DCPを映画館にネットワークを使って送る方法【DCP配信とは?】

上映素材は、DCP(デジタルシネマパッケージ)での運用が定常化し、今やフィルムでの運用を経験していない世代も増えてきました。

重いフィルムを運ぶことも、映写機に装填することもほとんどなくなり、負担は目に見えてラクになりましたが、ひとつだけフィルム時代から変わっていない運用があります。

それは、「上映素材の管理と配送手配」です。

今回は、DCPをインターネットで映画館まで届ける方法についてご説明します。

ちりも積もれば大きな手間に・・・

フィルム時代には当たり前だった、上映素材の管理と配送手配。

  • どの映画館に、いつまでに、どのバージョンのプリントを送るのか。
  • このプリントは〇日に上映が終わるから、次にこの映画館に送って、こっちは倉庫に・・・

など、素材のやりくりとスケジューリングは、煩雑な業務のひとつでした。

そんな中、登場したDCPというデジタル素材。

素材がデジタルになったら、コピーも容易になって、プリントの状態チェックも必要なくなるし、上映日に合わせてバーッと素材を配って、終わったら消去してもらえばいいだけ!

・・・と、思った方もいたかもしれません。。

いえ、デジタル化の良さとは、まさに"そこ"にあったはずなのです。

が、実際には重たいプリントが、多少軽いハードディスク(もしくはUSBメモリ)に変わっただけで、メディアへのコピーにはお金がかかるし、そうなると素材のやりくりは必要だし、映画館への配送手配はもちろん、素材が入ったメディアは紛失できないから管理もちゃんとしなきゃいけないし・・・と、結果的にあまり手間が減ったとは言えない状況が続いています。

確かに今までとほぼ同じ業務であり、頑張ればやれてしまう作業。一見、大きな負担には思えないかもしれません。

しかし、各所への連絡や管理ファイルの更新なども含め、細かい手間が必要な作業であることは確かです。それらの時間をもっとクリエイティブなことに使うことができたら。。

HDDの中身だけを、メールのように簡単に映画館まで届ける方法はないのでしょうか?

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DCPのネットワーク配信

DCPは、映像や音声、字幕、それらを再生するためのデータなど、映画が正しく再生されるために必要な画、音、字幕などのファイルをひとまとめにしたパッケージです。

映画本編の容量は、100GB以上。メールで簡単に送れるシロモノではありません。

しかも、絶対に漏洩が許されないコンテンツデータとなると、セキュリティ面がしっかりと守られている環境でしか取り扱えません。

では、実際にDCPを映画館までネットワークをつかって送ることはできるのでしょうか?

現在、DCPを映画館までネットワークをつかって配送できるサービスを提供している会社は、いくつか存在しています。弊社ブロードメディアもその中の1社で、長年コンテンツデリバリーを扱ってきた配信事業者としての経験を活かし、セキュアな環境の中で実際に本編・予告編のDCPを各映画館までお届けしています。

こちらが、そのDCP配信サービスの仕組みと流れです。

DCP配信サービスにおける配信フロー図

配給会社は、弊社に素材データをひとつ納品していただくだけ。

あとは、ご指定いただいた映画館まで、ネットワークを使ってお届けします。

また映画館がダウンロードする方式ではなく、映画館に設置した受信サーバにDCPが届く形になっているので、映画館側の作業も、受信サーバからTMS(シアターマネジメントシステム)にDCPを移動させるだけ。

TMSをつかった運用を行っている映画館は、上映サーバへのインジェスト作業も、PC上で完結できます。

また、配信したDCPは一定期間で消去されるため、物理メディア(HDD,USBメモリ)のような煩わしさはありません。また、映画館側にとっても、物理メディアの管理や配給への返却手配をする必要もありません。

現状との比較

DCPの配送手段がオンライン配信に変わることで、このような利点が考えられます。

DCP配信サービスによるメリット図

もちろん現状で不便はない、と思われている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、ひとつひとつは小さな手間でも、これらに費やす時間をコストとして考えると、実は大きな負担になっている可能性があります。

さいごに

上映素材や映写機材のデジタル化によって、映画を取り巻く運用は大きく転換しました。それによって運用の利便性が高まったことは確かです。

しかし、映画業界にはデジタルで効率化できることがまだまだたくさん潜んでいます。実際のところ、海外では効率化がさらに進んでおり、そこから捻出した資金で常に新しいエンターテインメントに投資できる体制を取っていたりします。

ただ、まずは「これ、もっとなんとかならないのかな・・・」をデジタルで解決し、小さな手間を減らしていくことが、やがて大きなコスト削減へと繋がっていくのではないでしょうか。

まだ日本で浸透しているとは言い難いDCPの配信サービスですが、物理的な運送からの転換は、その一歩になるのかもしれません。

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ブロードメディアでは、デジタルシネマに関する各種サービスを提供しています。

上映素材を映画館までインターネット経由で配送するDCP配信サービスや、上映・興行管理システム(TMS:シアターマネジメントシステム)については、日本国内の50館以上へ導入され、映画館のデジタル運用をサポートしています。

資料のご請求や詳細については、ぜひお気軽にご相談・お問い合わせください。

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