Wi-Fi HaLowとは 〜通信距離や速度は? IoTに特化した新技術〜

これまでとは異なったアプローチのWi-Fi規格「Wi-Fi HaLow」が、注目を集めています。

この記事では、Wi-Fi HaLowの概要や特徴、従来型Wi-Fiとの違いなどについてご説明していきます。

Wi-Fi HaLowとは

Wi-Fi HaLowは「ワイファイ ヘイロー」と読み、LPWA(Low Power Wide Area)無線技術の一つであるIEEE802.11ah規格に基づく新しいWi-Fi技術です。

Wi-Fi HaLowの特徴とメリット

Wi-Fi HaLowには、次のような特徴・メリットがあります。

  • 消費電力が低い
  • 通信範囲が広い
  • 障害物に強い
1. 消費電力が低い

まず、従来よりも少ない消費電力で動作できる点が挙げられます。

これによって、バッテリー駆動のデバイスでも長期間にわたる使用が可能となり、運用コストやメンテナンスの手間などの削減に大きく寄与します。

2. 通信範囲が広い

そして、通信範囲の広さ(通信距離の長さ)が挙げられます。

広範囲の通信特性によって、大規模な施設・工場・農地などでも安定してデバイスと通信できます。通信可能な距離は最大で1kmほどにも及ぶことから、回線敷設の難しい場所におけるリモートでの監視・制御にも適しています。

3. 障害物に強い

電波特性ゆえ障害物に強い点も、忘れてはなりません。

従来のWi-Fiよりも低い周波数帯(900MHz帯)を使用することから、壁や建物などといった障害物があっても、安定した通信が可能となります。複数階層や異なるスペースに設置されたデバイス同士でも、スムーズな接続が実現できます。

4. 接続汎用性が高い

Wi-Fi HaLowは、共通規格(IEEE802.11ah)に基づくライセンスフリーな接続ソリューションです。

他のIoT機器通信で必要となるような専用のゲートウェイやコントローラーなどが不要なことから、これまでのWi-Fi同様に設置や手続きが簡素化され、運用にかかるコストも削減されます。

Wi-Fi HaLowとWi-Fi 6/7の比較

では、Wi-Fi HaLowとWi-Fi 6/7とでは、どのような違いがあるのでしょうか。

主要な項目について、次のように表としてまとめました。

Wi-Fi HaLow
(IEEE802.11ah)
Wi-Fi 6
(IEEE802.11ax)
Wi-Fi 7
(IEEE802.11be)
主な用途 IoTデバイス、産業用センサー、農業、スマートホーム 高速通信、家庭用ネットワーク、オフィス 超高速通信、AR/VR、ストリーミング、低遅延ゲーム
周波数帯域 900MHz 2.4GHz、5GHz
(Wi-Fi 6Eでは6GHzが追加)
2.4GHz、5GHz、6GHz
通信距離 約1km 数十m
(環境に依存)
数十m
(環境に依存)
消費電力 非常に低い 比較的高い 比較的高い
最大通信速度 数Mbps 最大9.6Gbps 最大46Gbps
同時接続台数 非常に多い
(IoTデバイス向け設計)
やや多い 多い
遅延 高め 低い 極めて低い
障害物通過性能 高い
(900MHzの特性による)
通常
(周波数帯に依存)
通常
(周波数帯に依存)

日頃から我々が利用しているWi-Fi 6/7では、有線LANを置き換え可能なレベルで、大容量・高速・低遅延なネットワークを実現しています。

一方のWi-Fi HaLowは通信容量が低く、通信速度は数Mbps程度に留まるなど、一見するとWi-Fi 6/7よりも性能が低い規格のように感じるかもしれません。しかし、消費電力の低さや通信距離の長さ、障害物耐性などの面では大きく強みを発揮します。

そのため、Wi-Fi HaLowは通常のインターネットとは異なる特殊用途での活用が期待されており、一部施設などでは試験導入も進められています。

Wi-Fi HaLowの普及状況

Wi-Fi HaLowの規格自体(IEEE802.11ah)は2017年5月に策定されていますが、日本国内で利用可能となったのは2022年9月の電波法令の改定以降であり、まだ導入事例も限られています。

現時点では、今後の活用促進に向けた、試験的な導入がメインとなっています。

Wi-Fi HaLowが普及しづらい理由

Wi-Fi Halowの普及にあたって足枷となっているのが、特殊な技術制約や、従来のWi-Fiとは技術的アプローチが異なるという点です。

Duty比10%制限などによる技術制約

日本国内でWi-Fi Halowを使う際には、いわゆる「Duty比10%制限」による制約を受けます。これは、技術要件のうち「通信時間の割合」の部分を指しており、使用するチャンネルに応じていくつかの決まりがあります。

  • 通信時間の割合が10% (=Duty比10%)
  • 通信時間は1時間あたり累計360秒まで
  • 通信時間は1回あたり4秒(または400ミリ秒)まで
  • 通信1回ごとに最低50ミリ秒(または2ミリ秒)の休止時間

当然ながら、Wi-Fi Halow導入にあたって使用する機器は、これら条件を満たす必要があります。

従来のWi-Fiを置き換えるものではない

従来のWi-Fiと比べると、広範囲をカバーできたり障害物の影響を受けにくくなったりする一方で、エンターテインメント向けのような大容量通信には向いていません。従来のWi-FiではGbpsクラスの通信速度が当たり前となっていますが、Wi-Fi HaLowでは数Mbps程度に留まります。

そのため、活用が見込まれる用途もエンタープライズのIoT向けが中心となっており、一般家庭への普及は限定的になると推測されています。

さいごに

Wi-Fi HaLowは、従来のWi-Fiと比べて得意不得意がはっきりとしており、従来のWi-Fiを置き換える性質の技術ではないものの、限られたケースにおいては強力なメリットを発揮します。

得意不得意を見極めた上で、利用したいケースにあったソリューションを選定すると良いでしょう。

ご不明点や気になる点などありましたら、どんなに些細なことでも問題ありませんので、お問合せフォームよりご相談いただけましたら幸いです。

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