APIセキュリティー対策ガイド 〜攻撃トレンドからWAAPによる包括防御まで〜

クラウドサービスやモバイルアプリ、SaaS連携の普及によって、企業システムにおけるAPI活用は急速に拡大しています。近年では、Webサービスやアプリケーションの多くがAPIを前提として構築されており、APIは現代のデジタルサービスを支える重要な基盤となっています。

その一方で、APIを狙ったサイバー攻撃も増加しています。認証済みセッションを悪用した不正アクセスやBotによる自動化攻撃、シャドーAPIを狙った攻撃など、従来型のWAFだけでは対応が難しいケースも増えており、API特有のセキュリティー対策の重要性が高まっています。

この記事では、APIを狙う最新のサイバー攻撃トレンドや、APIセキュリティー対策の基本、実践的な強化ステップについて解説します。また、APIとWebサービスを包括的に保護する「WAAP(Web Application and API Protection)」についても紹介します。

APIを狙うサイバー攻撃の最新トレンド

企業システムやWebサービスにおけるAPIの利用拡大に伴い、APIそのものを狙ったサイバー攻撃も急増しています。近年では、モバイルアプリやSaaS、クラウドサービスの多くがAPIを基盤として動作しており、APIは単なるシステム連携手段ではなく、サービスの中核を担う存在となっています。

その一方で、攻撃者にとってもAPIは非常に魅力的な標的です。特にAPIは、認証済みユーザーとして通信をおこなうケースが多く、通常のWebアクセスとの区別がつきにくい特徴があります。そのため、従来型のWAFだけでは検知・遮断が難しい攻撃も増えています。

APIを狙う代表的な攻撃手法としては、以下のようなものが挙げられます。

1. BOLA(Broken Object Level Authorization/認可不備)

APIの認可設計の不備を悪用し、本来アクセス権限を持たないデータへアクセスする攻撃です。

URLやパラメータ内のIDを書き換えることで、他ユーザーの情報へアクセスできてしまうケースなどが代表例として知られています。

2. スキミング攻撃(決済情報の窃取)

ECサイトや決済関連APIを狙い、クレジットカード情報や決済データを不正に窃取する攻撃です。

オンライン決済やサブスクリプションサービスの拡大に伴い、API経由での情報窃取リスクも高まっています。

3. Botによる自動化攻撃(認証突破やデータ収集)

漏えい済みID・パスワードを利用したCredential Stuffing(クレデンシャルスタッフィング)や、商品情報・価格情報を自動収集するスクレイピングなどが代表例です。

近年では、生成AI向けデータ収集を目的とした大規模スクレイピングも増加傾向にあります。

4. 認証済みセッションの悪用

盗み出したトークンやセッション情報を利用し、正規ユーザーになりすましてAPIへアクセスする攻撃です。正常な認証済み通信に見えるため、従来型のシグネチャーベース防御だけでは検知が難しい場合があります。

さらに深刻なのが、「シャドーAPI」や「ゾンビAPI」の存在です。これは、企業側で十分に管理されていないAPIや、すでに利用停止したつもりの古いAPIが外部公開されたまま残っている状態を指します。開発スピードの高速化やマイクロサービス化の進展により、企業全体でAPIを正確に把握できていないケースも少なくありません。

APIは、個人情報・決済情報・認証情報など、重要データへの入口となるケースが多いため、攻撃を受けた際の影響も大きくなりやすい傾向があります。API利用の拡大とともに、APIセキュリティーは企業にとって重要な課題の一つとなっています。

APIセキュリティー対策の基本

APIセキュリティーを考えるうえで重要なのは、「APIは通常のWebアプリケーションとは異なる特性を持つ」という点です。

APIはシステム同士の通信を前提としており、人間がブラウザで直接操作するWeb画面とは異なる形で利用されます。そのため、従来型のWebセキュリティー対策だけでは十分に対応できないケースがあります。

APIの脆弱性が生まれる背景とは

特に近年では、クラウドネイティブ化やマイクロサービス化の進展によって、企業内で利用されるAPIの数が急増しています。APIの利便性が高まる一方で、管理や保護の難易度も上がっており、API特有の脆弱性が生まれやすい状況になっています。

APIの脆弱性が生まれる背景としては、以下のような要因が挙げられます。

1. エンドポイント数の増加による管理の複雑化

サービス拡張や機能追加に伴い、APIエンドポイントが急増し、企業全体で管理しきれなくなるケースがあります。結果として、不要なAPIや管理漏れのAPIが発生しやすくなります。

2. マイクロサービス化によるAPI間通信の増大

システム内部でもAPI連携が多用されるようになり、サービス間通信(East-Westトラフィック)の保護や監視が重要になっています。

3. 認証・認可の設計不備

APIでは認証済み通信が前提となるケースが多く、認可設計が不十分な場合、BOLA(認可不備)などの重大な脆弱性につながる可能性があります。

4. データアクセス範囲の広さ

APIはデータベースや基幹システムと直接連携することも多く、一度侵害されると大量の情報漏えいにつながるリスクがあります。

APIセキュリティー対策で押さえておくべき基本

APIセキュリティー対策では、単一の対策だけで安全性を確保することは難しく、認証・入力検証・アクセス制御・監視といった複数の対策を組み合わせて実施することが重要です。

特に、APIでは認証済み通信を悪用した攻撃や、Botによる自動化攻撃など、通常のWebアプリケーションとは異なるリスクへの対応が求められます。ここでは、APIセキュリティー対策において押さえておきたい代表的なポイントを紹介します。

1. 認証・認可の適切な設計

APIセキュリティー対策の基本として、まず重要になるのが認証・認可の適切な設計です。特にOAuth2.0やOpenID Connect(OIDC)などを利用した認証基盤の整備や、JWT(JSON Web Token)の適切な管理は重要なポイントとなります。

トークンの有効期限設定や権限スコープの制御を適切におこなわなければ、認証済みセッションの悪用につながる可能性があります。

2. 入力値検証・スキーマバリデーション

APIではJSON形式によるデータ通信が一般的であるため、スキーマバリデーションや入力値検証も重要です。

たとえば、以下のような対策が挙げられます。

  • 想定外のデータ形式を受け付けない
  • 不正なパラメータを拒否する
  • 必須項目や型を厳格にチェックする

こうした制御を実施することで、インジェクション攻撃や不正リクエストを防止しやすくなります。

3. APIキー・シークレット情報の管理

APIキーやシークレット情報の管理も、重要なポイントです。

特に注意したい例としては、以下が挙げられます。

  • ソースコードへのAPIキーのハードコード
  • アクセス権限の過剰付与
  • 長期間ローテーションされていないシークレット情報

これらは不正利用や情報漏えいの原因となるため、定期的なローテーションや適切なアクセス制御が求められます。

4. レート制限(Rate Limiting)によるアクセス制御

Botによる大量アクセスやAPI abuse(APIの不正利用)への対策として、レート制限(Rate Limiting)の導入も有効です。

一定時間内のアクセス回数を制限することで、以下に対する耐性を高めることができます。

  • 過剰なAPI利用
  • Credential Stuffing
  • スクレイピング
  • 自動化攻撃

5. ログ監視・APIインベントリー管理

APIセキュリティーでは、継続的な運用管理も欠かせません。

具体的には、以下のような対応が重要になります。

  • APIログの監視
  • 異常アクセスの検知
  • API利用状況の可視化
  • APIインベントリー管理
  • シャドーAPIの発見

特に、企業内で利用されているAPIを正確に把握できていない状態では、脆弱性管理やインシデント対応が難しくなるため、注意が必要です。

APIセキュリティー強化のための実践ステップ

APIセキュリティーを強化するためには、単にセキュリティー製品を導入するだけではなく、設計・運用を含めた継続的な取り組みが重要になります。APIは日々追加・変更されるため、一度対策を実施しただけでは十分とは言えません。

特に近年では、クラウドネイティブ化やDevOpsの普及により、開発スピードと引き換えにAPI管理が複雑化しているケースも増えています。そのため、APIセキュリティーでは「継続的に可視化・監視・改善をおこなう」という考え方が重要になります。

APIセキュリティー強化の実践ステップとしては、以下のような対応が有効です。

1. APIインベントリーの可視化(シャドーAPIの排除)

現在どのようなAPIが存在しているのか、どの部門が利用しているのか、外部公開されているAPIはどれかを把握することが重要です。特に、管理されていないシャドーAPIや、古いゾンビAPIの存在は大きなリスクとなります。

2. 認証・認可の強化(トークン管理、権限分離)

OAuth2.0やOIDC、JWTなどを適切に運用し、最小権限の考え方に基づいたアクセス制御を実施します。認可設計の不備は、BOLAなどの重大な脆弱性につながる可能性があります。

3. スキーマバリデーションの徹底

想定外のリクエストや不正なパラメータを受け付けないよう、JSONスキーマの検証や入力値チェックを実施します。これにより、インジェクション攻撃や不正リクエストへの耐性を高めることができます。

4. レート制限・Bot対策の導入

Botによる大量アクセスやCredential Stuffing、スクレイピングへの対策として、Rate LimitingやBot管理機能を導入します。API abuse対策としても重要なポイントです。

5. WAAPによる統合防御の構築

近年では、API単体ではなく、WebアプリケーションやBot対策、DDoS対策も含めて統合的に保護する考え方が重要になっています。近年では、WAF・API保護・Bot対策などを統合したWAAP(Web Application and API Protection)の導入が進んでいます。

また、対策導入後の継続的な監視も欠かせません。API利用状況の分析や異常検知、ログ監視を継続的に行い、不審な挙動を早期に発見できる体制を整えることが重要です。

さらに近年では、DevSecOpsの考え方を取り入れ、開発段階からセキュリティーを組み込む企業も増えています。CI/CD環境にセキュリティーテストを組み込み、API公開前に脆弱性を検査することで、リリース後のリスク低減につなげることができます。

特にWAAPは、APIの自動検出や異常検知に強みを持つソリューションも増えており、従来型のWAFだけでは把握しにくかったAPI挙動を可視化しやすくなっています。API利用が拡大する現在においては、単発の対策ではなく、継続的な改善を前提とした運用体制の構築が重要です。

WAAPによるAPI・Webサービスの包括防御

API攻撃の高度化に伴い、従来型のWAFだけでは十分な防御が難しくなっています。特にAPIでは、認証済み通信を悪用した攻撃や、Botによる自動化攻撃、正常な通信を装った不正アクセスなどが増えており、シグネチャーベースの単純な検知だけでは対応しきれないケースが増加しています。

こうした背景から注目されているのが、「WAAP(Web Application and API Protection)」です。WAAPは、WAFだけでなく、APIセキュリティー、Bot対策、DDoS防御などを統合的に提供する考え方・ソリューション群を指します。

従来のWAFは、主にWebアプリケーションへの既知の攻撃パターンを検知・遮断する役割を担っていました。一方でWAAPでは、API特有の脅威や、自動化攻撃、アプリケーション層へのDDoS攻撃なども含め、より広範囲な保護を実現します。

特に近年では、APIセキュリティー対策において、以下のような機能を統合的に提供できる点がWAAPの大きな特徴となっています。

  • WAF機能:
    Webアプリケーションへの攻撃を検知・遮断
  • Bot対策:
    自動化された悪質アクセスやスクレイピングを防御
  • APIセキュリティー:
    APIスキーマ検証、レート制限、異常検知などを実施
  • DDoS防御:
    大規模アクセス攻撃への耐性を強化
  • 脅威インテリジェンス:
    最新の攻撃情報をもとに防御精度を向上

たとえば、APIスキーマ検証によって想定外のリクエストを検知したり、アクセス頻度や通信パターンの分析によって異常なBot挙動を検出したりすることが可能です。また、API Discovery機能によって、企業側で把握できていないシャドーAPIを可視化できるケースもあります。

さらに、近年のWAAP製品では、脅威インテリジェンスを活用した高度な分析や、行動ベースの異常検知を取り入れるものも増えています。従来型のWAFでは、正常な通信を装った攻撃や回避型攻撃への対応が難しいケースもあり、より高度な検知・分析が求められるようになっています。

こうした流れの中で、グローバル規模でWeb・APIセキュリティーソリューションを提供し、多くの企業・大規模サービスへの導入実績を持つ Akamaiでも、WAAPを重要なセキュリティーアプローチとして位置づけています。Akamaiでは、WAF・Bot対策・DDoS防御・APIセキュリティーを統合的に提供し、API特有の脅威にも対応できる点を強みとしています。

特に、

  • APIスキーマ検証
  • レート制限
  • Bot管理
  • API Discovery
  • 脅威インテリジェンスを活用した異常検知

などを組み合わせることで、従来型WAFだけでは可視化しにくかったAPI挙動にも対応しやすくなります。

APIとWebアプリケーションを個別に保護するのではなく、統合的に管理・防御することは、運用負荷軽減や可視性向上の観点でも重要です。API活用が拡大する現在において、WAAPはWebサービス全体のセキュリティー強化を支える重要なアプローチの一つとなっています。

さいごに

APIは、クラウドサービスやモバイルアプリ、SaaS連携など、現代のデジタルサービスを支える重要な基盤となっています。その一方で、APIを狙ったサイバー攻撃は年々高度化・複雑化しており、認証済みセッションの悪用やBotによる自動化攻撃、シャドーAPIを狙った攻撃など、API特有のリスクへの対応が重要になっています。

こうした脅威に対しては、認証・認可の強化や入力値検証、レート制限、継続的な監視など、複数の対策を組み合わせて実施することが重要です。また、APIとWebアプリケーションを個別に守るのではなく、WAAPのような統合的なアプローチによって包括的に保護する考え方も、今後ますます重要になっていくと考えられます。

当社では、セキュリティー分野のパイオニアである Akamaiが開発・提供する各種セキュリティーサービスを、長年にわたって取り扱っており、数多くのお客様へご提供しております。

Akamaiでは、WAAPソリューションのラインアップとして、WAF・APIセキュリティー・Bot対策・DDoS防御などを統合的に提供しています。APIセキュリティー強化やWAAP導入をご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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