CDNによるWebサイト高速化の仕組み 〜静的・動的対応の内部ロジック〜

Webサイトの表示速度・安定表示がユーザー体験や検索順位に直結する重要要素であることは、もはやWeb担当者にとって常識となっています。

サーバー増設や画像縮小などといった従来からの改善手法だけでは、アクセス手段やマーケティング活動の多様化などといった環境変化に対応しきれず、昨今ではCDN(Content Delivery Network)による対策が必須とされつつあります。

この記事では、CDNがWebを高速化できる原理とともに、内部で働く仕組みについて解説します。

CDNの基本原理とは 〜距離を短く、負荷を分散して高速化を実現〜

特に企業が運営するWebサイトにおいて、高速化や安定化を確保する上でCDNが「ほぼ必須」と捉えられつつある点は、冒頭でも触れたとおりです。では、実際にCDNはどのようにして効果を発揮するのでしょうか。

Webサイトの配信経路を大まかに捉えると、エンドユーザーとサーバー(CDN導入時には「オリジンサーバー」と呼ばれます)の間には、距離や混雑などの課題があります。CDNはこの「ユーザー ↔ サーバー」の間に入り、両者のやり取りを最適化する役割を担います。

一般的なCDNが高速化を実現する原理は、大きく次の2つに集約できます。

  • 1. 通信距離を短縮し、レイテンシー(遅延)を低減する
  • 2. オリジンサーバーの負荷を分散し、ピーク時も安定性を維持する

それぞれについて、順にご説明します。

1. 通信距離の短縮(レイテンシー低減)

Web表示が遅くなる要因の多くは、単純に「データが遠くから届くこと」です。

例えば、ユーザーが関西にいてオリジンサーバーが北米にあるような場合には、リクエスト(要求)とレスポンス(応答)の往復だけで数百ミリ秒を要します。これがページを構成するリソース(画像やスクリプトなど)の数だけ繰り返されるため、体感速度が大きく低下します。

CDNは、日本中または世界中に配置されたエッジサーバーを利用し、オリジンサーバーよりも近い場所からユーザーへコンテンツを返すことで、この「距離の問題」を構造的に解消します。

2. オリジンサーバー負荷の分散(ピーク対策)

アクセスが集中すると、オリジンサーバーはCPU・メモリ・ネットワーク帯域のいずれも逼迫し、レスポンスが遅くなります。そして、やがて処理能力の限界に達すると、レスポンスできなくなることもあります。

特にキャンペーンやセール開始、テレビ紹介、障害時の案内ページなど、トラフィックが急激に増えるようなケースで顕著です。

CDNは、リクエストの多くをエッジサーバーで代わりに処理するため、オリジンサーバーへの到達回数を最小限に抑えられます。その結果、アクセスが集中しても負荷が分散され、サーバーの処理能力を超えることなく、安定したレスポンスを維持できます。

CDN内部でおこなわれる高速化ロジック

CDNは「エッジにキャッシュを置くだけの仕組み」と誤解されることがありますが、実際には様々な最適化機能が組み合わさった「高速配信レイヤー」として動作しています。

特に1つ目の静的コンテンツのキャッシュは、ほぼすべての主要CDNプロバイダーで提供される基本機能です。一方で、ルーティングの最適化やプロトコル制御、デバイスごとのコンテンツ最適化、さらには動的コンテンツの高速化といった高度な機能は、CDNプロバイダーによって対応状況が大きく異なります。

以下では、CDN内部で実際におこなわれている高速化処理を、次の5つに整理して解説します。

  • 1. 静的コンテンツのキャッシュ
  • 2. インテリジェントなルーティング制御
  • 3. プロトコル最適化と同時接続制御
  • 4. コンテンツ最適化とデバイス適応
  • 5. 動的コンテンツのパフォーマンス最適化

それぞれがどのように体感速度を向上させるのか、順に見ていきます。

1. 静的コンテンツのキャッシュ

Webページの中でも容量の大きな静的ファイル(画像や動画、CSS、JavaScript、文書ファイルなど)は、CDNのエッジサーバーにキャッシュして配信されることで、大幅な高速化が期待できます。

キャッシュ済みのコンテンツはオリジンサーバーに問い合わせる必要がないため、「距離」と「待ち時間」をまとめて削減できる、最も基本的で効果の大きい仕組みといえます。加えて、キャッシュ対象をできるだけ広く設定して最大限に拡張することで、CDNによる高速化効果を最大化しやすくなります。

キャッシュデータの有効期限(TTL)や更新方法(If-Modified-Since、ETag)、エッジサーバーの階層化など、CDNプロバイダーごとに実装や運用の工夫がありますが、概念としては共通です。

一般的なCDNプロバイダーでは、URLのパスやファイル拡張子によって、キャッシュ対象の可否や有効期限などを制御できます。さらに一部のCDNプロバイダーでは、URL内のクエリーパラメーターやCookieなども条件指定に含めることが可能です。

2. インテリジェントなルーティング制御

一部のCDNプロバイダーでは、前述のキャッシュ機能に加えて、CDN内部で通信経路そのものを最適化する仕組みが利用されています。

一般的なインターネットはBGPによって経路選択がおこなわれますが、実際に「最短」「最速」のルートが選ばれることは稀です。これは、ISP間の経路選択が経済的・組織的な制約の影響を受けることや、ネットワーク内の混雑状況が刻々と変化し、直前まで安定していた経路が急に遅くなるといった状況が日常的に発生するためです。

ルーティング制御の機能を持つCDNの内部では、以下の状況をリアルタイムで監視し、最も安定した経路へ自動でルーティングします。

  • 混雑状況
  • 障害の発生有無
  • パケットロス率
  • レイテンシーの変動

これにより、インターネットの「渋滞」ともいえるボトルネック部分を回避し、応答遅延のばらつきを抑制する効果があります。

3. プロトコル最適化と同時接続制御

次に、通信プロトコルそのものを高速化するアプローチです。

一部CDNプロバイダーの対応するHTTP/2やHTTP/3(QUIC)を活用することで、次のようなことを実現でき、ブラウザーとCDNエッジとの間の通信効率が向上します。

  • 複数リクエストの多重化
  • 接続の維持による往復回数の削減
  • TLSハンドシェイクの最小化

また、エッジ側でTLSセッションを保持し、オリジンとの再交渉を減らすことで、動的レスポンスであっても実質的な往復時間を短縮できます。

4. コンテンツ最適化とデバイス適応

近年、いくつかのCDNプロバイダーでは、配信時にコンテンツを最適化する機能が提供されています。

代表的なものとして、以下のような処理が挙げられます。

  • HTML・JS・CSS の圧縮(gzip、Brotliなど)
  • 画像のフォーマット変換(JPEG → WebPなど)
  • デバイスや回線状態に合わせたサイズ最適化

こうした最適化では、ダウンロードされる容量を効果的に削減することで、ユーザー側の負荷を大きく減らし、特にモバイル回線での表示速度に大きく貢献します。

オリジンサーバー側でこうした処理をすべておこなう場合、画像や動画の解像度・フォーマットを複数デバイス向けに事前生成しておく必要があり、その分だけストレージ管理や更新作業が複雑化します。CDNのエッジ側で自動変換できれば、こうした運用負荷を大幅に軽減しつつ、ユーザー環境に最適化された配信が可能になります。

5. 動的コンテンツのパフォーマンス最適化

動的コンテンツは、リクエストごとに表示結果が変わることからキャッシュが難しく、静的ファイルのような単純な高速化ができません。代表的な例として、ユーザーごとに内容が異なるパーソナライズページや、頻繁に値が変わる在庫・価格情報などが挙げられます。

このような特性から、運用現場では「動的コンテンツはキャッシュできない」としてキャッシュ対象から外してしまうことも一般的です。

そこで一部のCDNプロバイダーでは、キャッシュ前提ではなく、遅延を抑えるための周辺技術を組み合わせて最適化をおこないます。

  • TLSセッションの再利用
  • TCPコネクションの維持
  • エッジでの軽量なリクエスト加工やヘッダー操作

さらに、2つ目にご説明した「インテリジェントなルーティング制御」も、動的コンテンツ配信において効果を発揮します。

オリジンサーバーから返されるデータが最適な経路でユーザーに届くよう制御することで、キャッシュできない動的コンテンツでも、レスポンスの安定化・高速化に貢献するのです。

さいごに:CDNによる高速化の全体像と「Akamai」による実現

ここまで見てきたように、CDNは単なるキャッシュ機能を提供するだけに留まらず、以下のような仕組みを多層的に組み合わせることで、単独の改善策では得られない総合的な効果を発揮することが可能です。

  • 通信距離の短縮
  • プロトコル最適化
  • デバイスに応じた最適化
  • 動的コンテンツのパフォーマンス向上

ご紹介したような高速化機能は、CDNプロバイダーによって対応状況が異なる場合があります。

当社が長年にわたって取り扱っているAkamaiのCDNサービスでは、今回ご紹介したすべての高速化機能が統合的に利用可能で、数多くのお客様へご提供しております。

Akamaiでは、パフォーマンス改善に大きく寄与する世界最大のCDNプラットフォームを有しており、WAFやDDoS対策などのセキュリティー機能もオールインワンで利用できます。ご興味いただけましたら、是非お気軽にお問い合わせください。

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