OpenRoamingとは?〜公衆Wi-Fiをスムーズ&セキュアに使える新技術〜
安全で使いやすいフリーWi-Fiへの需要が高まっていますが、従来のフリー(公衆)Wi-Fiは接続手続きが煩雑で、セキュリティー面でも不安の残るケースが多く見られます。そこで注目されているのが「OpenRoaming」という新技術です。
この記事では、OpenRoamingの基本概要から導入メリット、注意点までを詳しく解説します。
OpenRoamingの基本概要
OpenRoamingは、「繋がるまでのストレスをなくす」「通信の安全性を高める」ことを目的とした新しいフリーWi-Fiの仕組みです。その基本的な仕組みと特徴について、詳しく見ていきましょう。
業界団体による標準仕様
OpenRoamingは、Wireless Broadband Alliance(WBA)が策定した国際標準仕様です。WBAは、世界の主要な通信事業者や機器メーカーが参加する業界団体で、Wi-Fi技術の標準化を推進しています。
2019年に初期仕様が公開され、2020年には本格的な商用展開が始まりました。現在では世界各地で導入が進んでおり、空港や駅、商業施設、自治体などにおいて採用事例が増加しています。日本国内でも2022年頃から試験導入が本格化し、主要空港や一部の自治体で利用可能となっています。
主な仕組みと利用時の流れ
OpenRoamingは、次の3点を標準化した仕組みです。
- 誰のIDを使って
- どのWi-Fiネットワークに
- どう安全に接続するか
これを実現するために、WBAの定める信頼の枠組み(Federated Trust Framework)に基づいて、以下の2者間の信頼を確立します。これにより、IDプロバイダー側で認証された利用者を、施設側が信頼して受け入れる(=Wi-Fiを利用させる)ことができるのです。
- IDプロバイダー (OSベンダーやキャリア、企業、教育機関など)
- Wi-Fiネットワーク提供者 (空港や駅、ホテルなど)
OpenRoaming対応Wi-Fiを利用する際の流れは、以下のとおりです。
1. 初回登録
アカウント登録または連携をおこない、デバイスに認証情報(証明書など)を設定します。
2. 自動認証
その後、他のOpenRoaming対応エリアに入ると、デバイスが自動的に認証情報を送信します。
3. シームレス接続
認証が完了すると、利用者の操作なしで、Wi-Fiに自動接続されます。
この仕組みにより、施設ごとにSSIDを選んだりIDやパスワードを入力したりといった、これまでのような接続時の操作が不要となります。複数の異なる事業者が提供するWi-Fiサービス間でのローミングが実現されるので、まるで一つの大きなWi-Fiネットワークのように使えます。
従来のフリーWi-Fiとの違い
従来のフリーWi-FiとOpenRoamingの主な違いを、以下の表にまとめます。
比較項目 | 通常のフリーWi-Fi | OpenRoaming対応Wi-Fi |
---|---|---|
接続方式 | 手動(SSID選択+ログイン) | 自動(初回のみ要登録) |
認証方法 | メール/SNS/ブラウザー認証 | SIM/証明書認証(Passpoint) |
接続操作 | 都度操作が必要 | 操作不要(バックグラウンド認証) |
通信の暗号化 | なし/施設ごとに異なる | 強力な暗号化(WPA2-Enterprise以上) |
ローミング | 原則なし | 対応施設間でローミング可能 |
利用範囲 | 単一の施設またはエリア (事業者独自) |
複数施設・地域を跨いで利用可能 (国際標準) |
このように、OpenRoamingでは「利便性」と「安全性」を高いレベルで両立させている仕組みといえます。
OpenRoamingのメリット
OpenRoamingの導入により、利用者と施設運営者の双方に大きなメリットがもたらされます。それぞれの観点から詳しく見ていきましょう。
利用者側のメリット
OpenRoamingは利用者にとって、以下のような大きなメリットを提供します。
1. 接続の簡素化
前述のように、初回登録後は自動接続されるため、毎回のパスワード入力や利用規約への同意が不要になります。特に移動が多いビジネスユーザーにとっても、この点は利便性向上に大きく寄与します。
2. セキュリティーの向上
最低でもWPA2-Enterpriseベースにて通信が暗号化されるため、暗号化されないケースの依然多いフリーWi-Fiとは異なり、安心のセキュリティーレベルが確保されます。証明書ベースの認証により、なりすましアクセスポイントによる盗聴などのリスクも軽減されます。
3. 国際的な相互利用
OpenRoamingは国際標準のため、海外の対応エリアでも同じ認証情報で接続できます。出張や旅行先であっても、Wi-Fi接続がスムーズになります。
国内でも、東京都や大阪市などの自治体においてOpenRoaming対応のWi-Fiサービスが徐々に展開されており、利用者の選択肢が拡大しています。
施設・運営者側のメリット
OpenRoamingは利用者だけでなく施設運営者にとっても、多くの導入メリットをもたらします。
1. サポートコストの削減
従来のフリーWi-Fiでは、接続方法やパスワードに関するサポート対応がたびたび必要となります。OpenRoamingでは、シームレスな自動接続により、これらのサポートにかかる工数が大幅に削減されます。
2. 顧客満足度の向上
Wi-Fi接続がスムーズにおこなえるため、施設利用者の満足度が向上し、リピート利用が促進されるとともに、肯定的な口コミによる新規顧客の獲得が期待できます。特にホテルなどの宿泊施設では、利用者の印象向上に大きく貢献します。
3. ブランド価値の向上
最新の技術標準を採用することで、施設の先進性や顧客目線をアピールしやすくなることから、ブランド価値の向上につながります。
OpenRoamingの注意点
OpenRoamingには多くのメリットがある一方で、施設運営者にとっては考慮すべき注意点もあります。
1. 顧客とのタッチポイントの減少
従来のフリーWi-Fiでは、接続画面が顧客とのタッチポイントとして機能し、マーケティング情報を表示したり利用者情報を収集したりする機会がありました。OpenRoamingにおいては、自動接続が前提となることから、これらの顧客接点が減少する可能性があります。
2. 利用者の限定が困難
OpenRoamingは標準化された仕組みのため、特定の利用者グループのみにアクセスを制限することが困難です。施設独自の利用条件を設定したい場合には、適さない場合があります。
3. 対応機種の制限
OpenRoamingを利用するには、対応するデバイスとOSが必要です。古いスマートフォンやタブレットでは利用できない場合があるため、従来のフリーWi-Fiとの併用が必要になることもあります。
4. 技術的な複雑さ
証明書管理やRADIUS設定など、従来のフリーWi-Fiでは必要とされなかった種類の構築作業やサービス運用も必要となります。適切なベンダーの選定とともに、技術サポートを受けられる体制の構築が重要です。
さいごに
OpenRoamingは、フリーWi-Fiの利便性とセキュリティーを大幅に向上させる革新的な技術として、今後さらなる普及が予想されます。ただし、すべての状況に適用できるわけではないため、施設の特性や利用者のニーズを踏まえて、従来のフリーWi-Fiと適切に使い分けることが重要です。
Wi-Fi環境の構築を検討される際には、OpenRoamingの特徴を理解した上で、ニーズに適した方式を選択してください。
当社では、Wi-Fi環境の導入・改善サービスを提供しており、多くの施設においてお悩み解決のお手伝いをしています。ご不明点や気になる点などありましたら、どんなに些細なことでも問題ありませんので、お問合せフォームよりご相談いただけましたら幸いです。
関連コンテンツのご紹介
サービス紹介ページ
ブロードメディアでは、ホテルや病院、キャンプ場、大型施設などへ、快適なネットワーク・Wi-Fi環境の設計・構築・保守サービスを提供しています。
当社では20年以上にわたってWi-Fiサービスを提供しており、10万室以上のホテル客室への導入実績を有しています。
Wi-Fiのプロとして、その構築や運用を強力にサポートしています。
Wi-Fi環境の導入のご検討や、お困りのことがありましたら、ぜひご相談・お問い合わせください。