SASEは本当に必要か? 〜導入すべき企業・不要な企業の分かれ道とは〜
クラウドサービスやテレワークの普及により、企業のネットワーク環境は大きく変化しています。従来のネットワークやセキュリティー対策では、ユーザーや端末、アクセス先の多様化に対応しにくいケースも増えています。
こうした課題への対応策として注目されているのがSASEです。一方で、「SASEを導入すれば安心」というわけではなく、自社の環境によっては導入の優先度が低い場合もあります。
この記事では、SASEが必要とされる背景を整理したうえで、導入を検討すべき企業と、導入優先度が低い企業の特徴を解説します。さらに、SASE以外の選択肢にも触れながら、自社にとってSASEが本当に必要なのかを判断するポイントを紹介します。
SASEは本当に必要なのか?
SASE(Secure Access Service Edge)は、ネットワークとセキュリティーの機能をクラウド上で統合し、ユーザーや端末、拠点などの接続環境に応じて適切なアクセス制御をおこなう考え方です。クラウドサービスやリモートアクセスの普及にともない、企業のネットワーク環境が変化するなかで注目されています。
一方で、SASEにはさまざまな機能が含まれるため、「SASEを導入すればセキュリティーが強化できる」という理由だけで導入を決めるのは適切ではありません。自社のネットワーク構成や利用状況によっては、既存の環境を改善するだけで十分な場合もあります。
SASEはすべての企業に必要なわけではない
SASEは、すべての企業が必ず導入しなければならない仕組みではありません。
たとえば、拠点やユーザーが少なく、クラウドサービスの利用も限定的な企業であれば、既存のファイアウォールやVPNなどによって必要なセキュリティー対策を実現できる場合があります。
一方、拠点やユーザーが増え、クラウドサービスやリモートアクセスの利用が広がると、従来のネットワーク構成では管理が複雑になりやすくなります。このような環境では、ネットワークとセキュリティーをまとめて管理できるSASEが有力な選択肢となります。
重要なのは、「SASEを導入すべきか」という問いだけで判断するのではなく、現在どのような課題があり、その課題を解決するためにSASEが必要なのかを考えることです。
SASE導入を検討する前に自社の課題を整理する
SASEの導入を検討する際は、まず現在のネットワークやセキュリティーにどのような課題があるのかを整理します。
たとえば、次のような課題が考えられます。
- 拠点ごとにネットワーク機器を管理する負担が大きい
- テレワーク環境から社内システムへ安全にアクセスしたい
- クラウドサービスへのアクセスを適切に制御したい
また、現在は大きな問題がなくても、今後の拠点展開やクラウドサービスの利用拡大によって、運用負荷が増える可能性もあります。そのため、現在の課題だけでなく、今後の事業計画やIT環境の変化も含めて検討することが重要です。
「SASE導入」ではなく「課題解決」が目的
SASEはあくまで、ネットワークやセキュリティーの課題を解決するための手段です。
「SASEが注目されているから」「他社も導入しているから」といった理由だけで導入すると、実際には利用しない機能まで含まれ、コストや運用負荷が増える可能性があります。
まず自社が抱えている課題を明確にし、その課題を解決するためにSASEが適しているのかを判断することが重要です。
SASEが必要とされる背景とは?
では、なぜ現在SASEが注目されているのでしょうか。SASEの必要性を判断するには、企業のネットワーク環境がどのように変化しているのかを理解しておくことが重要です。
1. クラウドサービスの利用が増えている
企業では、業務システムやファイル共有、コミュニケーションツールなど、さまざまなクラウドサービスが利用されています。
クラウドサービスの利用が増えると、ユーザーや端末が社内ネットワークを経由せずに外部のサービスへアクセスするケースも増えます。そのため、社内と社外の境界を前提とした従来型のセキュリティー対策だけでは、アクセスを適切に管理することが難しくなる場合があります。
2. 拠点・ユーザー・アクセス環境が多様化している
テレワークやモバイルワークの普及に加え、複数の拠点や店舗、海外拠点などから業務システムやクラウドサービスへアクセスするケースも増えています。
こうした環境では、利用するユーザーや端末、アクセス先が多様になるため、ネットワークやセキュリティーを一律に管理することが難しくなります。
3. ネットワークとセキュリティーの運用が複雑化している
クラウドサービスや拠点、アクセス環境が増えると、それぞれのネットワークやセキュリティーを管理する負担も大きくなります。
複数の機器やセキュリティー製品を個別に管理している場合、設定変更や障害対応、セキュリティーポリシーの管理などにも手間がかかります。
SASEを導入すべき企業とは?
SASEの必要性は、企業の規模だけで決まるものではありません。特に重要なのは、拠点やユーザー、クラウドサービスなどの利用状況と、現在のネットワークやセキュリティー環境が抱えている課題です。
ここでは、こうした点から見たSASEの導入を検討するのに相応しい企業の特徴について、説明していきます。
1. 複数の拠点や店舗を運営している
複数の拠点や店舗を持つ企業では、それぞれの拠点にネットワーク機器やセキュリティー機器を設置し、個別に管理しているケースがあります。
拠点数が少ないうちは対応できても、拠点が増えるにつれて設定変更や機器の管理、障害対応などの負担が増えていきます。特に、拠点ごとに異なるネットワーク環境が構築されている場合、全体の設定やセキュリティーポリシーを統一することが難しくなる場合があります。
SASEを活用すれば、複数拠点からのアクセスを含めてネットワークとセキュリティーを一元的に管理しやすくなるため、拠点数が多い企業では導入メリットを得られる可能性があります。
2. クラウドサービスやSaaSを多く利用している
業務で利用するクラウドサービスやSaaSが増えると、社内ネットワークの外側にあるさまざまなサービスへのアクセスを管理する必要があります。
利用するサービスごとにセキュリティー対策を検討したり、ユーザーや端末によってアクセス制御を変更したりする必要があると、運用が複雑になりやすくなります。
SASEでは、クラウドサービスへのアクセスも含めて、ユーザーや端末、アクセス先などを考慮したセキュリティー制御をおこなえます。
3. テレワークやリモートアクセスを利用している
テレワークやリモートアクセスを利用する企業では、社外から社内システムやクラウドサービスへアクセスするユーザーが増えます。
従来はVPNを利用して社内ネットワークへ接続する方法が一般的でしたが、ユーザーや利用サービスが増えると、VPN装置の負荷やアクセス制御、運用管理などが課題になる場合があります。
SASEでは、ユーザーや端末などの情報をもとにアクセスを制御し、必要なリソースへ適切に接続させることができます。
4. ネットワークとセキュリティーを一元的に管理したい
ネットワークとセキュリティーを別々の製品やサービスで管理している場合、それぞれの設定や運用を個別におこなう必要があります。
SASEでは、SD-WANなどのネットワーク機能と、SWG、CASB、ZTNA、FWaaSなどのセキュリティー機能を組み合わせ、統合的に提供できます。
5. 既存環境の運用負荷やセキュリティーに課題がある
現在のネットワークやセキュリティー環境に明確な課題がある場合も、SASEを検討するきっかけになります。たとえば、機器の設定変更に時間がかかる、セキュリティーポリシーが拠点ごとに異なる、アクセス状況を一元的に把握しにくいといった課題です。
こうした問題が複数存在している場合は、個別の機器やサービスを追加するだけではなく、ネットワークとセキュリティー全体を見直す方法としてSASEを検討できます。
SASEを導入しなくてもよい企業とは?
SASEには多くのメリットがありますが、すべての企業で導入の優先度が高いとは限りません。現在のネットワークやセキュリティー環境がシンプルで、大きな課題を抱えていない企業では、SASEの導入よりも既存環境の維持・改善を優先したほうがよい場合があります。
ここでは、SASEの導入優先度が比較的低い企業の特徴を紹介します。
1. ネットワークや拠点の構成がシンプル
拠点数が少なく、利用するユーザーや端末も限定されている企業では、ネットワーク環境が比較的シンプルです。
このような環境で、既存のファイアウォールやVPNなどによって必要なセキュリティー対策を実現できているのであれば、SASEを導入しても得られる効果が限定的になる可能性があります。
2. 現在のネットワーク・セキュリティー環境で課題を解決できている
現在のネットワークやセキュリティー対策に大きな問題がなく、必要なアクセス制御やセキュリティー対策を適切におこなえている場合、SASEを導入する必然性は高くありません。
たとえば、拠点数やユーザー数が安定しており、クラウドサービスの利用も限定的であれば、既存のネットワーク・セキュリティー環境を継続して利用できる可能性があります。
3. SASEの機能を必要とする利用環境がない
ネットワーク接続やアクセス制御、クラウドサービスの利用管理などといった機能を必要とする環境でなければ、SASEは十分に活用できません。
たとえば、リモートアクセスをほとんど利用せず、クラウドサービスの利用も少なく、拠点間ネットワークもシンプルであれば、SASEが提供する機能の多くが不要になる可能性があります。
4. 導入・運用コストに対して得られる効果が小さい
SASEを導入する場合、サービスの利用料金だけでなく、既存環境からの移行や設計、運用体制の変更などにもコストが発生します。
そのため、SASEによって解決できる課題が少ない企業では、導入による効果よりも導入・運用にかかるコストのほうが大きくなる可能性があります。
SASE以外の選択肢も検討する
SASEが自社に適していない、あるいは現時点では導入する必要性が低いと判断した場合でも、ネットワークやセキュリティーの課題を放置する必要はありません。課題に応じて、別の方法を検討できます。
既存のネットワーク・セキュリティー環境を改善する
現在の環境に一部の課題があるだけなら、既存のネットワークやセキュリティー環境を改善する方法があります。
たとえば、ネットワーク機器の更新、設定の見直し、セキュリティーポリシーの整理などです。
SD-WANによってネットワークの課題を解決する
ネットワークの課題が中心であれば、SASE全体を導入するのではなく、SD-WANを活用する方法もあります。
SD-WANでは、複数の回線を状況に応じて使い分けたり、拠点間の通信を一元的に管理したりすることで、ネットワークの柔軟性や運用効率を高められます。「拠点間通信を改善したい」「回線を柔軟に使い分けたい」といった課題に対しては、有効な選択肢となります。
必要なセキュリティー機能を個別に導入する
セキュリティー上の特定の課題だけを解決したい場合は、必要な機能を個別に導入する方法もあります。
たとえば、クラウドサービスの利用状況を管理したい場合はCASB、リモートユーザーから特定のリソースへの安全なアクセスを実現したい場合はZTNA(ゼロトラスト ネットワーク アクセス)など、課題に応じて必要な機能を選択できます。
将来的なSASE導入を見据えて段階的に取り組む
現時点ではSASEの導入が必要ない場合でも、今後の事業拡大やクラウド利用の増加によって、必要性が高まる可能性があります。
そのため、いきなり全面的にSASEへ移行するのではなく、まずネットワーク構成やセキュリティーポリシーを整理し、必要な領域から段階的に改善する方法もあります。
将来的なSASE導入を視野に入れながら、現在必要な対策から取り組むことで、環境の変化にも対応しやすくなります。
さいごに
SASEは、ネットワークとセキュリティーを統合的に管理し、クラウドサービスやリモートアクセスなど、多様化するアクセス環境に対応するための有力な選択肢です。特に、拠点やユーザーが多く、ネットワークやセキュリティーの運用が複雑になっている企業では、導入によるメリットを得やすくなります。
一方で、拠点やユーザーが少なく、現在のネットワーク・セキュリティー環境で大きな課題がない企業では、SASEの導入優先度は比較的低いといえます。ネットワークの課題にはSD-WAN、特定のセキュリティー課題には必要な機能を個別に導入するなど、課題に応じた選択肢もあります。
重要なのは、SASEを導入すること自体を目的にするのではなく、自社が抱える課題や今後のネットワーク環境の変化を踏まえて、必要な機能や対策を見極めることです。現在は必要性が低くても、将来的な拠点展開やクラウド利用の拡大に合わせて、段階的に検討することもできます。
当社では、SD-WANやSASE、ゼロトラストなどの導入を支援しており、グローバルなプライベートバックボーンを持つSD-WANサービスを含め、お客様の要件に応じたネットワーク設計をご提案しています。「クラウド時代に適したWANへ刷新したい」「海外拠点間通信を改善したい」といった課題がありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
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