ウェブCM動画素材をテレビCM用に転用する際の注意点とポイント
最近、YouTubeやSNS向けのウェブCM動画を制作されるプロダクション企業様より、「ウェブ向けに制作したCM素材をテレビCM向けに転用・流用したい」というお問い合わせが増えてきました。
ウェブCMは、一般的なテレビCMと比べて「低い予算で制作できる」「自由度が高い」ことなどが特徴として挙げられますが、制作目的や使用用途、内容、予算、納期、納品形式など、様々な点で異なります。
クライアントからの意向などで制作したウェブCM素材を、テレビCM素材として転用することになった場合、広告会社や制作プロダクションでは、どのような点に注意すればよいのでしょうか?
この記事では、ウェブCM素材をテレビCM用として転換の上で放送局へのオンライン送稿を実施した事例とともに、注意点やポイントについて解説します。
ウェブCM素材をテレビCMに流用する際の注意点1:納品形式(映像編)
ウェブCMとテレビCMでは、完パケ後の後工程作業が大きく異なります。
テレビCM向けに後工程を実施するために必要な搬入原版のフォーマットについて
CM制作プロダクションで完パケまでおこなった上で、ポスプロ会社または搬入事業者にて後工程作業をおこなう場合、当社では搬入原版のフォーマットとして「ProRes422 HQ」を推奨しています。
制作会社へご案内している映像の納品形式は、以下のとおりです。
ウェブCM動画においては、制作用途の違いから、フレームレート(フィールド周波数)が異なる場合があります。下記条件に適合しているか、今一度ご確認ください。
- フレームレート: 29.97 fps
- スキャンモード: インターレース (推奨)
タイムコードが「DF」、本編スタートTime Codeが「01h00m00s00f」での書き出し設定になっていることも、併せてお確かめください。
CM制作会社へのお願い
- ProRes422HQ以外のフォーマット(ProRes4444など)は、極力避けてください。
※素材変換時に、色調が意図せず変化する可能性があります。 - フレームレートが24p(23.98p、プログレッシブ)の制作であっても、原版搬入時にはテレビCM素材搬入基準に準じた59.94i(29.97fps、インターレース)に変換する必要があります。
- 事前に光点減検査(パカパカチェック、ハーディングFPAなど)をおこなう場合も、インターレースの状態でご確認ください。
※プログレッシブ時とインターレース時では、検査結果が異なる場合があります。 - 素材ファイルのロール構成について、収録フォーマットは、短尺フォーマット、初号フォーマットのいずれでも問題ありません。ProResファイル名は、素材の取り違い防止のため、「CM_(10桁CMコード).mov」としてください。
併せて、民放連ウェブサイト内の「テレビCM素材搬入基準」をご参照ください。
テレビCM素材搬入基準
(テレビCM素材搬入基準、オンラインCM搬入規準、ファイルベースメディアCM搬入規準、字幕付きCM素材搬入暫定基準など)
ウェブCM素材をテレビCMに流用する際の注意点2:納品形式(音声編)
映像編でも上述しましたように、テレビCM用の搬入原版フォーマットとして「ProRes422 HQ」を推奨していますが、音声部分のコーデックには「リニアPCM 24-bit」を推奨しています。
以下が、CM搬入原版用ProRes422HQファイルの音声仕様です。
ポスプロ会社または素材搬入事業者へ原版納品する際には、下記仕様に適合しているかご確認ください。
- コーデック: リニアPCM
- ビットデプス(ビット深度): 24-bit
- 平均ラウドネス値: -24.0 LKFS
ウェブCMの素材をお預かりする際に、素材の平均ラウドネス値について仕様を満たしていないことが、よくございます。当社でお預かりする場合、スタジオでのMAを通じた修正は可能ですが、制作プロダクションで予めチェックしてください。
テレビCMに転用する際に最もご留意いただきたいポイントが、音声の「ノンモン」です。ウェブCMでは、尺一杯に音声ナレーションや音楽を使用されるケースがありますが、テレビCMの場合では、テレビCM素材搬入基準に従って、最初(TOP)の0.5秒と最後(LAST)の0.5秒は無音(ノンモン)にする必要があります。
併せて、民放連ウェブサイト内の「テレビCM素材搬入基準」もご参照いただき、『音声トラックの運用』(0.5秒の無音)を順守してください。
テレビCM素材搬入基準
(テレビCM素材搬入基準、オンラインCM搬入規準、ファイルベースメディアCM搬入規準、字幕付きCM素材搬入暫定基準など)
テレビCM用HD素材「原版」「サブマスター」作成時の注意事項
ProRes422HQの作成時には、現状のVTR運用と同様に、放送信号についての知識を持った人員による作業とし、信号管理放送用波形モニターで確認することを推奨します。
ProRes422HQファイルのプレビューチェックをおこなう際には、「表現色域の変わらない」ソフトウェアの使用を推奨します。
- 表現色域の変わるソフトウェアの例: アップル社製 QuickTimePlayer、FinalCutPro X など
Adobe PremiereやDaVinci Resolve、EDIUSなどでは、「色域が変わる事象」は確認されていません。
参考資料ご紹介
一般社団法人 日本アド・コンテンツ制作協会(JAC)、一般社団法人 日本ポストプロダクション協会(JPPA)にて検討された、運用上の合意事項です。
テレビCM素材搬入基準
(テレビCM素材搬入基準、オンラインCM搬入規準、ファイルベースメディアCM搬入規準、字幕付きCM素材搬入暫定基準など)
さいごに
CMを取り巻く環境のデジタル化が進む今、CM素材はこれまで以上に、シームレスに利用される機会が増えると考えられます。
ただしウェブCMとテレビCMでは様々な違いがあることから、まずはその仕様を知ることが大切です。
当社では、CM素材のテレビ局へのオンライン送稿を、トータルでサポートしています。ご不明な点は些細な事でもお問い合わせください。
また、ぜひこの機会に、オンライン運用のご利用をご検討いただければと思います。
関連コンテンツのご紹介
動画による説明
入稿時のファイル仕様や発生する作業、費用など、後工程に関するサービスについて、動画でご説明しています。
製品ページ
ブロードメディアでは、CMオンライン送稿サービスを提供しています。
素材搬入事業者としてテレビCMへの字幕制作(付与作業)に対応しており、協力会社を通じて字幕付きOA原版作成が可能です。
初号をお渡しいただければ、字幕制作(付与作業)からオンライン搬入(局納品)まで、ワンストップで対応いたします。
何かお困りの際には、ぜひお気軽にご相談ください。