ホテル向けテレビ設置導入における注意点とは? 〜ホテルモードについても解説〜

ホテルや旅館における『客室テレビ』は、宿泊者の満足度を大きく左右します。

しかし「家庭用テレビをそのまま設置すればよい」と安易に考えて導入すると、運用トラブルなどでコスト増加につながることがあります。

本記事では、ホテル向けにテレビを設置・導入する際に注意すべきポイントを整理しつつ、業務用テレビに搭載される「ホテルモード」についても詳しく解説します。

ホテル向けテレビ導入で注意すべきポイントとは

「コストを抑えようと家庭用テレビを導入した結果、数年で買い替えや度重なるトラブル対応に追われた」──そんな失敗事例は少なくありません。

ホテルならではの利用環境を踏まえた選定ポイントを押さえることが、長期的に見てコスト削減と顧客満足度向上につながります。

1. サイズ選定と設置場所

ホテルの客室に導入するテレビは、一般家庭の感覚でサイズを決めてしまうと、失敗しがちです。

例えば、ビジネスホテルのシングルルームに大型テレビを設置すると、かえって圧迫感を与えてしまい、居心地の悪さにつながります。一方で、広めの客室に小型テレビを置いてしまうと、ベッドやソファから画面が見づらく、満足度の低下にもつながります。

サイズを決める際には、次の2つを基準にすると良いでしょう。

  • 客室の広さ
  • ベッドからテレビまでの視聴距離

テレビの最適な視聴距離は、フルHD解像度の場合で画面の縦幅の3倍程度(4Kでは1.5倍程度)が理想とされています。これらを基準として、目安となるサイズを客室タイプごとにまとめると、次の表のようになります。

客室タイプ 視聴距離の目安 推奨サイズ(目安)
ビジネスホテル
(シングル・ダブル)
約1.5〜2.0m 32〜40インチ
シティホテル
(ツイン・ダブル)
約2.0〜2.5m 40〜50インチ
リゾートホテル
(デラックスルーム)
約2.5〜3.0m 50〜65インチ
スイートルーム 3.0m以上 55〜85インチ

また、設置方法によっても見やすさは変わります。

  • 壁掛設置
  • 卓上設置

壁掛設置は、省スペース化や安全性の面で有利ですが、配線処理や耐荷重の確認が必要です。一方で卓上設置の場合は、工事コストを抑えられるものの、家具の配置やスペースによる制約を受けやすくなります。

2. 配線方式と既存設備との互換性

ホテル客室用テレビの導入においては、どの配線方式を採用するかが、運用性やコストに大きく影響します。主に以下の2方式が一般的です。

  • 同軸ケーブル方式
  • IPTV方式
同軸ケーブル方式(CATV・地上波受信)

既存のテレビ配線をそのまま活用できるため、導入コストを抑えやすいのが利点です。

ただし、インフォメーションシステムやVODサービスを追加する際には、専用のSTB(セットトップボックス)が必要になる場合があります。

IPTV方式(IPネットワーク配信)

LANケーブルを利用して番組や案内情報を配信する方式で、動画配信やホテルインフォメーションとの連携に強みがあります。

Wi-Fi環境や館内ネットワークとの親和性が高い一方で、ネットワーク機器の増設や帯域確保といった事前準備が欠かせません。

導入を検討する際は、現在の館内設備との互換性を必ず確認しましょう。例えば、既存のインフォメーションシステムが同軸方式に依存している場合、IPTVへ切り替えると運用が二重管理になり、現場スタッフの負担が増す恐れがあります。逆に、Wi-Fi経由での客室サービス拡充を視野に入れるなら、初期費用はかかってもIPTV方式を選んだ方が将来性は高いといえます。

3. 耐久性と保証

ホテルの客室テレビは、家庭と比べて圧倒的に稼働時間が長いのが特徴です。チェックインから深夜、翌朝までつけっぱなしにされるケースも珍しくありません。

そのため、家庭用テレビ(特に廉価な製品)を導入すると、

  • パネル焼けやバックライト劣化が早い
  • リモコンや端子の不具合が頻発する
  • 保守・サポートを受けられないケースが多い

といった問題が起こりやすく、結果的にメンテナンスコストや交換頻度が増えてしまいます。

一方、ホテル向けに設計された業務用テレビは、以下の点で安心です。

  • 耐久性:24時間連続稼働や高頻度の操作を前提に設計されている
  • 保証:法人向けの長期保証(3年保証など)が用意されている場合がある
  • サポート体制:ホテル専用モードの設定支援など、業務用途に即したサポートがある

導入時の初期コストは家庭用より高くなりがちなものの、長期的には運用トラブルの削減や買い替え頻度の低減によってコストを抑えられる点で、結果的に投資対効果が高いといえるでしょう。

4. 運用・管理のしやすさ

客室数が多いホテルでは、テレビを一台ずつ設定・確認する作業は大きな負担になります。

例えば、音量上限やチャンネル制御、画面表示設定などを手作業でおこなうと、スタッフの工数が膨大になるうえ、設定ミスによるトラブルも発生しやすくなります。

そのため、客室テレビを導入する際には、以下の機能を有しているか確認しましょう。

  • 設定コピー機能:
    USBメモリーなどを使い、1台で設定した内容を他のテレビに複製できる
  • ホテルモード:
    チェックアウト後などに、音量やチャンネルなどの各種設定を初期状態へ戻せる

これらの機能を活用することで、日々の管理コストを大幅に削減できるだけでなく、チェックアウト後のリセット作業やトラブル対応の手間も減らすことができます。特に大型ホテルや客室数の多い施設では、こうした管理機能の有無が、長期的な運用効率とコストに直結します。

ホテルモードとは?家庭用テレビとの違い

ホテル向けの利用を想定して設計されたテレビには、宿泊施設での運用に特化した「ホテルモード」という機能があります。

ここでは、ホテルモードの基本機能と導入メリットについて詳しく解説します。

ホテルモードの基本機能

ホテルモードとは、宿泊施設向けテレビに搭載される運用管理用の制御機能です。

家庭用テレビとの大きな違いは、宿泊者が自由に設定を変更できないように制限する点にあります。これにより、誤操作や不正利用を防ぎ、チェックアウト後の設定リセット作業も不要になります。

具体的には、以下のような機能があります。

  • 設定画面やメニューの制限:
    宿泊者がテレビの各種設定を変更できないように非表示化
  • 音量制限:
    音量の上限を設定し、騒音トラブルを防止
  • チャンネル制御:
    特定のチャンネルを固定したり非表示にしたりして、不要な放送や有料放送へのアクセスを制限
  • 外部入力制御:
    HDMIやUSB端子の使用を制限し、接続機器による誤操作やセキュリティーリスクを回避
  • アカウント情報の自動削除:
    OTTサービス(NetflixやHuluなど)をログイン利用した際でも、自動でログオフ

これらの機能により、施設側は安定した運用と効率的な管理が可能になり、宿泊者にとっても安心してテレビを利用できる環境が提供できます。

本記事で説明しているモードの名称は、テレビメーカーによって異なります。

  • シャープ(アクオス):ホテルモード
  • TVSレグザ(レグザ):ホテルモード
  • ソニー(ブラビア):Proモード

ホテルモードのメリット

ホテルモードを活用することで、施設側と宿泊者の双方にメリットがあります。

施設側のメリット
  • 運用効率の向上:
    客室ごとに設定を確認・修正する必要がなく、一括管理が可能
  • トラブル対応の削減:
    宿泊者による設定変更や端子接続による不具合が減少
  • コスト削減:
    設定ミスや機器の故障による交換・メンテナンス費用を抑えられる
宿泊者のメリット
  • 快適な利用環境:
    音量制限やチャンネル固定により、安定した視聴体験を提供
  • 簡単操作:
    複雑な設定画面に触れる必要がなく、直感的に利用できる
  • アカウント不正利用の防止:
    OTTサービス利用後にログオフを忘れても、不正利用のリスクを減らせる

さらに、ホテルモードはWi-Fiや館内インフォメーションシステムと連携することで、VODや館内案内、観光情報の表示などもスムーズにおこなえます。

これにより、宿泊者の利便性向上と運営側の効率化を同時に実現できる点が、ホテル向けテレビ導入における大きな魅力です。

さいごに

ホテル向けテレビを導入する際は、単に画面の大きさやデザインで選ぶだけではなく、客室に適したサイズ・設置場所、配線方式、耐久性、運用管理のしやすさなどを総合的に判断し検討することが重要です。

特にホテルモードを搭載した業務用テレビを選ぶことで、宿泊者による誤操作を防ぎつつ、一括設定やリモート管理が可能になり、運営効率の向上やトラブル削減につながります。

当社では、ホテル向けにWi-Fi環境の導入・改善サービスに加え、ホテルインフォメーションシステムや客室用テレビの設置・管理も支援しています。ご不明点や気になる点などありましたら、どんなに些細なことでも問題ありませんので、お問合せフォームよりご相談いただけましたら幸いです。

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