「5G」とは何? ホテル運営に与える影響とは
ホテル運営とテクノロジーには、密接な関係があります。テクノロジーは、同業他社との差別化には欠かせないものでもあり、集客やオペレーション改善を図るためにアップデートされ続けています。
そのような中、「5G」や「Wi-Fi 6」という言葉を聞いたことがあっても、それが自分のホテルにどう関係してくるか、疑問に感じたことはありませんか?
この記事では、これらの新技術がホテル業界にとってどのような意味をもたらすか、わかりやすく説明します。
「5G」とは何? その仕組みは?
5Gにあまり馴染みがないという方も、大丈夫です。
5Gとは、第5世代のモバイル通信規格のことで、現在スマートフォンで利用されている4G・LTEをゆくゆく置き換えるとされています。現時点では限られた都市でしか利用できませんが、徐々に広範囲に展開され始めています。
5Gがもたらすメリットは主に、低遅延(機器の応答性が向上する)、超高速(動画などの大きなファイルをより速くダウンロードできる)、多数の機器を一度に接続できる(スマートホーム機器など)ことが挙げられます。
現在の4Gネットワークとは異なり、国内の5Gでは2つの周波数帯を使用します。周波数帯ごとの速度は、チャンネル数と帯域幅の大きさによって決まります。
Sub6帯(3.7GHz帯と4.5GHz帯)
電波の減衰が少なく、遮蔽物や雨などに強いため、広域まで電波が届きやすい特徴があります。ただし、5Gの特徴でもある速度・同時接続性の面では、ミリ波に大きく劣ります。
ミリ波帯(28GHz帯)
高い周波数帯を用いるので、「超高速、低遅延、多数同時接続」という5Gのメリットを実現できます。ただし、減衰が大きいため、広いエリアをカバーできません。
現時点での「4G vs 5G」
5Gには多くの利点があり、一部の都市では展開が始まっているにもかかわらず、普及が遅れているのはなぜでしょうか。その要因として、以下の課題が挙げられます。
5Gの普及を阻害する要因
- 高価なインフラのアップグレードが必要なこと
- 5Gに対応したモバイル機器が必要なこと
4Gから5Gへの移行は、技術革新がまるで"スローモーション"で起こっているように感じられます。
2020年3月に大手通信キャリア3社は、限られた都市で、5Gによる通信サービスを開始しました。そして携帯電話メーカーからは、限られた一部機種のみが、新規格対応として発売されました。
5Gを実現するために携帯電話会社は、通信基地局を最新のものにアップグレードする必要があります。しかしこの作業には、多大な資金力と時間を要することから、通信事業者の対応が進まない要因となっています。
アップルやサムスンなどといった各メーカーから、5Gに対応したスマートフォンが発売されるようになりました。しかし、対応機種は高級なハイエンド機に限られるケースが珍しくなく、それ以外の機種は従来規格(4G)のみの対応となっています。キャリアの対応が進まないことには、メーカー側も開発・販売を躊躇してしまいます。
5Gについては、その「速さ」がよく注目されます。
5Gと4Gを比較すると、5Gではダウンロード速度が飛躍的に向上し、将来的には現在(4G)の最大600倍になると言われています。
"電光石火"の5G通信技術は、情報をミリ秒単位で世界中に伝送することを可能にし、NetflixのHD映画コンテンツを数秒で丸ごとダウンロードするような、未来的ビジョンも実現可能とします。また、人工知能(AI)を搭載した機器にとっても、5Gのスピードは有利に働きます。
5Gがホテル業界にもたらす意味
主要メディアでは話題になっていますが、5Gがホテル業界に与える影響は、実際にはそれほど大きくありません。ホテル経営の面でも、5Gに関連したアップグレードをおこなう必要はありません。
スマートフォンの通信速度が"5G対応"になれば、モバイルアプリやウェブアプリを超高速で利用できるようになり、モバイルキーなどの分野での導入が加速することは間違いありません。ホテル専用アプリがあれば、アプリへのアクセスが容易になるため、より多くのエンゲージメントが得られるかもしれません。
一方で、従来のようなWi-Fiサービスには価値がなくなっているかもしれません。Wi-Fiを有料化しているホテルは、料金の廃止(無料開放)を検討すべきです。
5Gでモバイル通信が高速化される中、もしWi-Fiが有料の場合には、お客様はわざわざWi-Fiに接続しようとはしません。
実は「5G」より「Wi-Fi 6」が重要
ここまでモバイル通信の5Gについて説明してきましたが、Wi-Fiにおいても大きな技術変革を迎えています。
5Gが4Gと比べて高速化されたように、Wi-Fiの最新規格である「Wi-Fi 6」は、従来規格「Wi-Fi 5」と比べて約40%高速化されます。現在でも広く使われている「Wi-Fi 4」との比較では、高速化の幅は16倍にもおよびます。
この変化は、4Gから5Gのときほど劇的ではないようにもみえますが、ホテルのように多くのお客様がWi-Fi接続を共有する状況では、大きく違ってきます。
また、Wi-Fi対応機器が当たり前となっていく中でのWi-Fi速度向上は、ホテルのスマートサーモスタット、スマートスピーカー、スマートロックの性能向上にもつながります。
Wi-Fi 6がホテルにとって大きな意味を持つことは間違いなく、その意味は5Gよりも大きなものとなるでしょう。実際に多くのホテルでは、建物の少なくとも一部で携帯電話の電波が届きません。
強力なWi-Fiを提供することは、宿泊のお客様だけでなく、業務用デバイスを使用する従業員にとっても重要です。
映画のストリーミングやビデオ通話には、高速のWi-Fiが適していますが、ホテルシステムの円滑な運用には、信頼性の高いWi-Fiも必要です。
多くのホテルでは、アレクサのようなプラットフォームを搭載したタブレット端末を客室に設置し、これらをホテルのWi-Fiネットワークに接続しています。タブレット端末には、ルームサービスの注文、ホテルスタッフとのリアルタイムチャット、回答の即時検索、リクエスト送信などといった機能が搭載されていますが、これらは5Gのようなモバイル回線ではなく、Wi-Fiネットワークを必要とします。
最先端のWi-Fi技術を用いることによってホテルは、タブレットやアプリを使って、客室内でのより強力なエンゲージメントを構築できます。
ニュースでは5Gの話題をよく耳にしますが、ホテル経営者にとっては「Wi-Fi 6」が、次の大きな技術インフラになるでしょう。Wi-Fi 6があれば、客室内のテクノロジーを活用してより良いサービスを提供できるようになり、その結果、お客様の好意的レビューやリピートを促進できるはずです。
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