高齢者施設がWi-FiとDX(デジタルトランスフォーメーション)を計画するべき理由
シニアリビング業界は、デジタル化の波にさらされています。継続的なケアを求める人口の増加が予想される中、施設内のWi-FiとDX(デジタルトランスフォーメーション)の計画は、これまで以上に重要な意味を持っています。
この記事では、その背景とともに、対応すべき内容についても説明していきます。
高齢者に関する誤解
「高齢者はテクノロジーに対して大きな抵抗感を持っている」という一般的な誤解があります。
若年層と高齢者層の間には、顕著なデジタルデバイド(情報格差)が存在します。しかし、そうであっても多くの高齢者は、既にデジタルの世界と密接な関係を持っています。
Pew Research Centerによると、2000年初頭のインターネット普及率のなかで、高齢者の割合は14%に過ぎませんでした。しかし現在では、65歳以上の成人の67%以上がインターネットを利用していると答えています。また、インターネットを利用している人は、テクノロジーを肯定的にとらえ、日常生活に取り入れている傾向があります。
つまり、シニア世代は私たちが思っている以上にテクノロジーを利用しており、それを便利に感じています。
いま、40代・50代・60代の人たちは、Facebookやオンライン・デートで最も急速に成長している消費者グループです。インテル社の副社長であるジュヌビエーブ・ベル氏が「シニア層は、オンライン金融サービス、医療情報サイト、電子書籍の最大のユーザーである」と述べているように、シニア層向けの市場は大きく変わっていきます。
今後数年のうちに、クラウドベースのアプリケーションやIoTデバイス、これらを快適に使えるWi-Fiネットワークへの需要は高くなり、高齢者施設もこの流れに対応していく必要があります。
デジタルサービスと高齢者施設
総務省統計局の情報によると、65歳以上の高齢者の割合は、2021年時点で29.1%と過去最高を記録しています。そしてこの高齢化傾向は今後も続き、いわゆる「団塊ジュニア」世代が65歳以上となる2040年には、35.3%にまで拡大すると見込まれています。
高齢化社会におけるこの驚異的な成長予測は、高齢者施設にとっての課題ではありますが、介護者には便利で合理的な医療ツールを、高齢者にはより良い生活の質を提供するための、設備投資のチャンスでもあります。
近年、高齢者施設では、質の向上したデジタルサービスが求められるようになってきました。しかし、アマゾンのアレクサに代表されるホームアシスタンスの革新的な技術により、高齢者は自宅に長く滞在するようになり、それが極端な社会的孤立につながっているとも考えられています。周知のように、孤立は、うつ病、認知症、社会不安、自己評価の低さなど、メンタルヘルス問題のリスクを高めます。
外向性や性格がどうであれ、人間は社会的な生き物であり、人との接触がないと生きていけません。看護師やアシスタントがより多くのメンタルヘルス問題に対処しなければならなくなってしまいます。
それを防ぐには、旧来の典型的な「老人ホーム」とは対照的な、明るく開放的な環境で、現代的なデジタルコンフォートを提供する革新的な施設が出現し始めています。
テクノロジーの進歩がシニアライフを変える
知識を広めたり、作業を簡単にしたり、システムをより効率的にしたりするために、誰もがテクノロジーを利用しています。しかし、さらに顕著なのは、生活を変えている業界特有のテクノロジーであり、特にシニアリビングに関するテクノロジーです。
若年層の大半は、学業、仕事、社会的な目的のために、あるいは笑いのためにテクノロジーを利用しています。
しかし、高齢者にとってテクノロジーは、それとは異なり、より重要な役割を果たしています。自立を助けたり、人生に必要な情報へのアクセスを可能にしたりと、テクノロジーは彼らの生活の質を変えているのです。
高齢者施設で検討すべきテクノロジー(一例)
- オートメーションシステムによる、施設内の照明や温度の管理
- ウェアラブル端末(Apple Watchなど)やセンサーによる、心拍数や健康状態の管理
- タブレット端末による、入居者とスタッフとのコミュニケーション手段の提供
- 書籍や動画などのコンテンツを視聴できる環境の提供
- これらを支えるインフラの整備(高速なWi-Fi、USB充電口など)
このようなテクノロジーの導入は、シニアリビングをより魅力的なものにするだけでなく、コミュニケーションを合理化し、スタッフの時間を節約し、現在この業界が直面しているスタッフ不足を緩和するのにも役立ちます。
サービス指向の資格を持つ労働力の採用と維持は、この業界の大きな課題の一つです。
次世代のシニアリビングスタッフは、便利で有用なテクノロジーを求めています。単に労働時間の改善やワークライフバランスの向上の話ではなく、よりストレスの少ない、より合理的な環境を求めています。
より良い技術は、より良い、よりパーソナライズされたケアを可能にします。
高齢者施設とヘルスケアの連携 ─ EHRとHIPAA
最新の医療施設では、「EHR」(電子健康記録、電子カルテ)が一般的になりつつあります。
EHRは、効率的なワークフローを可能にする、患者を中心としたリアルタイムの記録を提供します。
EHRには、患者の病歴、診断、投薬、治療計画、予防接種日、アレルギー、放射線画像、検査結果などがすべて含まれており、クラウドベースのプラットフォームで管理されています。これにより、紙で管理していたときのような、置き場所に困ったり、長く保管したり、簡単に盗まれたりすることがなくなります。
そんなEHRですが、セキュリティー・コンプライアンスの面はどうでしょうか?
ほとんどのEHRシステムは、HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act、米国連邦法)へ準拠する形でクラウドベースにて提供され、お客様のネットワークから操作する仕組みとなっています。したがって、大抵はWi-Fiネットワークのセキュリティーに依存することになります。
以下要件を満たすために、高齢者施設には、適切に設計、設置設定され、導入後も管理されるWi-Fi環境が必要です。Wi-Fi環境は、管理しやすく可視性があり、悪意のある攻撃を未然に防ぐものでなければなりません。
HIPAAにおける主要な技術的セキュリティルール(一例)
- すべての保護されるべき健康情報(PHI)は、保存時および転送時に暗号化する
- PHIにアクセスする医療従事者には、「固有のユーザー識別子」を持たせる
- PHIへの不正アクセスを防ぐため、自動ログオフ機能を持たせる
最低限必要なネットワークセキュリティー(一例)
- 侵入検知・防御機能
- 位置情報の追跡
- アクセスポイント保護
- 監査用ログ、レポート
高齢者施設に高信頼のWi-Fiを導入する
高齢者施設におけるDXには、様々な意味で、高速で安全なWi-Fi環境が必要とされます。
この背景には、モバイルデバイスやIoTデバイスの増加、ミッションクリティカルなクラウドベースのアプリケーションの使用、さらには高性能なワイヤレスアクセスを求めるユーザー需要の増加などが挙げられます。
業務を円滑化しつつユーザー需要を支えるWi-Fi環境は、適切な技術設計が不可欠です。以下に挙げる3つについて、適切におこなわれる必要があります。
- Wi-Fiの設計(環境に応じてカスタマイズされた構成や配置)
- Wi-Fiの実装(ネットワークの設置と設定を適切におこなう)
- Wi-Fiの管理(パフォーマンスの監視・保守と改善)
これからの高齢者施設においては、デジタル化が進む中、Wi-Fiがコミュニティー成功に大きな役割を果たすでしょう。
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