Wi-Fiの成り立ちと歴史
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「Wi-Fi」(ワイファイ、無線LAN)は、多くの人々にとって欠かせないものとなっています。
世界中で毎日、何億ものデバイス(端末)からネットワークへ接続するために使用されています。
そんなWi-Fiですが、どのような過程でどのように進化し、現在の姿になったのでしょうか。今では当たり前のように使われていますが、何十年にもわたる歴史があります。
ここでは、Wi-Fiの歴史と発展についてご紹介します。
1. Wi-Fiとはそもそも何か
Wi-Fiとは、デバイスからネットワーク(インターネット)に接続するための技術です。
多くのワイヤレス通信手段と同様に、電波を通じてデータを送受信します。規格に準拠する機器同士であれば簡単に接続でき、とても汎用性・利便性に優れた技術です。詳細は別記事にまとめていますので、併せてご参照ください。
そんなWi-Fiの歴史は、後述する「アロハネット」(ALOHAnet)から始まったと言われています。
2. Wi-Fiの先駆けとなった「アロハネット」
1960年代後半には、コンピューター技術の発展に伴って、コンピューター間でデータを共有する必要性が高まっていました。
そのような中、ハワイ大学の教員が中心となって開発した、コンピューター同士を接続する無線ネットワークが「アロハネット」です。
1960年代後半に電気工学科の教員たちによって、州内各地に分散していたハワイ大学の8つのキャンパス間を接続する方法が検討されました。アマチュア無線のような仕組みで、TCU(Terminal Control Unit)と呼ばれるハードウェアを通じて、メインキャンパス中心に大学内のコンピューター同士を接続する構成がとられました。
そうして1971年にスタートしたアロハネットは1973年になると、カリフォルニア州のNASAをはじめ、アメリカ国内外のさまざまな大学が、アロハネットでつながるようになりました。
3. Wi-Fiの実現にあたって重要となる要素・技術の登場
アロハネットは人気を博し、さまざまな技術の開発に貢献しました。
1970年代以降には、現在のWi-Fiを実現するための重要な技術が生まれました。 その中でも特に重要なものを以下に紹介します。
1. ISMバンド
1985年にFCC(米連邦通信委員会)は、産業、科学、医療の各分野での汎用的な利用を想定した、免許不要な特定の周波数帯として「ISMバンド」(Industrial, Scientific and Medical band、産業科学医療用バンド)を指定しました。
現在では、以下のような周波数帯があります。
- 902〜928 MHz
- 2,400〜2,483.5 MHz
- 5,725〜5,875 MHz など
これらの帯域は免許不要のため、他の規格・技術でも自由に使用できます。よく知られるのは、Wi-FiやBluetoothが2つ目(2.4GHz帯)を使用しており、ベビーモニターや電子レンジなどもこれに該当します。
2. WaveLAN
1991年にAT&T社がNCR Systems Engineering社を買収したことで、「WaveLAN」と呼ばれる無線接続の技術規格が策定され、ワイヤレス技術はさらに進化しました。
キャッシュレジをはじめとするさまざまな機器に採用され、ユーザーがノートパソコンなどに挿入してアクセスポイント(AP)に接続できるようにするための「WaveLANカード」も登場しました。
10年間にわたってユビキタスな技術として利用されたWaveLANは、速度面では1.5Mbps程度と昨今の水準には及ばないものの、通信距離は約80フィート(24m)で、これは当時としては悪くありませんでした。
3. 802.11規格
1997年にIEEE(Institue of Electrical and Electronics Engineers)は、無線通信の規格である802.11を制定しました。この規格に対応した機器であれば、メーカーや製品シリーズなどに縛られることなく、ワイヤレスでインターネットにアクセスできます。802.11規格の通信速度は、最大で2Mbpsでした。
802.11規格は発足から何度もアップデート(改訂)され、そのたびに接続の最高速度が向上しました。アップデートされるごとに、802.11の後に続くアルファベット文字(1〜2文字)が付けられました。
その後1999年に登場した802.11a/bは、11Mbpsまたは54Mbpsの速度で通信できるなど、前述のWaveLANよりもさらに高速化されています。
4. Wi-Fiの登場と広がり
1997年に802.11規格が制定されてから、「Wi-Fi」という名称が生まれたのは1999年の夏のことでした。「Wi-Fi」という名称は、Wi-Fiアライアンスが、世界的なブランドコンサルティング会社であるインターブランド社に依頼する形で名称が決定されました。
Wi-Fiは2000年代初頭から普及しはじめ、年を追うごとに多くの家庭や業界で導入されるようになりました。中でもApple社は、「AirMac」(※日本以外ではAirPort)という名称を用いていち早く同社製パソコンへ標準搭載したり、2007年に登場した「iPhone」へも標準搭載したりするなど、普及に向けた大きな流れを作ったとされています。
そして普及が広がるとともに、Wi-Fi規格もアップデートが繰り返され、それに伴って通信速度も大きく向上しています。2009年にはそれまでの11倍以上となる600Mbps(802.11n)、そして2013年には1Gbpsを超える(802.11ac)など、Wi-Fiはより快適かつ広い用途へ活用できるようになりました。
5. Wi-Fiの現状と今後
現在、最新のWi-Fiは2024年に制定された「Wi-Fi 7」(規格名:802.11be)です。
Wi-Fi 7は、従来バージョンにおけるすべての周波数帯(2.4GHz/5GHz/6GHz)で動作し、理論上の最高速度は46Gbpsに及びます。
ただしWi-Fi 7はまだ登場してまもない規格のため、対応機器はごく少数かつ高価であり、普及にはまだ時間を要することが想定されます。
そのため、費用対効果や対応機器の入手容易性などの観点から、しばらくは一つ前のバージョンにあたる「Wi-Fi 6/6E」(規格名:802.11ax)が主流として使われる状況が続くでしょう。
最後に:Wi-Fiは進化し続けている
アロハネットの時代から始まり、Wi-Fiは大きく進化してきました。
大学のコンピューターを接続するための手段として始まったWi-Fiは、今では私たちの生活の中で最も重要な技術のひとつとなっています。長い道のりを歩んできたWi-Fiですが、その道のりはまだまだ終わりません。
登場したばかりの「Wi-Fi 7」は速度面や安定面での進化も大きく、活用の幅はさらに広がっていくでしょう。
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