等級が示されており、IPの後に続く数字が大きいほど、優れた防塵防水の性能を有します。

例えば、「IP66」表示がある製品では、強風による粉塵が内部に入らず、豪雨でも浸水の恐れがありません。このような製品が、屋外での使用に適しています。

防犯カメラ設置時の注意点

防犯カメラは、性能だけでなく「どこに、どう設置するか」によって、効果が大きく左右されます。

ここでは、見落としがちな設置時のポイントを、それぞれ解説します。

  • カメラの高さと角度の最適化
  • 撮影範囲の調整と死角対策
  • プライバシーと法律への配慮
  • 配線の処理と防水対策
  • 定期的な点検とメンテナンス

カメラの高さと角度の最適化

カメラを設置する高さは、地上から2.5〜3メートル程度が理想的です。この高さなら、顔の認識が可能でありながら、いたずらや破壊を受けにくくなります。

そして角度も重要で、「真下」を映すよりは「斜め方向」に設置することで、広い範囲をカバーしつつ死角を最小限にできます。

撮影範囲の調整と死角対策

広い敷地や複雑な間取りでは、複数台を組み合わせて死角を補完しましょう。そして、視認性を高めたい場所では、補助的な鏡やライトの設置も効果的です。

なお、最小限のカメラ台数でカバーしたい場合には、広角レンズを使用するケースが多いですが、画面周辺が歪みやすくなることにも注意が必要です。

プライバシーと法律への配慮

日本では、私有地内の撮影であっても、隣家や通行人のプライバシーを侵害しないような配慮が必要です。

特にマンションや密集地では、撮影範囲が隣接敷地に及ばないようにカメラの角度を調整することはもちろん、映像マスキングなどの機能も活用しましょう。

配線の処理と防水対策

配線はなるべく露出させず、配管やモールで保護しましょう。これは防犯だけでなく、劣化・断線の防止にもなります。

屋外設置の場合は、防水ボックスや防雨カバーの使用が推奨されます。コネクタ部分は水没・浸水の影響を受けやすく、対策を怠ると、通信障害や漏電の原因になります。

定期的な点検とメンテナンス

防犯カメラは「設置したら終わり」ではなく、定期的なメンテナンスが重要です。

  • レンズの汚れやクモの巣を清掃 (特に屋外)
  • 正常に録画できているかチェック
  • Wi-Fi接続状況やファームウェアの更新確認
  • UPS(無停電装置)やSDカードの寿命確認

さいごに

防犯カメラは進化を続けており、単なる監視ツールの枠を超えて、AIによる高度な分析機能やIoT機器との連携機能などを通じて、さらに技術革新が続いていくでしょう。

当社では従来より、ネットワーク・Wi-Fiの設計や敷設、設置導入に強みを持っています。近年では、ネットワーク・Wi-Fiまわりの対応に付随して、ネットワーク対応の防犯カメラ設置に関してご相談いただく機会が増えていますため、ポイントを整理してお伝えしました。

ご不明点や気になる点などありましたら、どんなに些細なことでも問題ありませんので、お問合せフォームよりご相談いただけましたら幸いです。

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